「僕にはできません!」
骸が手にした物を落とす。
「そんなっ、そんなっ!」
自身の状態は理解しているのに骸は頑是ない子供のようにふるふると首を振る。
「ツナ君とキョウちゃんの顔を汚すなんて!!」
僕にはできません! と目の周りに黒いパンダ状態と頬の○×に描かれた墨に汚れたまま、骸は嘆き膝を折った。
「できないっつーならそれでもいいけどさ」
別にオレもキョウちゃんも思い切り描くよ? と先程描いた○×を示す。
「うん、真剣勝負、でしょ?」
そう言って始めたよね、と恭弥が告げる。
手にした羽子板をもう片方の手にパシンッと当て首を傾げる。
「でもでも!!」
それでも僕にはできないと骸は首を振る。
座り込んだ骸に仕方ないなぁと綱吉は苦笑する。
「じゃ、次始めよっか」
できないならそれはそれでいいし、と綱吉が恭弥を促す。
頷いた恭弥が転がった羽を拾い骸に向かって飛ばす。
ふわりと飛んできた羽を打ち上げ、次は綱吉が恭弥に向けて飛ばす。
だいたい順番に、羽を落とさないように三人は羽根つきをしていたのだった。
勝っても筆を手にすることは無い骸と、勝つと楽しげに描く恭弥と綱吉によって、骸は塗る場所が一つとして残っていない真っ黒になった。
目だけが青く、口を開くと赤と歯の白が見えるけれど、真っ黒だ。
綱吉が最中に墨汁を入れた器を骸にひっくり返したため、青い髪すら黒く染まっている。
「むぅ……骸、キョウちゃんとお揃い…」
髪の毛が同じ黒だと言いたいらしい。
「いやいや、ただの墨ですよ!?」
「ほら、ツナと僕はお揃いでしょ?」
互いにほっぺたに○を描いた墨の跡を示して恭弥が言う。
「うん、そうだけど…」
「僕はあんな変な髪形にしないから大丈夫」
「うん、そうだよね!」
うんうん、と頷いて納得した綱吉が恭弥にぎゅーっと抱き着く。
それを見ながら、僕は変な髪形じゃない……とぼやきながら、二人が仲良く楽しくしているならいいか、と骸は自己完結する。
「ツッ君、キョウちゃん、むっ君。おやつよ〜」
黄粉餅を作ったから食べましょう? と窓を開いて三人を呼ぶ奈々には〜いと返事を返す。
「あらあら。ツッ君とキョウちゃんはお手手を洗って綺麗にしていらっしゃい」
二人程度の悪戯描きなら、別におやつの後でも問題無いだろう。
「むっ君は先にお風呂ね」
「はい、すみません……」
髪の毛から墨汁が滴ってしまっては家の中を汚してしまうから、と頷いた骸は、奈々に先導されて風呂場へと向かう。
洗面所で順番に手を洗う綱吉と恭弥を確認しながら、奈々は骸を洗い場で洋服を脱がせる。
「むっ君、このお洋服はもうダメかもしれないわ……」
ツッ君のお洋服で我慢してくれるかしら?
「サイズは多分大丈夫だと思うけれど……」
「あ、はい。すみません」
よろしければお願いします、と奈々に丁寧に言い、頭を下げる。
「じゃあ、籠に用意しておくから」
よく温まってね、と奈々が出て行き、骸はシャワーで洗い始める。
墨を落とすように、髪の毛と顔を重点的に。
「あ〜! 僕の分も残しておいてくださいよー!!」
風呂から上がってきた骸がほかほかした白い湯気を上げながら、机の上に残っていない黄粉餅の皿に声を上げる。
それに笑って奈々は台所から新しい皿を持ってくる。
「お正月ですもの、むっ君の分のお餅も用意してあるわよ」
「ありがとうございます!」
わ〜、美味しそうです! と満面の笑みで奈々に駆け寄る。
恭弥と綱吉はお腹いっぱい食べたのか、羽根つきで体力を使ったのもあり、炬燵でうとうとし始めている。
「もうお昼寝の時間ねぇ……」
むっ君も食べ終わったら少し寝るといいわよと言いながら綱吉たちが食べた皿を片付ける。
骸はコクコクと数度頷いて、炬燵で向かい合って抱き合うような形で眠っている二人に優しい視線を向けた。
ってな辺りで、幼少期なお正月でしたー!
まぁ、設定を考えると5歳だと思われ……
って、何か設定よりツナが強い気がするけど、まぁいっか。
あけましておめでとうございます。
本年も夢一夜及び紗奈を――もといキョウちゃんたちをよろしくお願いいたします!
2011/1/7 作成
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