「何が風紀よ! 貴方がしてるのは暴力で抑えつけているだけだわ!」

 なんて怖いもの知らずな少女だろう。
 並盛の秩序であるヒバリへとそんな口を利くのだから。

 少女の名前は
 つい先日この並盛中へと編入してきたばかりの中学二年生。
 クラスは2A。ボンゴレ10代目ボスである沢田綱吉のクラスメイトである。

「第一、何で不良に注意をされなきゃいけないのよ! 今時リーゼントなんて時代遅れもいい所じゃない!」

 世の中をバカにしてるわ!!
 そう一息に言い切った少女は、あまりに怒りすぎたためか、息が切れている。
 ゼハゼハいって、肩が上下している。

 その言葉を何処吹く風とばかりに聞き流していた相手が口を開いた。

「そんな口を僕に対してきくような度胸を持つ女子がいたなんてね・・・咬み殺されたいわけ?」
「なっ、何でも咬み殺すと脅せば済むなんて思わないで!!」
「……ふ〜ん」

 少女の全身を観察して、一つ頷く。

「本来なら、男子と同じように咬み殺すけど……うん、気に入った」
「……は?」
「君、風紀委員に入りなよ」
「……えぇ!?」

 理解しがたくて、何を言っているのか、と一瞬固まってから驚きの声を上げた。

「何がどうしてそうなるの!?」
「腕章受け取りに来て」

 そう言って、応接室へと向かおうとする恭弥だが、数歩歩いても相手が全く動かないことに気付く。
 クルッと振り返り、スタスタと戻ってきて少女の腕を掴む。

「……ちょっと! 痛い!」

 苦情を言う少女を無視して、自分のスピードで歩いて引っ張っていく。
 少女が悲鳴を上げているが、それも心地良い音楽だとでも言うように聞き流して恭弥はスタスタと歩く。


 そんな様子をただ周りは見守っているだけであった。


 この出来事は全て人通りが多い廊下で行われていた。
 たまたま恭弥が校内を巡回中に咬み殺した時だったのだ。
 その少女は風紀委員に威圧され、それにムカついたために、そのトップであるヒバリへと冒頭の文句を口にしたわけだ。




「……ど、どうしよう…………」

 少女が落ち着いたのは、応接室のソファに座ってからだった。
 応接室のソファに座り、書類を用意している恭弥を眼にしつつ、呟いた。

「何か困ったことでも?」
「あるわよ! 転入してきてまだそんなに経ってないのに、この並盛で怖れられている風紀委員なんかに入ったら、私の生活に支障が出るじゃない!」
「買い物も安くできるし、町の案内とかなら、風紀委員をつけるけど……?」
「私はリーゼントを周りに置く趣味は無い!」
「バカだね。普通の髪型も何人かいるよ」
「……え? いたの?」
「前に出ようとしない奴らだから、知らなくても仕方ないか」

 腕章を出して渡す。

「……受け取れません」
「なんで?」
「私は弱いです」
「普通の男子なら倒せる程度と見たけど?」
「そんな……ムリです」
「でも、何か武術はやってたでしょ?」
「…………」

 何で知られているのか分からないが、やっていたことは事実なために口を噤む。

「それでも不安なら修行でもすればいい」
「…………」
「何か武器を用意する? 刀でも棍でも……トンファーだって用意するけど、どうする?」
「――ナックル、とか?」
「あぁ、拳闘なんだ。ちょっとかかるけど、用意しておくから」

 もう風紀に入らざるをえなくなってしまった。

「それと、制服か……サイズは?」
「…………」
「…………」

 サイズを男性に堂々と言いたくない乙女心の発露でしょうか。
 無言で目線を逸らしている。

「…………」
「……わかった。後でここに行って僕の名前を出して作ってくること」

 仕方ない、と恭弥は制服を作っている店の住所と電話番号を書いたメモを手渡す。

「ありがとうございます」
「女子はセーラーだから。それと、必要だったら学ランも用意していいから」
「はい。……お金はどうするんですか?」
「後で委員費から支払うから、気にしなくていいよ」
「わかりました」

 一礼して下がろうとする。

「ちょっと待って」
「……え?」
「書類整理はできる?」
「……多分人並みには」
「なら、明日は登校したらこっちに来ること」
「……わかりました。失礼します」

 今度こそ応接室を後にした。



* * * * *



 翌日からセーラー服で登校すれば、凄い注視された。
 それもそうだろう。
 風紀委員に女子は居ない。
 皆が皆、学ランなのだから……

 こうやって注視されたり、誰一人として声をかけてくれないなんて……昨日の私のバカバカッ!
 分かってたはずでしょ、雲雀さんが並盛の秩序だって。
 しっかりと原作に書かれてたんだから……
 ……けれど、やっちゃったのは私よね。
 いくら怒りに我を忘れていたとはいえ、よりによって友達もあまり出来てないこの時期にやっちゃうなんて……あぁ、失敗した。


「おはよう、さん」
「……え? あ、おはよう、笹川さん」
「おはよう、京子ちゃん、さん」
「お、おはよう。沢田君」

 そんな中、気にせずに声をかけてくれたのは、笹川京子ちゃんと沢田綱吉くん。

「テメー、そのセーラー服は何だ」
「……風紀委員だよ」
「えぇぇ!? さん、風紀なの?」
「……昨日からね」

「……珍しい、キョウちゃんが女の子を傍に置くなんて…………」

「え? 何か言った?」
「ううん。何でもないよ」

 聞き取れなかったが、沢田君が何かを言っているのを耳にした。

「風紀の仕事あるの?」
「うん、これから行ってくる」
「そうなんだ。頑張ってね」
「ありがとう」

 誰も声をかけてこない中、話しかけてくれた上、応援までしてくれた笹川さんに感謝!
 そして、応接室へと向かった。



「待ってたよ」
「すみません」
「早速だけど、この書類をパソコンに打ち込んでくれる?」
「はい」

 山を一つ受け取って、テーブルに置いてあったノートパソコンに向かう。
 カタカタと打ち込んでいると、チャイムが鳴った。

「……委員長、授業は?」
「僕はそんなの出てないよ。は出たければ行っていいよ」
「……この書類はいつまでにやればいいんですか?」
「今日中に打ち込んでくれると助かるけど」
「……わかりました。今日は一日ここで打ち込ませて頂きます」

 量を確認して、これは一日がかりになるだろうと判断する。

「そう」

 頷いて、委員長は書類に判子を押したりしている。

「失礼します、委員長」
「報告?」
「はい、本日の遅刻者の……委員長、彼女は?」
「昨日、風紀に入った
です。よろしくお願いします」
「そうか。副委員長の草壁だ」

 そう挨拶をして、その後は書類に集中することにした。



、もう昼休みだけど?」
「え? あ、もうそんな時間ですか……」
「今くらいは教室に戻った方が良いんじゃない? 友達とかいるんでしょ?」
「あ、はい……そうさせてもらいます」

 カバンを持って応接室を後にする。
 教室への道を歩いていると、沢田君とすれ違った。
 お互いに一礼だけして、別れた。


 昼食は笹川さんと黒川さんと終えて、昼休みの終わりに応接室へと戻ろうとする。

「あれ〜? ツナ、いねーのか?」
「ツナくんなら、昼休みになると同時にどっか急いで行ったよね」
「そうね。あんたら置いてかれたの?」
「そ、そんなわけないだろ! 10代目は考えがあって……」

 あれ? 沢田君なら、応接室から出てこっちに来る途中ですれ違わなかったっけ?
 どこに行ったのかは知らないけれど。

「みんなして集まって、どうしたの?」
「ツナくん!」
「ツナ」
「10代目! どちらに行かれてたのですか!?」
「え?」
「沢田、あんたが居ないからって、獄寺と山本が探してたみたいよ」
「え? そうだったの? ごめん」

 ペコッと頭を下げて謝っている。

「あ、謝らないで下さい! でも、どちらへ?」
「あぁ、うん……ちょっと、ね」

 曖昧に語尾を濁らせ、何処へ行っていたのか、沢田君は答えることが無かった。

 どこに行ってたんだろう?
 そんな問いは心にしまい、応接室で書類の打ち込みに集中するのだった。



* * * * *



「キョウちゃん」

 昼休みが始まって間もなく、応接室に綱吉は現れた。

「綱吉、いらっしゃい」
「ずっとが居たの?」
「うん。書類の打ち込みしてもらっていたからね」
「そっか。でも、キョウちゃんが近くに女子を置くのって珍しいよね」
「そうだっけ? ……あぁ、そうだね」

 短時間に今までを思い返してそう答える。

のこと気に入ったんだ」
「面白いよね、あの子」
「そうなんだ。教室じゃ大人しい方だからな〜……」
「僕に対して結構ズバズバ言うけど?」
「へ〜、今度話してみるかな」
「うん、それもいいかもね」

 お昼ご飯を食べながら二人は話していた。
 恭弥は綱吉を食事に呼ぶためだけにを応接室から追い出したのだ。
 本人が気付いていないから、追い出した、というと語弊があるだろうが……

「キョウちゃん、今日は仕事忙しい?」
「今日は町に行く予定だけど……」
「それ、オレも行ったりしても大丈夫?」
「別に構わないけど……」
「じゃ、放課後、携帯で連絡するね」
「うん、わかった」

 二人は放課後デートの約束をして、昼休みも終わるから、と綱吉は教室へと戻っていった。







ナックルって・・・返り血とか浴びそうですよね。
今読み返してて、そう思いました(笑)
にしても、ツナレベルの突っ込みですよね・・・
あぁ、そっか。キョウちゃんが現実に居たら突っ込み所満載過ぎるからかw
でも、キョウちゃんの親友になりますから、近くで見守れます(笑)

2007/12/28 作成




そういえば、書けなかったネタ。


 数日後にも綱吉と恭弥は町中を歩いていた。
 あまり目立たないように、なのか、路地裏などを歩いていると、群れを見つけた恭弥が嬉々として咬み殺しに行った。

「キョウちゃん、危ない!」

 綱吉が後ろから来ていた敵から恭弥を庇った。
 その綱吉が素手であることから、恭弥はポケットからナックルを取り出した。

「綱吉、これ使ったら?」
「これ……ナックル?」
「うん。に用意したんだけど、渡すの忘れてた」
「そっか」

 綱吉はそのナックルをはめて、恭弥を護るのだった。


・・・というネタがあった。
つまり、さんのナックルは綱吉のお下がり!
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