「バレンタインですね〜」
14日まで一週間を切った日、日本へと出張していた骸が帰ってきて言った。
「日本のバレンタイン商戦は凄いですよね」
うっかり土産を買おうとデパートに行って巻き込まれました……と米神に手をやってみせる。
けれど、日本の生活に慣れているはずの骸が言うことでは無いだろう。
「何だよ、学生じゃあるまいし、今更関係無いだろ」
モテている自慢か?
いくら日本贔屓のボンゴレでも、全員が全員日本式バレンタインをする訳では無い。
チョコを沢山渡されて困ることなんか起きないだろう。
「いえいえ、そういうことではなく」
もし日本なら抱えきれない程のチョコレートを受け取るであろう骸をじと目で見ながら溜息を吐く。
「一週間切りますけど、用意しました?」
「何を」
「チョコを」
「何でオレが」
は? と呆れたように見る。
「オレは男だぞ?」
「だって、君――」
「あぁ、そうそう。一応守護者にはプレゼントはあるぞ」
骸の言葉を遮って言う。
「腕時計を壊したって言ってた山本に、獄寺君には無難にシルバーアクセサリー。ランボにはぶどうジュース他加工品を」
「…………」
「リボーンは自分から欲しい物言ってきたし、お兄さんはネクタイがすり切れてたんで京子ちゃんにリサーチして用意を」
クロームにも欲しい物聞いて用意しているから大丈夫だ。
「お前は板チョコ一枚でいいか?」
確かチョコが好物だったよな、お前……と考えるように言う。
「――って、そうじゃなくて!」
というか、分かっていて話逸らしていません?
「雲雀君にチョコをあげなくていいのか、って言ってるんですよ!」
噛み付くように声を上げた骸に、はぁ、と大きな溜息を吐いた。
「雲雀さんがチョコレートなんて欲しがると思うわけ?」
しかもオレから?
「ありえない!」
「……わかっていませんね」
もう少し彼のことを理解した方がいいんじゃないですか?
「君からのチョコなら喜んで受け取りますよ」
わかっていませんね、と呆れたように言う骸に、分からないと言った風に綱吉は首を傾げた。
骸に焚きつけられたのが原因、というわけでは無いが、綱吉はチョコを用意していた。
一口で食べることができるトリュフが数個入った小さな箱。
渡せなかったらすぐにでも自分の口に入るくらいの量のそれを机の中から取り出した。
「いや、でもさぁ……」
甘い物が好きだと聞いたことが無い。
これでも約十年付き合っているが、チョコが欲しいと言われたことも無い。
「雲雀さん、イベントなんて興味無いでしょ……」
風紀が乱れる日、くらいの認識でいそうだよ。
「何ぼやいてるの?」
「うぇぇ!? ひ、雲雀さん!?」
後ろからかけられた声に驚いて心臓が飛び出すかと思った。
慌てて振り返れば恋人の姿に、手に持っていたチョコの箱を取り落とす。
「何それ……?」
「いやいや、な、何でも無いですよ!」
あははは、とわざとらしく笑い誤魔化そうとするが、箱を取り上げられてしまう。
「……ちょこ?」
「あ〜……今日って2月14日じゃないですか」
「あぁ、バレンタイン?」
日本にいればいくら何でも分かるか。
「貰ったの?」
「えぇ!? ち、違いますよ!」
「じゃあ……」
知り合いに配るとかしたのか? と一瞬考えるが、それならば隠そうとした意味が分からない。
「僕に?」
そう、渡そうとしている相手に見られたでも無い限り。
図星を突かれて赤くなる綱吉に雲雀は猫のようににまーっと笑う。
こういう時、嗜虐心に駆られる。
「――悪いですか?」
「悪いわけ無いじゃない」
拗ねたように言う綱吉を抱き締める。
「女子からのイメージが強いから嫌なんだと思ってたよ」
付き合っていても男だという矜持くらいあると知っている。
だから今まで何も言わなかった。
言わなかったが……
「嬉しいもんなんだね、これ」
下足箱に大量に入っていた物は捨てるしか無いし、草食動物共は騒ぐだけ騒ぐ面倒なものだと思っていたが、好きな人から貰うだけでこんなに違うのか。
「えっと、ちゃんと手渡しできませんでしたけど」
受け取ってくれますか? と抱きしめられたまま上目遣いで見詰めてくる綱吉に、雲雀は頷いた。
Happy Valentine!
何故普通の設定になったのか、自分でも分からない。
でも、私あまり書かないよね、十年後設定、と思ったw
2011/2/14 作成
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