綱吉が学校から帰ってきた。
 自室に鞄を放り投げ、居間のパソコンの電源を入れる。
 パソコンの前に座りながら、ネクタイを外しポケットに突っ込んでいた。

「おい、ツナ。帰ってくると同時にパソコンに向かうとはどういうことだ!?」

 帰ってすぐにそんな行動を取れば、普段パソコンに触ることが無い綱吉にリボーンが声をかけた。

「あ、リボーン。ただいま」
「あぁ。帰宅の挨拶ならパソコンに触る前にしろ」
「ごめんね。忘れちゃいそうで……」

 覚えている内に何とかしたかったから、と綱吉は起動されたパソコンのブラウザを立ち上げる。
 何をだ? と視線で問いかけるリボーンに、綱吉は笑って一瞬だけリボーンを見て答える。

「獄寺君が面白い動画を教えてくれたんだよねー」

 だからだ、と言えばリボーンは頷いた。
 しかし、リボーンは疑問に思っていたことがあった。

「お前がパソコン扱えるのか……?」
「授業でそれくらいやったよ! 一応、うちにネット環境整ってるし、やったっていいだろ!?」

 今まで一度としてパソコンをしている姿を見たことが無かったためだが、綱吉は頬を膨らませて文句を言った。

「まぁ、いいけどな。分からない問題を知恵袋みたいな所に投稿なんかしやがったら、どうなるか……わかってるよな?」
「んなことしねぇよ! ――っと、これこれ」

 教えられた動画サイトに行き、ランキングを開く。

「――って、待ってー! 何、これー!! なんで一位にヒバードのサムネイルあんのー!?」

 丸く黄色いフォルムはどこからどう見ても、我が校の風紀委員長様のペット、ヒバードである。

「題名は、ふむ……校歌。再生してみればいいだろw」

 綱吉からマウスを奪って再生を指定する。

『♪ミ〜ドリ〜タナ〜ビク〜……』
「なんでヒバードの校歌上がってんのー!?」

 突っ込まなければいけないことだろう。
 何故、全世界に並中校歌が公開されているのだ? と聞きたい。

「――ってか、投稿者名! 風紀副委員長って、く、草壁さんー!!?」

 ちょっ、常識人だと思ってたのに!!
 風紀委員の中でも常識のある人だと思っていた。
 だから、あんなに礼儀正しくて、優しい面もあるのだと思っていた。
 なのに、なのに……

「なんでですか、草壁さんー!!!」
「きっと雲雀の命令だろ? あいつヒバード可愛がってるし」
「そんなあっさり決めつけるなー!!!!!! ってか、なんで一位ー!?」

 そうだ、一番の問題はそこだ。
 笑顔動画のランキングに入るにはかなりの視聴数を稼がなければいけないだろう。
 そんなに評価されているのか……ヒバードの歌が。

「雲雀なら、それくらい……」
「ひばりさーん! そんなことに権力使わないでーぇぇぇぇ」

 悲鳴をあげてしまった。
 ここは権力の使いどころじゃありません!
 確かに雲雀の大好きな並中校歌が有名になるかもしれないが、笑顔動画の運営会社に何をしたんだ……
 流石に運営会社が心配になってくる……
 なんか運営会社場所解放してて生放送とかしていることがあるとか聞いたけど、その動画開いたら赤い画面になってるとか、そんな恐怖は無いよね?
 無いって言って……と綱吉はかなり涙目になっている。

「せっかくだから、マイリス見ろよ」
「うっぅぅ、なんか嫌な予感……」

 かちっ
 動画の上にある説明文の所に記載されていたマイリスト。
 他の動画はこちらから、って書いてあったそれをクリックし、表示されるのをハラハラしながら待つ。

「……ヒバードの日常……生態……借り……確かに癒し動画かもしれないけど、しれないけれど……」

 ヒバードばかりの動画に、ヒバードは確かに可愛いけれど、何か間違ってるだろ!? と綱吉は叫んでしまう。
 横から見るだけだったリボーンが頷く。

「うん、雲雀が関わりまくってるな。説明文は完璧に雲雀だろ、これ」
「雲雀さん、本当に何してんのー!?」

 え? と思って動画の簡単な説明が書かれているマイリストの文字を見れば、親馬鹿な一言と言うに相応しい言葉。

「鉛筆が折れた時に取ってきて、と言ったら借りてきたよ。って、うん、確かに借りですね……」

 餌を啄ばむ動きは少し面白い、と書かれた生態など、色々な説明が書かれている。

「よし、ツナ。これを開け」
「ええぇぇぇぇぇぇぇー!? や、やだよ、そんなの!」

 ヒバードの狩り、という名前の動画。
 説明文は、飼い主の口癖と共に自分より大きい生物を狩ってきた。

「ちっ、貸せ」

 綱吉の右手から奪い取ったマウスでリボーンが動画をクリックしてしまう。

「カミコロスヨ! カミコロスヨ!」
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 鳴き出すヒバードの声と獲物に向かう姿。
 咄嗟に綱吉は叫んでしまった。
 雲雀の咬み殺すよ、がトラウマに近いくらいに刻み込まれている並盛町の住人なら絶対分かってくれるはずだ。
 目を閉じ、耳を塞ごうとした時、リボーンが言いだした。

「何だ、このコメントは」
「へ……?」

 リボーンの言葉が気になって流れるコメントへと視線を向ける。

『いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『咬み殺す!?』
『えぇぇぇぇー!!?』
『ひ、ひひひひひひひばっ、ひばっ……orz』
『\(^o^)/』
『無いわー……』
『か、咬み殺される……(´・ω・`)』

 流れる文字を見ていれば、そんなような言葉で溢れ返っている。

「並盛の住人、結構見てるんだね……」
「そういう問題か?」

 そんなのんびりと、とリボーンが返すのを聞いて、綱吉は渇いた笑いを返す。

「ヒバリさん、笑顔動画好きなのかな……?」
「どうだろうな?」

 ヒバードが好きなだけという可能性もあるが、この場所を選んだのは何故か考えると可能性はあるだろう。

「……あっ!」
「どうした?」
「上にあったタグが、『噛み殺す』『×噛み殺す ○咬み殺す』『秩序』『わかる人には恐怖動画、わからない人には動物動画』って……」

 タグを一つ一つ読みあげれば、リボーンは確かにそうだろうな、と頷いてくれた。

「お、オレ頭痛い……ちょっと上で寝てくる」
「夕食には起こすからな」
「うん、お願い……」

 ヨロヨロと綱吉はパソコンを落とすのもリボーンにお願いして二階へと上がっていった。




「おはよーっす、10代目!」
「うん、おはよ、獄寺君」

 翌朝、迎えに来た獄寺が綱吉と話しながら登校を始めた。

「あ、10代目、昨日言ってた動画見れました?」
「動画……動画、ね…………」

 遠い目をして綱吉の眼が死んだ魚のようになっている。

「え? どうしました? 見つからなかったとか?」

 ランキングで見かけたこともあり、簡単に見つかると思ったのですが……オレの不手際です! と綱吉に頭を下げる。

「今から動画のアドレスをメモしてきます! 10代目は先に学校へ行っていて下さい!」
「いや、違うから!! いや、教えてもらった動画は見てないんだけどね……」

 獄寺に見て下さいと勧められた動画は、機械が歌った歌の一つだったのだが、それを見る前にあんなことになってしまったから。
 流石に獄寺には悪いが、しばらくあの動画サイトには接続したくない。

「えっと……何があったんですか?」

 不審な綱吉の行動に、獄寺は困ったように尋ねた。

「昨日、ランキング開いたら、総合一位の所にヒバードがいた……」
「ひばーど……? って、あの、黄色い?」
「そう。あの、ヒバード」

 もふもふっとしていて、見ているだけでも癒されそうな歌う鳥。

「実情はヒバリさんのペットの、ヒバード」
「…………」

 沈黙を返す獄寺が綱吉より歩くのが遅れ気味になったことに気付いた綱吉が足を止めて振り返ると、獄寺が横にガコンッと倒れた。

「えぇぇぇぇー!?」

 ご、獄寺君、大丈夫!?
 慌てて綱吉が駆け寄る。
 ぶつかった頭の形に塀が凹んでいるのを見て綱吉は焦る。
 どんな勢いで倒れたの!? と。

「おいおい、獄寺、大丈夫か?」
「あ、山本。おはよー」
「はよ、ツナ。獄寺、どうしたんだ?」

 ちょうど分かれ道の場所から山本が近付いてきた。
 今日は朝練が無い日だったようで、いつもの時間に出てきて合流してきたようだ。

「あー、うんっとね……」

 昨日、獄寺に紹介された動画を見に行こうとしたら、ランキング一位にヒバードがいたことを説明する。

「へー。ヒバリって本当にヒバード好きなのなー」

 その一言で終わらせ、倒れている獄寺を救出に向かった。
 親友の大物振りをちょっと甘く見ていたようだ、と綱吉は苦笑しながら、同じく獄寺を助けに向かうのだった。


* * * * *


 熱を出してしまった獄寺は、保健室で体温を測った後帰宅した。
 保健室にいようとしても、シャマルが追い出すだろうから、と帰宅するのを止める者は誰もいなかった。
 フラフラと自宅へと向かう獄寺を送ると言う綱吉を、10代目にお手間はかけられません、と言う獄寺が断った。
 熱があるのは事実だが、自分で何とかなるから、と言い張り、綱吉は仕方なく見送った。

「らんきんぐ……」

 まずは笑顔動画を確認しなければ……開いたランキングを見れば、先日見た時には存在しなかった黄色いもふもふのサムネイル。

「ちっ、マジかよ……」

 綱吉が嘘を吐いているとは思わなかったが、それでも驚いてしまう。

「クソッ」

 カチッとマウスを叩くようにして動画を開く。
 何これ可愛い・飼い主の手が気になる・飼い主の学ランと風紀腕章って、まさか……・←お前何知ってるんだよ?・知らない方が幸せなこともある・並盛の秩序
 並んだタグに頭痛を覚える。

「これ、答え出てるんじゃねーかよ……」

 まさかも何も、最後に並盛の秩序って答えが!
 タグ編集ボタンを間違って押してしまった獄寺はパソコンの画面を殴りつけた。

「タグロックしてんじゃねぇよ!!!!!!!!!!!!!」

 何これ可愛い★・飼い主の手が気になる★・並盛の秩序★とか、ロックしたの投稿者だろ!?

「投稿しゃ……副委員長かよ!!」

 投稿者名を見るために上に戻った獄寺は怒りで熱が上がってきていることに気付いて深呼吸した。
 少しは落ち着いて、それで見よ……

「何だよ、その投稿者コメント! 逆鱗に触れたが、一片の悔い無し! とか、何だよそれ……」

 顔文字がサムズアップしているのを見てクラクラしてきた。
 動画を見る前からこんなにヒートアップしていて、大丈夫なのか、オレ……
 流石に今の熱があるような状態では見るのは厳しいと判断し、ベッドに横になった。


* * * * *


 獄寺が休み、山本が野球部に向かった後、帰ろうとしていた綱吉は担任の先生に捕まった。
 成績の件でお叱りを少々頂き、それが終わったから帰ろうとしたのを首根っこを抑えられて止められた。

「ちょっと、これを応接室に運んでおいてくれ」
「えぇー、雑用ですかー?」

 しかも、応接室って先生が行きたくないだけなんじゃないですか……?

「お前の成績を思えば、先生の手伝いを一つでも多くしておいた方がいいと思うぞー?」

 それを言われると痛い。
 綱吉は、分かりましたと大人しく書類を手にした。




 コンコン。

「どうぞ」

 ちょっと外出中ならいいのに、と思った雲雀の声に促されて応接室に入る。

「何、君?」
「担任の先生から、この書類を持って行って欲しいと言われまして……」
「あぁ、そういうこと。そっちに置いておいて」

 そう言った雲雀はデスクでは無く、ソファに座っていた。
 ソファはテーブルを挟んで向かい合っているが、綱吉に近い方に雲雀は背中を向けて座っていた。
 置くために真後ろを通った時、テーブルの上にあるノートパソコンの画面が見えた。

『オレ、明日からどんな顔して登校すれば……』
『禿同』
『オレ、明日から引きこもるんだ……』
『バカ、サボりとか咬み殺されるぞ』
『オレは悟りを開いた』

 流れるコメント。
 どっからどう見ても昨日の動画です、ありがとうございm(ry

『え、何このお通夜コメ』
『ちょwwwお通夜wwwww』
『癒しなのに解せぬ……』

 いや、確かに並盛町の住人以外ならそう思うかもしれないけれど……
 どんだけ沢山、昨日のオレみたいになった人がいるんだろう……?
 立ち止まる訳にもいかないので、ゆっくりとしたスピードながら足を進める。
 デスクの上に書類を置いて、重しとして置いてあったクリスタルの置きものを上にのせる。
 振り返ると、雲雀は携帯電話を耳に当てていた。

「雲雀だけど、ID言うからアカウント停止しておいて」

 ……アカウント停止?

「うん、そう。僕のブラックリストに入っているのをしておいてくれるなら、それでもいいけど」

 えぇー……それってさっきの笑顔動画のことですよね?
 動画投稿は草壁さんだったみたいなのに、ヒバリさんもアカウントあるのー!?

「それじゃあお願い」

 うわぁぁ、電話一本でアカウント停止されちゃうの?

「え? 株? これ以上買えって言うの? あぁ、分かったよ。今度そっち行く」

 株主だ、株主! すげぇ……
 電話を終えた雲雀は視線に振り返り、まだいたの? さっさと帰りなよ、とばかりに見てくる。

「お、お邪魔しました……」

 ぺこり、と頭を下げて応接室を出る綱吉は、雲雀が今度は全く違う動画を見始めるのを確認した。



「…………ヒバリさん、結構動画見てるみたいだったな」

 え? あれが所謂……ニコ厨?





えっと、たまたま動画の話をしている最中に話が展開してしまいまして。
で、適当に会話文を少しだけ書いたら、纏めて! と言われたので、書きました。
え? 私はニコ厨じゃないですよ? ……たまに見るけど。

2011/10/5 作成
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