ぷりぷりと怒りを滲ませながら、彼女は鞄に衣服を詰め込んでいた。
 急いで使う物だけをこちらに。
 それ以外はダンボールに詰め込み送る。
 あと数日でここを引き払い、全寮制の高校へと転入するためだ。

「いくら何でも急に家売り払ってこっちに来いってのは無いよなー」

 だからツナヨシは横暴なんだよ! とボスッとクッションを殴り付ける。
 家の所有者は兄だから仕方ないとはいえ、やはり急すぎる。

「――でも……」

 まだ今世では会っていない骸に会えるかもしれない。
 昔貰った幻覚避けの指輪を見つめる。
 骸は今頃どうしているのだろう?
 綱吉も恭弥も、そして自分もいるのに、とつぐみは溜息を吐いた。



* * * * *



 薔薇の形を模した門をくぐって鳳学園へ入る。
 命令形の手紙の中に懐かしい顔がいっぱいだから安心して来いと書かれていた。
 その言葉の通り、寮へ向かう道すがら見えたグラウンドに山本の姿が見える。
 ロードワーク中らしき了平の姿も同じく。
 ここは幼等部から高等部まであるらしいから、下の学年を見れば他の子たちもいるのかもしれない。
 でも、とりあえずは寮へ行き、綱吉たちを探さなければ。


 着ていた学ランの首元に指をかけてフックを外して息を吐いた。
 綱吉とは違い、割り切るのはまだ辛いのだ。
 なんでナツはあんなに平然としていたのか、未だによくわからない。
 できるだけ男物を着るし、胸はサラシでぐるぐる巻きだ。
 まぁ、今回学ランなのは、多分に兄である綱吉への意趣返しだが。

 さて、どこにいるだろう、と気持ちの切替のために外したフックをそのままに、校舎の方へと足を進めた。



 カラーンゴローンと鳴る鐘の音。
 塔に心惹かれたから、と上る。
 閉まっている門の前に着き、踵を返そうとしたが、その前に門が自動的に開く。
 わずかながらに炎の力を感じ取り、つぐみは眉をしかめる。
 こんな大掛かりな物を綱吉たちが作るとは思えないが、何かの心境の変化だろうか?
 楽しいことがあれば動くだろう、と思い直しながら中へと足を踏み入れた。

「薔薇園?」

 母が見せてきた秘密の花園を思い出した風景を見渡して、歩を進めた。
 ――と、女の子が男子に腕を引っ張られ、振り回すように連行されているのが見えた。
 嫌がって……ないか。
 止めるべきだと思いながらも、女の子の表情を確認した。
 嫌がっては無いが、痛そうだな。
 そして、彼女の顔を見てしまったら助けに入らない訳にはいかない。
 骸がかなり気に入っており、綱吉と恭弥からもいつも可愛がられている髑髏を見つけてしまえば、そうなるのも仕方ないだろう。
 いくら本人で無くとも、性格に大きな違いが出ないのだから、ここで見捨てなどしたら、どんな目に合わされることか……

「止めろよ!」

 手首の上を掴み、手を離させた。

「何だ、お前は!」

 邪魔をされたことが気に食わなかったらしく、激昂する。
 正面から見れば、彼もまた見覚えのある人物だ。
 持田先輩。
 いつもなら京子ちゃんに言い寄っているが、今回は髑髏なのかー。
 のんびりとつぐみは手を離した。
 つぐみが離した手を見て、自身の手首を撫でながら持田は髑髏に声をかけた。

「こっちへ来い」

 そして、つぐみに告げた。

「お前もデュエリストだったんだな」

 デュエリスト?
 なんだ、それは……と思ったつぐみの表情を読み取ったのか、説明してくれる。

 骸から貰ったのと同じ指輪を持った候補者たちが、薔薇の花嫁を奪い合う。
 その説明に髑髏へと視線を移せば、髑髏の眼帯では無く薔薇が描かれている。
 しばし見とれるように見詰めていれば。髑髏はにこりと笑う。
 デュエルならば、と呪文めいた言葉を持田は口にする。
 世界を革命する力――そんな物が簡単に手に入って変えれるなら苦労はしない。
 でも、それでボンゴレを何とかできたらツナヨシに褒められるかも、と邪念がよぎる。
 髑髏の制服がドレスに変わる。
 ただの幻覚か。
 確認して平然としていたが、髑髏の胸から剣が生えてきて驚く。
 その剣に感じ取れる力も驚きを深める。
 命の塊のような力強さは、持ち主の生命力を削るだろう。

「決闘だ」

 髑髏から剣を抜いた持田が宣言する。
 その場に転がっていた竹刀を手にして構える。
 持田との戦闘ではいつも重り入りだが、これは軽い。
 そのまま持田の攻撃を受け止めた。
 転がっていたのは持田の竹刀だったらしい。
 それに気付いた持田が舌打ちする。
 だが、竹刀の一本や二本と思ったのか、剣に体重をかけた攻撃をする。
 正面から受けては竹刀が折れると剣の切れ味の鋭さから感じる。
 剣での戦いは全くの専門外。
 拳でならば数名を除いて勝てる自信はあるが……
 それでも今はこれでやるしか無いだろう。
 世界を革命する力より何より、髑髏のために。




 何度か剣を振り下ろしたが、当たらない。
 するりと身を交わし、正面から打ち合おうともしない。
 その事実に持田はイライラし始めていた。
 この剣が勝者の持ち物になる世界を革命する力の鍵なのだということは、初めからわかっている。
 全員と決闘をしなければならないが、現在は自分が――

「くっ……」

 ようやく相手の竹刀を捉えた。
 そのまま下まで下ろしたため、竹刀は半ば程で真っ二つになった。

「これで終わりだな」

 デュエルの様式である、胸に飾った薔薇の花弁を散らそうと剣を動かした。
 その動きの見透かしたように身をずらし、短くなった竹刀で持田の胸元へと突き出した。
 はらはらと散る胸元の薔薇に持田は呆然としていた。
 そんな中、髑髏はあっさりとお世話になりましたなどと持田に頭を下げ、そしてつぐみによろしくお願いしますと笑ってくる。
 一人だけ独特な世界に住んでいるかのような反応は髑髏らしいとしか言えない。
 頭のどこかで苦笑めいた思考が浮かび上がる。

「お前……名は?」
「つぐみ。沢田つぐみ」

 持田へと正面から向かいあい名乗る。
 それに満足したのか、持田は名乗り、今後再び決闘をする時までと宣戦布告した。




 とりあえず問題は解決したようだと判断したつぐみは薔薇園を後にしていた。
 広い学園内を見て周り、綱吉たちを探すつもりで。
 しかし一通り歩き回ったが見つからず、今日の所は諦めて寮へと帰還した。

「沢田つぐみさんね。急遽部屋が変わったんですって」

 持ってきた荷物はもう移動したと言われ、割り当てられた家へと移動することになった。
 新しい部屋は、離れた一軒の家の中――

「お待ちしておりました、つぐみ様」

 髑髏がメイドのような格好で頭を下げた。
 つぐみは呆然と彼女をただ見詰めた。


 綱吉と恭弥はどうしているのか?
 骸は?
 わからないことだけが山積みとなっている中、髑髏の現状も調べないとダメか、と溜息を吐いた。



* * * * *



「ねぇ、知ってる〜?」
「知ってる〜?」
「いくら最強の二人でもできないこと、あった」
「だから、呼んだ」
「だから、動いた」
「確実にこの場をどうにかできる存在を」
「事情は全部秘密だもんねー」
「知らなくても動く」
「知らないからできる」
「ランボさん楽しみなんだぞ」
「イーピンもー!」

 これから楽しみだ! と二つの小さい影は笑い合った。






潔く格好良く生きていこう♪
出てきてませんが、王子様がむっくんです。
だから主人公はつぐみ、とw
色々考えて書いてたのですが、時間がかかりすぎてます(苦笑)
とりあえず、ひとつめ。

2012/1/31 作成
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