「あけましておめでとうございます」
ピンポーン、と鳴ったチャイムに奈々が玄関先へと走ると、そう挨拶をし始めた少女が一人。
「あら、ムッ君いらっしゃい」
ふわり、と微笑んだ奈々が骸に中へ入るよう招き入れながら挨拶を返す。
「あけましておめでとう。今年もよろしくね」
「はい。また今年もお邪魔させていただくことが多いと思います」
「嬉しいわぁ、うちの子たちに美人さんが会いに来てくれるのは」
その着物、綺麗ね、と示しながら言う。
「あぁ、新調しちゃったんです」
てへっと可愛らしく骸は答えた。
「その色、大人っぽくて似合っているわ」
「ありがとうございます」
何度も生まれ変わっている間に着物の着付けも覚えましたし、と買った理由を思い出す。
振袖は結婚するまでしか着れませんけど、華やかで良いですよねぇ……
黒に近い紫の濃い地色に、金や銀も使い花が描かれている。
大人っぽい色柄を選んだのは、自身の風貌を理解しているからだろう。
奈々が台所へ飲み物を取りに行くのを見送り、綱吉たちがいるであろう居間の方へと向かう。
「あけましておめでとうございます」
「おー、おめー」
軽く返した綱吉と、骸を見て驚く家継がソファに座っていた。
「お、おめでとう。でもさ〜、折角なんだから、その髪形止めろよな……」
骸がいつもの髪形をしていることに苦情を申し立てた。
大人っぽい姿がそれ一つで台無しだろ、と家継は言うが、ちゃんと髪の毛の縛った辺りに髪飾りも付けておりお正月らしさをアピールしているから問題無いはずだ。
家を出る前に確認して、鏡の前で頷いてきたのに、文句を言われるとは思わなかった、と骸は少し不満を感じる。
「何言ってんだよ、ツー。骸のアイデンティティを否定してやるなよ」
「僕のアイデンティティなんかじゃないですよ! 何失礼なこと言っているんですか!!」
綱吉からの言葉に骸は噛みつく。
まさかそんな言葉が向けられるとは思っていなかった骸は目を吊り上げている。
「だったら、髪型変えようよ……」
呆れたかのように家継はそう言い、ソファから立ち上がる。
「オレ、ビアンキからピンとか貰ってくるー!!」
バタバタと骸の返事も待たずに走り去っていく。
「いや、僕は変えるなんて一言も……」
「諦めるんだな。――助け舟だったのに……」
さっきの綱吉の言葉は助け舟だったんだ、と綱吉は言うが、骸は頭痛を覚える。
アイデンティティとか、そんなのにした覚えは無いし、それを助け舟だと言い張られる覚えも無い。
「全然違いましたよね!?」
どうせ綱吉は楽しんでいたのだろう、と骸は凹む。
「僕が否定することも分かっていて言ったでしょう、アナタ!」
「いや〜だって、なぁ? ……たまにはいいだろ?」
その骸の言葉を暗に肯定しながら、その上で髪型をたまには変えるのも良いだろう? と綱吉が誤魔化す。
「う〜…………仕方ない、ですねぇ……」
諦めたように頷く。
家継があそこまで楽しそうにしているのを止めるのもどうかと思うし、家継は骸のある意味での弱点でもあるのだから。
「骸、座って、座って!」
「はいはい」
ピンやムース、ブラシを持って戻ってきた家継が、骸にお願いと着物の袖口辺りを掴んで言う。
そういう行動はつぐみ時代に培われたものなのだろうが、外見が子供じみているために違和感は無い。
言われるがままに座った骸の後ろへと回りながら、家継は骸の髪の毛を解き始めた。
「ツー、手伝うか?」
「大丈夫ー。この着物ならアップがいいよなぁ……うーん、あんなんで行ってみるか……」
頭の中でどんな髪型にするか決めていたようで、家継は綱吉に断った後呟いている。
「つぐみ、色んな髪型にしてましたよね……」
過去を思い出して骸は尋ねる。
「うん、暇だったから」
こだわりだすと止まらなかったんだよねー、との答えに苦笑してしまう。
「一番髪型にこだわり持ってるのはお前らのどっちだろうな……」
同じ髪型に執着する骸か、それとも色んな髪型にしてみていたつぐみか。
「骸でしょ。同じ髪型にこだわりすぎ」
「色々やるのも大変だと思いますけど?」
二人して互いだと否定する。
「どっちだとしても、お前ら二人とも凄いわ」
言い出したのは自分のくせに、綱吉はそう切って捨てる。
「キョウちゃん呼んでくるから、それまでに終わらせといて」
「んー、了解ー」
「初詣ですか?」
「そう。せっかく着物だしな」
行っておこう、と骸を示して言い、家継は手の動きを速めた。
「母さん、キョウちゃん呼んできて、すぐに初詣行くから」
「そうなの。行ってらっしゃい」
奈々に伝えて隣の家へと駆けていった。
「――キョウちゃん、初詣行こ?」
「あ、うん。分かった」
綱吉が来たのが分かった恭弥が玄関に顔を出すと同時の言葉に、恭弥は頷く。
ちょっと待って、と鞄を取りに行く後ろ姿は赤い振袖。
「赤はちょっと珍しいかも……」
明るい色合いの赤色の着物に目をパチパチと瞬かせて綱吉は恭弥が戻ってくるのを待った。
赤地に毬を散らばせた振袖に、金色の帯をしていた。
「お待たせ、ツナ」
「ううん、大丈夫だよ」
羽毛ショールを寒いからか付けてきた恭弥をエスコートするように手を差し出す。
当たり前のように違和感無く手を取った恭弥を連れて自宅の玄関で二人を呼んだ。
「お待たせしました」
「行こっか」
出てきた骸は房にするために伸ばしていた髪の毛を編み込み、アップにした髪型で出てきた。
「よくやるなぁ、ツー」
「うーん、頭の上で跳ねらせるために短くしている部分の関係上、これくらいしかできなかった……」
「いや、これだけでも凄いだろ」
「そう? ありがと」
そんな会話をしながら家を出る。
綱吉が恭弥の手を引き、家継が骸の手を引いて四人は並盛神社へと歩いて行くのだった。
あけましておめでとうございます。
疲れてしまって、終わらせてしまいました。
メール限定年賀小説でしたー!
今年もよろしくお願いします!
2012/1/3 作成
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