亥の一つ。(現在の22時頃)
大半の子供や一般の大人は寝てしまい、一部暗部や上忍といった一部の者が活動する時間帯だ。
夜空 世都。この男もまた、そんな上忍の一人だ。
とはいうものの、今回は単に任務が長引いてしまい、今はその帰りだ。
そんな時、いきなり破裂音がして、思わず立ち止ってしまう。
本当は暗黙のルールで日が沈んでからは移動中の忍は任務中の忍を観察してはいけないのだが…
(方角といい、騒ぎ声といい、目測とはいえ距離といい、明らかに草隠れの里だ)
今回は大変で少しくたびれており、早く帰りたかったが、好奇心のほうが上回る。
「…行ってみるか」そう呟き、里へ向けて足を運んだ。
順調に進み、あと少しで目的地に到着するという時、急に立ち止まる。
(!!いきなり人の気配だと!?しかもこの隠し方は明らかに素人だ。…確認しよう)
向かった先の光景はもっと奇妙だった。
服は半そで、半パンと向かおうとした先の里ではあり溢れているが、服も手も血塗れだ。
なのに、武器を持っておらず、チャクラもほとんど扱えない。
更に、この子の足元には血の滴の跡があるが他の跡と死体は見当たらない。
さまざまな手段を頭の中で模索するも、一向に手段が思い浮かばない。
そこで、大胆にも直接会うことにした。もちろん警戒を忘れずに。
とりあえず、少しずつ気配を弛める。すると、木にもたれ掛かる姿勢は変わらず戒厳になる。
そこで、急に目前に移動し、会話を試みた。
「やあ、君はどうしてここに居るのかな?」
すると、相手は緊張を解き。
「お願いです。私を助けてください」
いきなりそう言われても困るので、他愛ない質問をしつつ、整理をすることにした。
「えーっと、とりあえず名前を聞いてもいいかな?」
「…まち」
「まちちゃんね。どこの出身かい?」
「…草隠れの里」
「助けるって、まちちゃんを草隠れの里まで送ればいいの?」
「いやっ!そこに行きたくない!」
目がどれだけ深刻なことかを物語っている。
「…どうしてか教えてくれない?」
「…解った」
そう返してから、少しずつだが語ってくれた。
今日、いきなり両親に殺されそうになり、抵抗していたら逆に殺してしまった。
そうしたら、親が呼んだ人にも殺されそうになり、最期には自爆を試みてきた。
間一髪逃れたものの、物心が付いたころから自分が里中の嫌われ者で、すぐにやり玉に挙げられた。
このままだと殺されるので、里から逃げ出した。
その話を聞いて、一つの決心がついた。
「まちちゃん。木の葉の里へ来ない?」
向こうは真剣に悩み、一つだけ質問をする。
「嫌われない?」
「分からない。けど、『全然知らない』から嫌うのは少なくともいないよ」
そうしたら、縦に肯いてくれた。
「じゃあ、早速行くから体を預けてくれない?」
「何処まで?」
「とりあえず、火影様のところまで行き、住民か滞在の許可を貰う。そうしたら俺の家かな」
「ほかげ様に会う前に血を落としたいのですが」
「ごめんね。本当はそうしたいけど、服や下着が無いの。我慢してくれる?」
「…分かりました」
そして、すぐにまちは背中にのり、肩に手をかけた。それを確認すると猛スピードで木の葉の里へ向かった。
コンコン「入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、良いぞ」
ガチャ「失礼します」スッ「これが報告書です」
「うむ。遠方の任務、御苦労であった世都よ」
「いえ。褒められることはしていません。あと、急にですが、頼み事を少々よろしいでしょうか?」
「それは、おぬしの背中で眠っておる子のことか?」
「眠って…?」スー「気付きませんでした。ええ、この子のことです」
「それだけで大まかに推測ができる。とりあえず三日間の滞在を許そう。
住民登録の許可は面と向かって話がしたいから、そうじゃな…次の日の午後にでも来なさい」
「ありがとうございます。それともう一つ」
「ん?何じゃ?」
「この子に合うサイズの服ってありませんか?」
「…右隣の部屋にある箪笥の一番下にナルトの服の予備が入っとる」
「ありがとうございます!」ガチャ!バタン
「…世都は相変わらず賑やかだのう。さて、報告書に目を通したら仕事を再開するかのう」