「・・・・・はぁ〜〜〜〜」

不満と、淋しさと切なさを乗せた溜息が、白く窓の外へと消えていった。

それは紅い夕焼けに照らされて、とても幻想的なもの。

けれど、やはりそれは一瞬の事で、瞬きをしたら無くなってしまった。

 

「はぁ〜〜〜〜、もぅ。」

もう一度、口からは白い息。

 

 

 

ナルトとツナの、'mas大作戦 !!(だってばよ?)

 

 

 

 

朝、目が覚めると布団から出てくるのが億劫で、身震いする寒さにうんざりして。
息が白く自分に纏わりつき、小さな雷の欠片たちがこの手を痛め、傷つける。
外に出た瞬間とてつもなく小さな針が身体を刺して、傷の無い痛みを与えてくる。
土の中は凍りつき、霜柱と言うものができた道を見る、もぅ冬真っ只中なんだ。

そんな時に、街を見てみれば煌くイルミネーションと楽しい音楽が流れていて。
白いふわふわをつけた赤服の人達が、ホッカイロとチラシをもって街行く人に配っていた。


「クリスマス・・・・か。」


そう、町は"赤鼻のトナカイ"と"ジングルベル"に支配されてしまった。
クリスマスと言う異国の文化、見たこともない人の聖誕祭、そして恋人たちの一大イベント。

仲が良さそうに手を繋いで歩いて行くひと、人、ヒト!!カップルだらけ。
そんな、朝から何やってんだバカップルめ(ケっ)という光景を思い出し、再び溜息。


「「・・・はぁ〜〜〜〜・・・?」」


自分の溜息、けれど全く同じタイミングで、同じような溜息が隣から聞こえた。
とても重たくて、淋しくて切ない、そう自分と同じような溜息をした人。
その人は、自分のことをとても驚いたように見つめていた、そしてきっと自分も。
だから、少し戸惑いながら笑えば同じように戸惑いながらにこっと笑った学校のアイドル。

話したことはなかったけれど、"有名"だったから知っていた。彼は・・・・・


「・・・・渦巻き、君?」

「ナルト、でいいってば。」

「じゃあナルト、だよね?」

「お前、沢田綱吉だってば?」

「知ってるの?」

「だって、有名だし?・・・そっちこそ」

「えっ?だって、ナルトは有名だから・・・・」

「「・・・・・・・?」」


まぁいいや、とツナは改めて自己紹介をした。ツナと呼ばれて、ナルトにもそう呼んでほしいと。
そしてナルトも、よろしくだってばよっと元気よく、ツナの手を握った。

ちなみに、この教室には二人しかいない、他に人がいたならば・・・・・・きっと倒れているであろう。
"有名"な二人、人間自分自身の事は自分より相手の方が良く知っているとは言ったものだ。
この学校でいちばん有名な人、それはツナとナルトの二人だった。
どのように有名か、彼等のファンの言葉からすれば、輝く容姿と、何にも負けない強さそして心の美しさ!
そして何より、その愛らしい性格と人懐っこさ・・・・・と長いからここまでにするが。
簡単に言ってしまえば、そん所そこ等のアイドルよりも可愛く性格も良い、素晴らしい人だと言う事。
ツナはナルトの"アイドル"の噂、ナルトはツナの"アイドル"の噂をよく耳にしていた。

つまり、お互いがお互い"自分が有名だと知らぬは己ばかり"と言う事なのだ。


「・・・・・ツナってさ。」

「・・・・?うん?何?」

「あ、えっと・・・その・・・」

「どうしたの?」

「・・・・奈良先生と、仲良いよ、な。」

「そうかな?」


奈良先生というのはこの学校の教師で、科学を担当している黒髪の美しい人だ。
ツナは別に仲が良いというわけでは無い、科学が得意で好きだから質問をよくするだけだ。
家事一般、もとい家庭科が大の得意なツナは"分量を図って入れるだけ"の化学実験を好む。
ツナ曰く、ちゃんと図って入れただけで不思議な事が起きるんだから、素晴らしい・・・そうだ。

その旨を知ったナルトはどこか安心したように息を吐き出した、どうしたのだろうか。


「ナルト、ってさ・・・・」

「ん〜何だってば?」

「リボ山先生と、仲・・・・良いね。」

「そんな事ないってば。」


リボ山先生とは、同じくこの学校の教師で、数学を担当している人気の教師だ。
ナルトも別に仲が良いわけでは無いと、数学が好きだから質問をするだけだと答えた。
以外や以外、見た目や性格とは裏腹にナルトは数学が得意だった。(失礼だってば!)
ナルト曰く、図形はパズルみたいで、計算や文章問題はクイズみたいで楽しい・・・そうだ。

そしてその事を知ったツナも、同じように安心したような息を吐き出したのだった。

 

 

フッと、思ったのは同じ"コト"。

 

 

「ナルトって・・・」

「ツナって・・・・・」

 

「「先生が、好きなの?」」


カァカァと鴉の鳴く声だけが響く、落ちかけている真っ赤な夕日が二人の頬を染めていた。
その顔は、夕焼けのせいだけでは無いほど紅く染まっていて、二人は押し黙ってしまった。
それは相手が自分の質問に"YES"と言っているようなもので、そう分かってしまったから。

あぁ、こっちも、自分と同じような恋をしているのだ・・・・ということが。


「ナルトは・・・・奈良先生?」

「ツナは・・・・・リボ山先生?」

「「好きなんだ。」」

 

二人の間で、何だか不思議な協定が結ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

で、今ツナが寒い廊下を走っている。

それは先ほど結んだ協定の相手との約束、そして自分の為に。


「奈良先生、まだいてくれてるかな?」

「ツナ?奈良に用事があんのか?」

「へ?」

「よう!」

「リッ・・・リボ山先生?!」


あまりの驚き様に、どうしたんだ?と眉をひそめるリボ山。
そしてツナの口から出た"奈良先生"とやらを思い出して、もしかして・・・・・と顔を顰めた。
ツナの驚き様、慌てたようにパクパクと開閉する口元、何よりも夕日以外で紅くなる顔が、
その"奈良先生"とやらに対して想いをよせているのだと勘違いさせてしまった。
二人とも悪くなかった、悪かったのは・・・・・タイミングと言うものだけ。


「恋沙汰も良いが、勉強を怠るなよ。」

「エッ?・・・・リボ山先せぇ?」

「じゃあな。」


ツカツカと、硬い廊下に響く靴音、チラッと見せたリボ山の視線にツナは落ち込んだ。

(・・・・怒ってた、何で?!なんかやっちゃったのかな??)

大好きなリボ山に邪険気味に扱われたと思ったツナ、落ち込みながら科学準備室までいった。
その足取りは恐ろしいほど、重く、暗く、ジメジメとまるで茸が生えそうなくらい暗いものだった。
嫌われたのかな?それとも自分のことが嫌いだとか?と、どんどん悪い方へと考えてしまうツナ。
そんな考えを振り切るようにぶんぶんと頭を振った、が・・・・それが災いしてしまった。
振りすぎた頭は眩暈を訴え、開けようとした難いドアに思いっきり突進して行った。


「―――っ!?」


ぶつかるっと思いとっさに目をギュッと瞑ったツナ、けれど痛みも硬さも襲ってこないまま。
柔らかく暖かいものが変わりにツナを包み、顔を上げれば其処には、お目当ての人が。
危なねぇな〜と面倒臭そうに訴える声、そしてやる気の欠片もない"あの人"と同じ漆黒の瞳。

大丈夫かと聞いてくる白衣を着た、化学薬品の香りを纏った教師がいた。


「奈良先生。」

「気を付けろよ、沢田。」

「ハイ、ありがとう御座います。」

「イエイエ、どうした?なんか質問か?」

「アッ、聞きたい事が・・・・」

「じゃ、入れよ。」

「失礼しま〜す。」


慣れ親しんだ科学準備室のソファーに座り、ツナは入れてもらった紅茶を口に含んだ。
ツナ仕様に甘く、ミルクの入った紅いお茶は凍てついた身体と、先ほどの心を暖めた。
ほぅっと幸せそうに吐息を漏らすツナに、奈良がクスクスと口元を抑えた。
相変わらず嬉しそうに飲む、とツナの仕草に笑い、可愛いなと頭を撫でた。

嫌だと思わないのは、きっと目の前の人が"あの人"と同じ漆黒を纏う人だから・・・・


「で?聞きたい事って何だ?」

「奈良先生は、どんな人が好き?」

「・・・・・何だそれ?」

「チョット、頼まれごと。」


チロッと赤い舌を出して、いたずらっ子のように笑うツナに、思わず苦笑が漏れる。
そして考える、"好きな人"の特徴、初めて出会った愛しいあいつの事を。


「そうだな・・・・太陽みたいな奴、かな。」

「―――!!そっか、ふ〜ん。」

「ってお前、他人の事心配してる場合か?」

「何がですか?」

「沢田の黒曜石がこの事を聞いたら、勘違いすんじゃねぇ?」

「アッ・・・あの・・・こ、く・・・・」

「俺まで怒られるのは簡便だな、何せ・・・・」

 

あの先生は人一倍独占力が強そうだからな。

その意味が分からなかったらしいツナは、コテンと頭をかしげて奈良を見ていた。
これは骨が折れるな〜とツナの頭を再度撫でてやり、これで満足かと笑った。
ツナは嬉しそうに、本当に嬉しそうに奈良に礼を言い、暗くなった空を見て部屋を出て行った。
その時、奈良の顔を見て「先生は幸せ者です」という不思議な言葉を残していった。


「幸せもん?」


もちろん、奈良にはツナの言いたい事が何かわかってなどいなかった。
それでも言い、とツナは笑い科学準備室のドアを閉め、寒々しい廊下をかけて行った。
向かうは教室、朗報を持って、歩く(と言うより走る)足は早まって行った。

 

幸せものだと、とても幸せな恋をしていたと伝える為に・・・・・・・・

 

 

 

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