『ツナ、明日夜桜見物にでも行かない?』
『夜桜ですか?』
『そう。花見をしようかと思って』
『でも、酔客とかいそうだよね』

 夜なんて酔っ払いが沢山いそうだし、キョウちゃんが絡まれたら嫌だな。

『あぁ、大丈夫。ちゃんと人払いしておくから』
『それならいいか』
『じゃ、明日、行く時に連絡するね』
『うん、また明日』

 夜寝る前にそんなメールを交わした。
 翌日、あんなことが起こるとは思わずに……




 は〜、何でオレが花見の場所取りに行くことに……

 別にオレは花見がしたいわけでも何でもないのに……いや、むしろ、キョウちゃんと行く予定だから、花見はしなくていい。
 そんなことを思いながら獄寺くんと山本と一緒に公園へと向かった。

「おー、ラッキー」
「これで殺されなくてすんだ〜」
「一番乗りだ!」

 公園に誰もいないことにホッとしていると、後ろから声がした。

「ここは立入禁止だ。この桜並木一帯の花見場所は全て占領済みだ。出てけ」

 そう言っている不良の姿を眼にして一瞬違和感を感じる。
 ん? どこかで見たような……
 獄寺くんが蹴り倒したその後に聞こえてきた声に確信した。

「何やら騒がしいと思えば君たちか」

 って、キョウちゃん? ……あ、これ風紀だよ。見たことある……
 ……ということは、キョウちゃん、ここで花見しようと思って場所取りしてた?


「見てのとおり僕は人の上に立つのが苦手のようでね。屍の上に立っている方が落ち着くよ」

 その発言に獄寺くんと山本はゾッとしている。
 オレはと言えば、キョウちゃんらしいな〜としか思えない。
 小さい頃も似たようなことを言っていたし、物騒だなと感じる程度。
 それでも後であまり堂々と宣言しないように言っておかないと……
 そんな決意を抱いた。


「っか〜〜〜、やだね――、男ばっかっ!」

 いたらヤダな、と思っていた酔っ払いが現れた。

「おめーら、かわいこちゃん、つれてこい!」

 そんな言葉を言い、酒を呷っているシャマルに言いたいのは、女なんだけど、キョウちゃん……ということだ。
 まぁ、気付いていないなら、あのセクハラは発動しないだろうから、オレとしては嬉しいけど!

「へー、おめーが暴れん坊主か。お前、姉ちゃんいる?」

 あ、やっぱり気付いてないや。
 よかったよかった。

 ……え? 今トンファーでシャマルが飛ばされたって?
 そんなのどうでもいいよ。キョウちゃんさえ無事なら。


 って、獄寺くん……この前あんなに言ったのに、ダイナマイト投げたね。
 後でビアンキけしかけとこう。
 あ〜、仕込み鉤出たよ……
 これで、山本も終わり……って、アレ? そうしたら、次、オレ!?

 とかのんびり考えてる内に死ぬ気弾を撃たれ、死ぬ気で倒す! とキョウちゃんへと向かった。
 とりあえず膝さえつかせればいいなら、怪我させなくても大丈夫だと考えてたらから倒そうとしていた。

「ふぅん、やっぱり強いね」

 嬉しそうに言っているキョウちゃんに、もしかして逆効果? と感じる。
 そういえば、まだちゃんと戦ってないって何度か言われたっけ……
 いや、戦うなんてしたら、キョウちゃんを怪我させちゃうかもしれないから、絶対やらないけどね!


 死ぬ気が終わった後、シャマルのトライデントモスキートによってサクラクラ病にかかったキョウちゃんはフラフラと帰っていこうとしている。

「リボーン、場所取りは終わったみたいだし、オレ予定が入ってるから、これで!」
「10代目!? どちらへ!?」
「獄寺くんは来ちゃダメ。皆は花見楽しんで!」

 そう言って走っていく。
 後ろから、ビアンキを直視してしまった獄寺くんの倒れる音とかしているが、そんなの知ったこっちゃない。
 むしろ、後でまたけしかけないといけない、と算段をしながらキョウちゃんを追いかける。

「良かった、追いついた。大丈夫、キョウちゃん」
「……綱吉?」

 振り返ろうとして、クラッとして倒れ掛かってきた。

「とりあえず、桜から離れないと……」
「……ごめんね、今日の約束破っちゃうね」
「そんなのどうでもいいよ。キョウちゃんの方が大事!」

 力が抜けているキョウちゃんを運びながら言う。

「後でシャマルにはちゃんと治療するように言うから」
「あれも綱吉の知り合い?」
「いや、あれはリボーンの知り合いの医者。女しか診ないやぶ医者」
「女しか?」
「そう。例外が多少あるだけで、女好きでとんでもないセクハラとかする医者」

 だから、絶対近付かないようにね。

「わかった。けれど、気付かなかったの? 医者なのに……」
「そうだよね。ヤブだから仕方ないんじゃないかな?」

 男性と女性では骨格からして違い、見る人が見れば、男性か女性かは一目瞭然ならしい。
 歩き方なども違うが、歩き方などはキョウちゃんの場合、男性の歩き方を普段はしているから問題ないにしても……

「そう」
「にしても、こんなに長い間動けなくなるなんて危なすぎる!」

 もう! 後でシャマルには男子更衣室にでも強制放置することにしてやる。
 キョウちゃんの調子が戻るまで、キョウちゃんの家にずっと居たのだった。


* * * * *


「シャマル?」

 保健室にシャマルを訪ねていった。

「何だ? ボンゴレ坊主」
「少しお願いがありまして……」
「何だ? 女の子が待ってるから早くしろよ」

 また女子に声をかけるために保健室を空ける所だったのか。

「サクラクラ病の治療薬を下さい」
「ん? 何でだ? あの暴れん坊主のことならお前が気にするようなことじゃないだろ」
「オレにとっては重要なことなんで」
「それにオレは男は診ない主義だって言っただろ。あいつに姉さんでもいて紹介してくれるっつーなら別だけどな」
「キョウちゃんは一人っ子ですよ」

 シャマルはオレが言ったキョウちゃんという呼び方に顔を歪めている。

「あ〜? あいつが『ちゃん』付けするようなタイプかよ。つーか、ボンゴレ坊主」
「何ですか?」
「あいつと仲が良かったのか? そんなことリボーンの奴は言ってなかったと思ったが……」
「あぁ、前に見たじゃないですか。よくトンファーで殴られてるって」
「ドクロ病の時な……って、トンファー?」

 ようやくトンファーとキョウちゃんが繋がったらしい。

「って、ちょっと待て! お前、あの暴れん坊主と?」
「つまりはそういうことだね」
「……相手は可愛い女の子でも無く、アレか? よくやるな……」

 お前の眼を疑う、なんて額に手を当て首を振っているシャマルにムカッとする。

「失礼ですね。キョウちゃんは美人だし可愛いじゃないですか」
「……びじん…………」
「というわけで、薬下さい」
「……でもな、オレは男は診な――」
「あれ? 言い忘れたっけ。キョウちゃんは女ですよ」

 シャマルの言葉を遮って言うことにする。
 多分、言わないと治療薬くれないと思ったから、言うつもりだったし……

「は?」
「一応、隠してるらしいので誰にも言わないで欲しいですけど、そうなんで」
「…………」

 どうにかして理解しようとして沈黙している。

「だから、サクラクラ病の治療薬!」
「……どこにいるんだ?」

 直接トライデントモスキートを使うから案内しろ、と言うシャマルを仕方なく連れて行くことにする。



「あれ? キョウちゃん」

 保健室からそう離れていない廊下に佇んでいたキョウちゃんを発見した。

「……綱吉」
「もしかして心配でも?」
「そんなんじゃないから! ……それで?」
「治療してくれるって」

 そう言ってシャマルを振り返れば、用意をしている。
 蚊がキョウちゃんを刺した直後だろうか、シャマルが動いた。

「お前が女って本当なのか?」

 そう言って手を伸ばそうとしているのを見て、その腕を掴んだ。

「キョウちゃんに手を出そうとなんてしたら……」

 視線だけで詳しくは言わない。
 一応は視線だけで言いたいことは理解したようだ。

「あぁ、綱吉。もうちょっと抑えててよ」

 そう言っているキョウちゃんはトンファーを構えている。

「うん、気をつけてね」
「ちょっ、ボンゴレ坊主! 何言ってるんだよ……止めろよ」
「これを機にセクハラ行為は止めるといいと思うんだ」

 トライデントモスキートを使えないように腕を掴んだまま、キョウちゃんが殴りつけるのを見守るのだった。







ようやく書けたサクラクラ病の話。
シャマルが咬み殺されました。
でも、仕方ないですよね、シャマルですもん!

いや、それより問題はツナ一人称で進めたら、何やら真っ黒なんですけど、この人・・・

2008/1/7 作成
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