「母さん、キョウちゃんが母さんに、って」

 はい、と綱吉が奈々に漆塗りの箱を手渡した。

「あらあら何かしら……おせち?」
「うん。味見てほしいんだって」
「それは楽しみねぇ……」

 早速一口、と箱の中身に手を付けて、味わって食べている。
 綱吉はそれを気にせずテレビへと向かっていれば、奈々は綱吉に声をかけた。

「ツッ君、来年は一緒に作りましょうってキョウちゃんに伝えてもらってもいい?」
「あ、うん、わかった!」

 言っておくね、と良く似た母子はそっくりな笑みが浮かべて笑い合った。





「ごめんね、ビアンキちゃん」

 平謝りするように手を合わせる奈々にビアンキは残念そうな表情を向けた。

「キッチン立入禁止なのね…残念だわ、特製おせちをリボーンに作ってあげたかったのに……」
「ごめんね」

 今回だけは譲ってほしいとお願いする。

「いいえ、居候の身ですもの」

 気にしないでママン、とビアンキは微笑った。
 何か事情があるのだろう、と納得しながらも何も言わずにビアンキは引いた。


「ビアンキどうした?」

 ぎゅっと抱き付いてきたビアンキに、リボーンは行っていた銃の手入れを中断した。

「年明けまで台所に入っちゃいけないのですって」

 今年はおせち作れないわ、ごめんなさい愛しい人。と謝るビアンキにリボーンは気にすんなと髪の毛を撫でた。
 けれど、リボーンはビアンキが抱き付いていて見えないことをいいことにホッとした表情を隠さずにいた。
 数日前のクリスマスの恐怖はまだ記憶に新しい。
 ローストチキンよ、と出された紫色の物体を。
 リボーンは全力で寝たフリをして事なきを得たが、綱吉に冷たい目で見られたことだけは確かだ。

「どうしてダメなんだ?」
「去年からの約束で貸し切りだそうよ」

 言われたことをそのまま教えてくれる。
 誰なのかしらね…と首を傾けるビアンキにリボーンはそうだなと頷いた。
 人の出入りを制限するということは、群れを嫌う恭弥が相手だと気付いたリボーンは人払いに納得したのだ。
 そして、それに関わるのも面倒だなと思う。

「ママンのおせちが楽しみだな」

 ビアンキの方を真っ直ぐ見てリボーンは笑う。
 それに数度瞬きをしたビアンキは頷いた。

「そうね!」

 話が収まる所に収まってしまえば、ビアンキの興味は別の方向へと向かう。
 今後話が蒸し返されなければいいとリボーンは素知らぬ振りをした。





「ママン、ツナは?」

 ふと気づけば綱吉の姿が無かった。
 大掃除にわたわたとした浮ついた空気に包まれていた沢田家に惑わされたのか……

「お隣で年越しですって」
「そうなのか……」

 つまりは恭弥の所なのだろうと理解したリボーンは黙る。

「そういえば、お隣さんと会ったこと無いわね……」

 リボーンと奈々の会話を聞いて、今初めて気付いたとビアンキは首を傾ける。
 沢田家に居候し始めてかなり経つのに、と不思議そうにしているビアンキに奈々はコロコロと笑った。

「私の学生時代からの親友一家が住んでいるのよ」
「ママンの親友が?」
「そうよ。ただお仕事で忙しいから会うことは無いでしょうね」

 最近会えてないのよね、と少し寂しそうな表情を浮かべる奈々にビアンキはそうなのと頷いた。
 奈々の説明に納得したビアンキは、あっさりと興味を無くしおせちに夢中になった。

「ママン、ツナは帰ってくるのか?」
「さぁ? 初詣に行くかもしれないって言っていたから」
「そうか……」

 もしそのまま泊まっても黙認だろう奈々にリボーンは閉口した。



 テレビから紅白が流れる時間になった頃、綱吉は恭弥と共におせちへと手を伸ばしていた。

「これ美味しいね、キョウちゃん」
「うん、去年味付けが納得いかなかったけど、流石奈々だよね」
「でも、キョウちゃんが作ったんでしょ」

 調整だけやったって母さんが言ってたよ。

「そうかもしれないけど……」

 奈々と一緒に料理をするのも楽しいからいいが、やっぱりちょっと違う……と困ったように恭弥は言う。
 いわゆる『おふくろの味』は奈々の料理なのは綱吉も恭弥も変わらない。
 だから、現在食べているおせちも同じく一番口に合う状態は奈々の味付けなのだ。

「今年も一年楽しかったね」
「そうだね、キョウちゃんと一緒にいれたからね」

 一緒にいれた一年間、楽しかったなぁと一年を振り返る。

「迷惑もかけたけどね……」
「あぁ、色々あったよね」

 一年の間に骸が来てヴァリアーと戦い未来にも行き……ありすぎである。
 特に一時期に固まりすぎでもある。

「来年もずっと一緒にいれるといいね!」
「いようね」

 いれるといい、などという希望ではなく一緒にいようという自分の意思の方が大事だ。
 それに頷いてテレビのカウントダウンを視界に収めて。

「あけましておめでとう」
「おめでとう、今年もよろしく」
「よろしくね」

 笑い合い顔を寄せ合った。





すみません、大晦日からおせちを食べる道民です。
書きあがってから気付きました、うっかり大晦日になってました。
き、気にしないでくださいませ〜(苦笑)

今年もよろしくお願いします!

2011/1/1 作成
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