「とりっくおあとりーとーー!!」
威勢のいい掛け声と共に、延麒・六太が窓から進入してきた。
何時ものコトながら、呆然としてしまうのは楽俊で。
「とりっくおあとりぃと?」
聞きなれない単語に、首を傾げた。
鼠の姿の彼に、その仕草はとても合っていて。
可愛らしい。
「蓬莱の季節行事の一つらしいぜ?」
「へぇ・・・とりっくなんとかってやつがですか?」
「いーや、はろいーん」
「はろいん?」
更に首を傾げていく、楽俊。
それを見ながら、説明はできないのだろう。
六太は、楽俊の手を引いた。
「ま、いいから来いって!!」
「え!?ちょっと、六太君!?」
つれ攫われる事に慣れはじめたのか、鼠のまま。
身近にある袋を掴んだ。
それには、いつも服を入れてあるのだった。



とりっくおあとりぃと?




「ヨーウーシー!陽子っ!」
「鈴?どうしたんだ、そんなに慌てて」
その鈴の後ろに。
延王と延麒を見つけて、ああ、慌てている原因はあの人達か・・・と、苦笑した。
「久しぶりですね、延王、六太君」
「「とりっくおあとりーと!!」」
「は?トリック・オア・トリート?」
ニヤニヤ笑う、尚隆と六太。
「そうだ、蓬莱の祭りの一つだろう?【はろいーん】とやらは」
「陽子もやったんだろ!」
「・・・蓬莱は蓬莱でも・・・それはまた、別の国のお祭りだと思うのですが・・・」
陽子にやった記憶はない。
知識としては覚えているので、【HALLOWEEN】がどんなものかは判ってはいるけれど。
「私は今、お菓子持っていませんよ?」
「陽子が菓子もってねーなら、悪戯していいんだよな!」
ニヤリ、と、六太が笑った。
完全に悪戯小僧のそれだ。
「そうなの?陽子」
「うん、【trick】が【悪戯】で、【or】が【か】って意味で、【treat】が【お菓子】。繋げると、【お菓子くれないと、悪戯するぞ!】って意味になるんだ」
首をかしげる祥瓊に、陽子が説明を始める。
周りからしてみれば、どうして、そんな意味になるのかわからないが。
蓬莱とは変な事をやるのだな、と、勝手に納得をした。
「で、だ。悪戯を用意している」
尚隆がこれまた、ニヤニヤと笑っていた。
すさまじく、嫌な予感がして。
景麒ですら、陽子の方に視線を泳がす。
言いたいことは、なんとなく想像できるが。
「陽子にはうってつけの悪戯だって、尚隆と用意したんだぜ!」
この暇人がっ!!と、景麒は心の中で悪態を付いた。
陽子と祥瓊・鈴、それに浩瀚と遠甫は溜息と苦笑のみで諦めていた。
心境は、『なるようになれ』だ。
「入って来いよー!」
「そうそう、って、縛ってなかったか?お前」
「あ、いっけね」
六太がパタパタと足音を立てて、たまの所に駆けていく。
そちら側から、声が聞こえた。
「何するんですかっ!?」
「まーまー、聞いてて判ったろ?」
「判ったも何も・・・って、この格好はなんですか!?」
「ま、話すから落ち着けって」
暫く話す声が聞こえて。
陽子は、あの声って・・・と尚隆を見上げた。
その先で、にやりと笑う雁の御仁。
ああ、やっぱり・・・と、頭痛を覚えた。
話を終えたのだろう、六太が此方へ走ってきた。
「ほら、早く来いって!」
「恥ずかしいんですよ!」
「大丈夫だ、お前にそれを着せたのは俺だしな」
「余計に恥ずかしいじゃないですかっ!!」
ぐっと、親指を立てる雁主従に。
誰かはわからないが、犠牲者に同情した。
「・・・楽俊、出てきてくれないのか?」
陽子が立ち上がって、窓の向こうに行くと。
顔を真っ赤にした、楽俊が確かに居た。
居たのだが・・・。
その格好が、なんというか・・・。
陽子は即行で、此方に走ってきた。
それまもう、見事なまでに顔を真っ赤にして。
尚隆の胸倉を掴んだ。
「何させてるんですか!?」
胸倉を掴まれても、尚隆は余裕綽々だ。
それよりも、悪戯が成功して楽しいのかよりいっそう、いい笑顔になっている。
予想以上の反応を陽子がしてくれたから、六太的にも大満足だ。
「蓬莱にはあんな格好で、美女の生き血を吸って生きる【ばんぱいやー】っていう生き物が居るんだろう?」
「それは、架空の生物!妖魔です!!因みに、【バンパイア】です!」
「でも【はろいん】の時にはああいった服装をするんだろう?」
「確かにしますけど!!因みに、【ハロウィーン】です」
「一々突っ込むな、俺が馬鹿みたいだろうが」
だいたい、うい、という発音は難しくてだな・・・と、胸倉を掴まれたままの尚隆がブツブツと一人ごちる。
「あのう・・・」
ひょっこりと、楽俊が出入り口から中に入ってきた。
黒いマント、白いシャツに赤いネクタイ、黒いスラックスにブーツ姿の楽俊は、陽子の感覚からしたらかっこいい。
恥ずかしいのか、顔は赤いままだ。
「おいら・・・じゃなかった、私は鼠に戻ってもいいでしょうか?」
「駄目だって、楽俊も菓子くれなかったんだからさ!」
六太が即答する。
あー・・・と、項垂れ、眉を顰める楽俊。
気難しそうな顔は、仏頂面に近いかもしれない。
祥瓊は嘘・・・と、絶句していた。
「・・・楽俊なの・・・?」
「ああ、祥瓊、久しぶりだな」
力なく苦笑を零して、耳の裏を掻く。
先程の気難しい顔から一転して、人懐こい笑みを浮かべる青年に。
ああ、確かに楽俊なんだ・・・と、祥瓊はこめかみを押さえた。
絶対に詐欺だ・・・と、後に陽子に詰め寄ったという。



















花園の中に造られている室に通された、陽子と楽俊は。
お茶を飲みながら、溜息をついていた。
「これが、蓬莱の格好なんだな」
しげしげと眺める楽俊に、苦笑を零す陽子。
「えーっと・・・マント・・・黒い外套を脱げばね」
「そうなのか?」
「うん」
四苦八苦しながら、マントを脱いで椅子にかける。
髪が短いことも手伝ってか、蓬莱の街中を歩いていても多分差し支えないだろうな、と、陽子は想像する。
自分もワンピースを着て、そんな楽俊と一緒に歩いてみたい。
今となっては、叶わないけれど・・・そんな、想像が出来るくらいには余裕が出来たように思う。
「にしても、【はろいん】ってーのは変な行事だな」
「収穫祭なんだ、確か」
「こんな格好して、菓子くれっていう行事がか?」
「うん、私の国ではやらなかったから、良くは知らないんだけどね」
苦笑を零す陽子に、蓬莱はいろんな国があるんだっけな、と、楽俊は頷いた。
それから、立ち上がると。
陽子の傍らに立つ。
「楽俊?」
「おいら、陽子と二人になったらやれって言われたことがあるんだけどな?」
「なに?」
いつもよりも、艶やめいた感じに笑って。
陽子の緋色の長い髪をそっと、掻き揚げ。
首筋に、優しく吸い付いた。
「ら、楽俊っ!?」
そのまま、軽く歯を立てると。
満足そうに、顔を離した。
「だっておいら、【ばんぱいあ】なんだろ?」
いつものように笑って。
頬を撫でる。
今日は赤面してばかりだな・・・と、陽子は無意識のうちにしていたらしい体育座りの膝に。
顔を埋めた。


END
2005/10/31
脳内毒電波受信中


・・・ねぇ、これ、楽陽に見えるよね?
頑張っていちゃつかせてみたよ!!
無駄に長くなったけどね・・・(遠い目)
ってわけで。
はっぴぃ、はろいーん!



楽陽!!キャーーー!!!
好きだ―――!!十二国記!
楽俊、好き〜!
こっそり奪っちゃいましたよv
ありがとうございます、阿津緋さま