さくっ…と。
 ナイフはあっけないほど簡単に突き刺さる。
 丸みを帯びた上部を丁寧に切り取ると、その内側に手を入れて、中味を掻き出す。
 時間をかけて、全てを綺麗に掻き出したことを確認した後、それぞれのパーツごとに表面を切り取る。
 「――――――よし」
 最後に、全体を術で固定・乾燥させて、それは出来あがる。

 年に一度、それは彼らにとってなによりも重要な儀式。


惨劇のハロウィン



 「………今年も、それで行くのじゃな?」
 夕暮れ時、いつものように彼らを呼び出した火影は、何処か諦めたような、確認を込めた口調で問い掛ける。
 毎年といえば毎年の事なのだが、これだけは慣れる事がない。というより、慣れたくもない。
 「じっちゃん、それ今更〜」
 「そうだぜ!」
 「毎年の事じゃないですか」
 「毎年毎年聞くのも疲れませんか?」
 火影の前にいるのは、ナルト・キバ・チョウジ・サスケの4人。一見奇妙な組み合わせに見えなくもないが、彼らにとっては当然の事。
 もとより、サスケとチョウジは幼馴染という関係だが、5歳のときに偶然と偶然が重なった事故により出会い、その後もいろいろあって今では4人とも暗部として活躍している。
 そこで、何があったかは長くなるので語る事はしないが、4人のそんな関係はそれぞれの事情により秘密とされ、下忍及び担当上忍には今だ知るものはいない。
 まあ、そんなわけで彼らがここにいるのは不思議な事ではないのだが、火影の顔は何処か引き攣っている。
 それもそうだろう。

 彼らの格好は変だった。

 黒で統一されたマントで体全体をつつみ込むのは、いつも通り。
 だが、その上。つまり顔。本来暗部面があるはずのそこには何故か黄色くて、にやりとした表情の丸い物体があり、黒いとんがり帽がその上に被さっている。
 つまり、今の彼らの現状を一言で表すとこうなる。


 カボチャマン 参・上 !


 今日は10月31日、ハロウィン。簡単にいうと、子供達が奇妙な仮装をし、「Trick or Treat」と言いながらお菓子をもらい歩く日である。
 そんな日なのでおかしくはない、とは言えなくもないのだが彼らは暗部。
 いつのまにか恒例になってしまったのだが彼らはこの日、毎年この格好で任務に行くのだ。暗部の。
 「………。………」
 溜息をついて、頭を抱えたくなる衝動をやり過ごし、火影は任務を告げる。
 内容は、木の葉の周りをうろついている鼠の始末。
 「へー、人数は?」
 「わからん。100までは確認済みじゃが」
 「とりあえず、そこらにいるものを綺麗にすれば良いんですね?」
 「うむ」
 「「「「了解!」」」」







 そんなわけでやってきました木の葉の外れ。
 「おー、結構な数?」
 「だなだな! 200はいるんじゃね?」
 「じゃあ、1人50で」
 「まて、チョウジ。ナルト、お前なんか試したい術あるって言ってなかったか?」
 サスケの言葉にナルトはにやっと笑う。
 「じっつはー、ハロウィン用の術を作りまして♪」
 満面の笑み。いや、カボチャを被っているので見えるわけではないが雰囲気がそんな感じ。
 ナルトは自他ともに認める忍中毒。自宅には怪しげな巻物から禁呪書などが溢れかえっており、新しい術の開発が大好きなやや危ないお子様だ。
 「なので、最初はまっかせなさーい♪」
 そう、言うが早いかナルトはそのままのノリで踊り出た。




 こんな時期に大所帯で木の葉の偵察にやってきた不幸な(決定)忍たち。
 そんな彼らは、実は東西南北さまざまなところからやってきた忍たちで、偶然かち合ってしまった彼らは、お互いがお互いの存在を黙認して、各々の任務をこなしていた。最初は。
 だが、どうあっても所詮は他国の忍。敵対関係があるものもいるのだからそんなものは長続きするはずもなく、わずか数日で崩れた。
 「………もう我慢ならん」
 「それはこちらの台詞というもの」
 「もめるのは構わんが、よそでやれ」
 「なんだと!?」
 「うるさい、てめぇらがどっか行け」
 「ああ゛?」
 飛び火が飛び火、常に冷静であれと骨の髄まで叩きこまれていたはずの彼らは、ほんの些細な事でぶち切れた。
 次第にあたりに殺気が充満し、緊張に空気が張り詰める。
 まさに一触即発! というその時。


 「カモの皆さんこんにちはー♪ あ、間違った。こんばんはー」


 超・呑気な声で割り込んだ第三者。
 はっとその場所を振り返り、彼らは見た。


 カボチャおばけの存在を。


 「なんだ貴様は!?」
 「に、人間? 人間なのか!?」
 「え? かぼちゃだろ、あれ」
 「んなわけないだろ! あんな存在認められるか!」
 何か、かなりな大混乱に陥っているらしい忍たち。
 忍なんていう職業についているのだからいろいろ普通じゃない体験もしているし、人間外の存在だって知っている。
 だが、こんなカボチャは認めたくない、いや、人として認めちゃいけない! という訳のわからない使命感に彼らはかられていた。

 「やだなー、いくら九尾飼ってたって一応人間に決まってるだろー?」

 さらりと、かなり重要な事をつげながら、本人カボチャの下でにっこり笑う。
 忍たちがいったい何を思って大混乱に陥っているのかなんて、これっぽっちも気にしないナルトは、ウキウキと超・高速で印を組む。
 そして―――――――――――――。


 「ハロウィン特製・祭りだぜカボチャパーティの術!」


 ふざけた名前で繰り出されたその術。
 突然何もなかった闇夜の空間に薄っすらと光り輝く黄色くて丸い物体たち。にやりと、その物体が笑ったかのように見えたその瞬間、一直線に土砂降りの如く忍たちの上に降り注ぐ!


 『は…? な、んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!????』


 なすすべもなく、半数以上が地に沈む。
 「よっしゃ! 大成功♪」
 「おー、これはまたハデだなー」
 「面白そうだねー、ボクもイルカ先生から貰ったの使おうかな」
 「お前また貰ってたのか…」
 とんっと、軽い動作で彼らはそこに立つ。
 辛うじて生き残った忍たちは見た。
 カボチャちょうちん畑と化したその上に佇む、



 4人に増えたカボチャおばけを! 



 悪夢だ。
 なんていう悪夢なのだ。
 ああ神よ、あなたはなんて残酷なんですか?

 常識外のさらに常識外体験している彼らにはもはや、ひょっとして木の葉の忍じゃないのか? という初歩的な考えは欠片もない。


 「ふ、じゃあ俺も鍛えたばかりの鎌を使うか」
 「なんだ、サスケもノリ気じゃないか」
 そんな幼馴染ズはチャッと武器を構える。
 チョウジは、薬作りが趣味で実は暗部統括者なイルカから貰った『未実験』と書かれた、あきらかにヤバそうなものを片手に、その横では大振りの巨大鎌をサスケが嬉々として構える。
 普段、日中の彼を知るものが見たらその様子はさぞかし驚く事だろう。
 クールで必要な事しか喋らないと思われている彼は、実は極度の低血圧。夕方になってやっと目が覚めるため、昼間は9割ぐらい寝ているのだ。
 だから、ある意味こっちがサスケの本性。
 「よし! 赤丸こっちも行くぞ!」
 「ワン!」
 そんな、裏表ありすぎる3人に囲まれて唯一素のままのキバは、己の愛犬と共に戦闘態勢。赤丸は何故か犬なのに猫耳をつけて、黒い服を着せられていたりするが、それはキバの趣味なので置いておく。
 「んじゃ俺もせっかく出したから、これ使おうっと」
 ちょいっとナルトが片手を上げる動作をすると、下に転がっていたカボチャちょうちんたちはふわりと、夜空にきらめく星のように再度浮かび上がる。
 『―――――――――っ!』
 今だかつてないほどの恐怖に身を竦ませる忍たちは、どんな残虐な殺人鬼よりも恐ろしいカボチャおばけ4人を絶望の面持ちで見つめる。
 「あ、そうだやっぱ聞いとくか?」
 「そうだね、一応」
 「だなだな」
 「答えはわかりきってるがな」
 「それでは声を揃えて!」


 「「「「Trick or Treat?」」」」


 もちろん、こんなところにお菓子など持ってきているはずもない彼らの答えは、………悲しいほどに決まりきっていた。








 「はい、じっちゃん。計200人殲滅終了」
 「報告書はこちらに」
 「うむ、ご苦労じゃった」
 「じゃあ火影様。明日から2日間お休み貰いますので」
 それも毎年恒例のこと。もとより4人に甘い火影は、ハロウィンのあとは子供らしく遊べといわんばかりに休みをくれる。
 なので、その2日間は外部との連絡を一切絶って、4人だけで盛大に騒ぐのだ。
 「あ、そうだじっちゃん」

 「「「「Trick or Treat?」」」」

 お決まりの台詞。にっこり笑顔でいわれたそれに、火影は部屋の隅を指差す。
 そこにあるのは、巨大なズタ袋4つ。
 「それだけあれば足りるじゃろ」
 「酒は…」
 「おぬし等は子供じゃ!」
 えーと不満そうな顔をするが、とりあえずの食料確保がで来たのでありがたく頂く。
 食にうるさくなってしまった4人は、量と質を両方求めるのでいつでも食糧難だ。
 「ま、それはイルカ先生に貰ったからいいけどね♪」
 「……ほどほどにの」
 「わかってますって♪」
 結局爺バカな火影は見てみぬふりをするのだ。
 だから、わかっていても引っかかる。
 「んじゃ、じっちゃんまたなー」
 「それではこれで」
 「ああ、楽しむのじゃよ」
 「「「「了解!」」」」


 笑いながら4人は夜空を駈ける。


 「………さて」
 4人が出した報告書を片付けようと書類に目を通して、火影は停止した。




 「いやー、じっちゃんも毎年学習能力がないよなー」
 「まあ、あの人は仕方ないんじゃない?」
 「オレなら絶対に受け取らないぜ!」
 「しかも、連絡つけられないしな」
 けらけら笑いながら彼らは闇へと消えて行く。


 彼らが渡した報告書は、超・古代文字で書かれた上に、超・難解な暗号で記されている。それは、ナルトかイルカぐらいしか解けないだろうと思われるものだが、ナルトはこれから2日間連絡が取れなくなるし、イルカはわかっているので大抵この時期は雲隠れしている。なので、多数の忍が徹夜で解析に回る事になるだろう。もちろん火影自身も。


 これはナルトたちからの、ハロウィンの悪戯。


 なんでお菓子(食材)をくれた火影にも悪戯をするのかって?


 それは簡単。


 だって俺達は子供で、


 悪ガキーズですから♪




 さて皆さん。


 Trick or Treat?






本当は「明るい〜」のほうで書こうと思ってたんですけど、カボチャおばけ4人が頭に浮かんでしまったのでもうどうしようもありません(謎)。ちょっと変わった組み合わせですけど書くのは楽しかった! 実はこれいろいろ裏設定があるので本作ろうかなーと思ったり思わなかったり・・・?(←どっちだ!)
えーと、ハロウィン小説ということで一応フリーとさせていただきます。欲しい方がいらっしゃいましたら遠慮なくお持ち帰りくださいませ。 


うふふv頂いちゃいましたよ〜♪
低血圧設定のサスケくんが楽しいですよね。

ありがとうございます!!ひまりさま
お言葉に甘えて貰っちゃいました。
ハロウィン好きだ〜〜〜!!!