その日、目覚めた瞬間にハリーは暇だと感じた。
どのくらいかと言うと、起きた瞬間に朝日に向かって「楽しそうに出てくるんじゃねぇ――!!」と、やたら理不尽且つわけのわからないことを叫び出しそうになるくらいだ。
まあそんなわけで、とにもかくにも暇で暇でどうしようもないと感じながらも、ハリーの1日はいつもと変わることなく始まりを告げた。
華麗なる暇潰し
伝統ある由緒正しい魔法学校ホグワーツ。
そこは今、何よりも危険な場所となっていた。
「どけ!そこをどけ―――――――――――!!」
「お願いだよ!どいて――――――――――!!」
超猛スピードで校内を走り抜けるマルフォイとロン。
珍しい組み合わせに人々は首を傾げるも、一瞬後にはすぐさま壁にへばり付くかのように道を開ける。
「あははははははははははははははははは!!」
そいつはめっちゃ笑顔で息も乱さずに走り抜ける。
途中なにやら「どごっ!がつん!ぺぎょ!」などずいぶん不思議な音を発生させているようだが、人々は聞かなかったことにして、わずか3秒で脳内から消去する。というより消去しなければ絶対に魘されるだろう・・・。
それは朝の出来事だった。
目覚めた瞬間から暇だったハリーは朝食のときもどこか不機嫌そうにしていた。
「ハリー、どうかしたの?」
「んー」
大勢の人々が清々しい朝の挨拶を交わしながら朝食をとる大広間。今日一日の予定を話し合うものやくだらない事でふざけあうもの、そんな人々が集まるここは大変賑やかだ。
そんな中で向かい側に座ったハーマイオニーの問いかけにハリーは生返事で返す。
その様子をハリーの横に座るロンも珍しそうに見る。
「ハリー、君本当にどうしたの?なんか不機嫌そうなんだけど・・・」
「・・・うん」
なにやらだんだん何かに気づいたかのように顔を強張らせるロンに、ハリーはスープを飲んでいたスプーンを置いて告げた。
「暇なんだ」
ぴしぃぃぃぃぃぃ!!!
その瞬間。なにやら亀裂が入ったかのように辺りは静まりかえる。
あれだけ騒いでいてどうしてハリーのほんのささやかな一言が聞こえるのかは不思議でならないが、人々は一様に停止し、徐々にその顔色が青くなり始める。
今、この広間の中で変わることなく食事を続けているのはハリー本人と、その同類と教師たちぐらいだろう。
「・・・なんか朝起きたときから暇で暇で仕方ないんだよね」
普通で真面目で危機管理能力が最大値にまで拡大している人々は一斉に朝食を再開した。
もはや食べているというより飲み込んでいると言ったほうがいいくらいの速さで僅か1分で食べ終えた人々は、そのまま競うように広間から出て行く。
そして、ハリーが「暇だ」と言ってから僅か3分以内に広間は静かになった。
その速さはハリーが入学してからいかにいろいろあったかを物語っているだろう。
それはさておき。
そんなことを気にもせず、暇そうにしながらも朝食を食べ続けるハリー。もちろん周りにいるハーマイオニーやウィーズリーの双子たちなども気にしない。・・・唯一ロンが青褪めているが。
「今日は叔母様からの荷物は届かないの?」
「うん、昨日は特に何もなかったから頼んでないんだ」
毎日の日課のように飛んでくるふくろう便。ハリーが欲しい物を頼んだ翌日の朝にはきっちりと送られてくるそれをハリーはうきうきしながら受け取っていた。
・・・・というより、次の日には品物を用意することができるペチュニアが謎であるが誰一人突っ込むものはいない。
「珍しいわね」
「本当は頼もうと思ってたんだけど、昨日ハグリッドが持ってたから借りてきた」
「ああ、ひょっとして『恐竜の捕まえかた大百科』?」
「そうそう、もう読破したから終わったら貸すよ」
「ええ、待ってるわ。体験談も」
・・・・・・・・・・なにをする気ですか。
そんな言葉をロンは飲み込んだ。
「相変わらずふざけたやつだなポッター?」
偉そうに突っ立っているのはハリーを目の敵にしているマルフォイ。取り巻きのクラッブとゴイルが何処か必死で止めようとしているところを見ると、今来たのではなくずっといたのだろう。
……ご愁傷様だ。
「……なんだマルフォイか」
会話に割り込まれたことでさらにハリーの機嫌は急降下。
だが、ふと考えるようにマルフォイを見上げ、その口元に不穏な笑みが浮かぶ。
「ねえ、マルフォイ?」
「な、なんだ」
その笑みに、一歩あとずさるマルフォイ。
ようやくなにかを感じ取ったようだが時すでに遅し。
「鬼ごっこしない?」
「は?」
「だから鬼ごっこ。期間は今日1日で」
にっこり笑顔のハリー。そこには先ほど暇暇言っていた機嫌の悪さはない。
むしろ、おもちゃを見つけたような瞳のきらめき。
「はっ!何故この僕がそんな低俗なことを?」
「……へー、負けるのが怖いんだ」
「なんだと、それはきさまだろ」
「さあ?僕が負けたら土下座して謝ったっていいよ?」
「………いいだろうやってやる」
「そうこなくちゃ、じゃ、僕が鬼ね」
この時、マルフォイはまだ気付いていなかった。
己の最大の失敗に。
「実は我輩、今日の魔法薬の授業は自習にしようと思っているのだが」
「あら、奇遇ですね。私も変身術は自習の予定です」
え?っと思って教師席を見ると、スネイプ、マクゴナガルに続き、次々と自習という言葉が出てくる。
さらには、ダンブルドアが頷いている。
マルフォイが青ざめる。取り巻きの二人は失神寸前。
それはそうだ。
なにせ休憩時間の間だけ逃げ切れればいいと思っていたのだから。
この瞬間、丸1日。命を賭けた決死の鬼ごっこが始まった。
「ああああああああ追ってくる―――――――!!」
「うるさいぞウィーズリー!!」
二人は必死に階段を上る。
何故ロンまで逃げているのかというと、ハーマイオニーの「マルフォイだけじゃつまらないわ」という言葉に「「ならば我らの弟を差し出そう」」というなんとも迷惑な話だが双子が悪乗りしたせいだったりする。
そんなわけで逃げまくっているのだ。
「まーてー、あはははははははははははははは」
全然本気を出していないのがまるわかりのハリー。
だが、ここでロンは気付いた。
「やった!今日は金曜日だ!」
「?そうか!階段が変わる!!」
上がりきったところで二人は止まる。ハリーが上がろうとした階段はゆっくりと別の入り口へと向きを変えていく。
「どうだポッター!これで僕の勝ちだ!」
「ありがとう神様!僕は見捨てられてなかったんだ!」
腰に手をあてて勝ち誇るマルフォイと両手を握り締め嬉し涙を流すロン。
だが、ハリーは慌てず騒がすパチンと指を鳴らす。
すると。
「持ってきました――――――!!」
現われたのはピーブズ。いったい何があったのか知らないがハリーに絶対服従の意を示している。
「…え?」
「…うそ」
「さあ、再開だ」
呆然とする二人を見ながら、ハリーはピーブズから受け取ったニンバス2000に跨って悪魔の笑みを浮かべた。
マルフォイとロンはとにかく全力疾走。廊下の角を曲がる時に前にいた人を慌ててよけながら走る。
その後ろをハリーが箒で誰も避けることなく飛ぶ。
「ああああああ、今の人轢かれた――――――!!」
「うるさいウィーズリー!!明日は我が身だぞ!!」
明日じゃなくて今すぐです。
「あああああああ次の人は跳ね飛ばされた――――!!」
「お前は自分が跳ね飛ばされたいのか―――――!!」
どうやら、変な連帯感が芽生えたらしい。
とうより、一蓮托生・死なば諸共精神だろうか。
二人は走りつづける。ハリーは悪魔の笑みで追いかける。
そんなこんなで体力の限界以上まで走らされた二人 対 超余裕のハリーの対決は夜7時に決着をつけた。
それはあらかじめハリーがスネイプから受け取っていた何かの魔法薬をぽ―――んと、二人の進行方向に投げ付けたことによって。
……………いったい何が起こったのは定かではないが、取り敢えず爆発。
周りにいた運の悪い人々を巻き添えにしての大爆発。もちろんその場にいたハリーには傷1つない。
「…けほっ、いったいなにが」
「ううう…やっぱり…」
取り敢えず生きていた二人は、「はい僕の勝ち〜」と、肩を叩かれ、その笑みを見たのを最後に気を失った。
目覚めたのは次の日。その間何があったのかは―――――。
「ほう、これはなかなかいいデータではないか」
「「はははさすがハリー!我が弟もいい体験だ」」
「キャ――――!!すばらしいわこのデータ!」
「だろ?あとで他の人達にも見せようと思うんだ」
なんて言う、どこぞの地下室から夜通し聞こえた歓声と笑い声から察していただきたいと思う。
何はともあれ、こうしてハリーの暇つぶしは完了した。
もちろん今日の出来事はペチュニアの元にも報告書として送られ…。
「あらハリーったら!そろそろホグワーツ掌握ね♪」
と、とってもうきうきした姿が見られたとか。
お題がなかなか好評だったので調子にのって書いてみました。うちのハリーさんは学校内だろうと余裕で箒で飛び回ります(笑)
ハリーさんとペチュニアさんが楽しいです!
ロンとドラコが手を取り合って逃げてて楽しいねw
(注・別に取り合ってない)
私はペチュニアさんへの報告書を誰が書いたのか気になって仕方ありません。
すでに掌握済みだと・・・
ひまりさま、ありがとうございました。![]()