「ふっふーん♪」
「…………」
とてつもなく楽しげにミシンに向かっているのを見て、呆れたような視線を向ける。
「よっし、できた!」
「そうなんだ、お疲れ様……」
できあがった物が何なのか知っているからこそ、疲れた溜息と共にしか言えない。
「はい、これ」
「………………着なきゃ、ダメ?」
「もちろん!」
当たり前でしょ、とツンッと顔を逸らす恭弥に、家継は諦めたように着替えることとした。
「――で、これも持って」
「あぁ、お菓子……」
「魔女と言えばそんな感じでしょ」
ふわふわと広がったスカートに黒いとんがり帽子の魔女っ子に扮装した家継は、とても可愛らしい。
「そのまま、赤ん坊と守護者たちに、『Trick & Treat』って言ってくること」
「はいはい。甘い物のお菓子と、悪戯の仮装だっけ」
「仮装じゃなくてもいいよ、ロシアンルーレットのクッキーにしてもいいし、ツナが作った面白い薬品とかもあるけど?」
その勧めにはぶんぶんと首を振り、渡そうと手にしていた薬瓶は拒否する。
流石に獣の毛が全身に生えてくるとか、羽が生えてくるとか、炎を回収されるものとか……どれを取っても問題しか起きないだろう。
「まぁ、いいよ。これはまた今度使うし」
面白い物を作り上げてくれたよね、ツナ。と楽しげにしている恭弥に、自分を巻き込まないでくれればいいですとは言えないが願いながら。
「じゃあ、とりあえず、リボーンからか……」
沢田家に戻っていく家継を見送って、恭弥は自室を振り返った。
「――で、どんなことになるか観察だけでいいの?」
「ん? そりゃ、この薬ぶっかけに行くしかねぇだろ?」
邪魔な奴らにはそれくらいしねぇとなぁ……とニヤニヤ笑う綱吉が、吸血鬼らしいマントのみを羽織っている。
――その下は普通の服を着ているが。
「それじゃ、行きますか♪」
「うん」
それはそれで楽しいと知っている恭弥はコクリと頷き、綱吉の後を追って自宅を後にした。
「とりっくあんどとりーと!」
リボーンがいる家継の部屋へと戻ってきた家継は、姿を認めると同時に言った。
その言葉に、少し眉を寄せる。
「それを言うならTrick or Treatだろ」
何を間違っている、と呆れたようにリボーンは言う。
それはそうだ。
どちらか、と聞かなきゃいけないところを、両方を聞いているのだから、尋ねる意味がない。
「んー、えい!」
けれど、両方をするようにと言われているのだから、これで正しいのだ。
小さめの声に気合を込め、家継はリボーンに猫耳カチューシャを着けた。
「…………てめっ」
「はい、これがTreatね」
どうぞ、と恭弥作って持たせてくれたパンプキンクッキーを手渡す。
可愛らしくラッピングされているそれは、今現在の家継の格好とは合っているが、男が作ったと思えば少し嫌なものだ。
「……これ…………いや、お前のその格好はどうした?」
「あぁ、これね。恭弥さんが……」
つ、と視線を逸らして誤魔化す。
家継からしたら、こんな格好は嫌なものだが、どう考えても彼らに逆らえる訳が無い。
完全にヒエラルキーの上下を覚えこまされている家継は、リボーンもそろそろ諦めればいいのに、と思う。
「あぁ、これは全部ツナも噛んでるのか……」
ギリッと猫耳を握り締めたリボーンのふくふくした手の中、カチューシャは悲鳴を上げて折れた。
「いや、ツナヨシからは変な薬を押し付けられたよ……」
それだけでもかなりオレ頑張ったんだけど……とごちる。
「本物の猫耳が生えるよりはマシ、だよね……?」
そんな薬だったんだ、と言う家継に、リボーンの頬は引き攣る。
「そうだな……」
それは否定しない、と頷いたリボーンだが、そこに綱吉が再び猫耳カチューシャを着けてきた。
「……ツナヨシ……」
「せっかく作ったのに、持っていかないから持ってきたよ」
はい、薬、と瓶に入った薬を家継に手渡そうとする綱吉を呆れたように見る。
「だったらツナヨシがやればいいじゃん」
「えー、ツーにやってもらうからいいんじゃないか」
じゃなきゃ、その格好させた意味無いし……と呟いているのを耳に入れて怒りの感情が湧く。
「ツナヨシ!!!」
「それに、オレだと加減効かないぞ?」
ニヤリと笑う綱吉は、ズラリと薬瓶を掌に転がす。
「全部使っていいんだ?」
にーっと猫のように笑う。
その顔を見れば見る程溜息が出てしまう。
「……わかった。どれを使ってほしいとか希望は?」
「んー……」
それじゃあねぇ、と諦めた家継に綱吉は一本一本示して答えた。
そんな二人の会話をずっと隣で聞いていたリボーンは、自分の名前が出た瞬間に窓から飛び出した。
そのまま日本から逃げ出したとのことである。
ざっと書いたハロウィン話。
んっと、多分来来世あたり?
その後は皆さまのご想像にお任せします☆
2010/10/31 作成
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