「ツナ君お願い!」

 学校中のアイドルである笹川京子から手を合わせてお願いされ、頭を下げられて断れるだろうか?
 否。
 この場で断ったら、後でクラスメイトから小突かれたりする程度で済むわけがない。

「…………分かった。やればいいんだろ、やれば」

 もう自棄になっていた。
 そのオレの言葉を聞いて、クラスの女子たちが歓喜の声を上げている。
 男子たちもホッとしたような、嬉しそうな声を上げている。

 …………オレの女装の何がそんなに嬉しいんだ、お前ら。



「10代目、本当によろしかったのですか?」

 何でしたら、オレがこれからクラスの奴らを脅してでも……

「そんなことしなくていいから」
「ツナ、きっと似合うだろうな〜」
「……山本」

 オレに対する嫌味なのか?
 いや、山本は純粋にそう思っているらしい。
 眼に悪意の欠片すらない……

「……山本、それ、あまり嬉しくない」
「そっか?」

 満面の笑みで、オレの言葉は有耶無耶にされてしまった。





「ツナ君、似合う〜v」
「アンタ、性別間違えて生まれてきたんじゃない?」

 京子ちゃんと黒川に着替え終わったオレを見て言われる。

「間違ってないから!」

 というか、もし女子に生まれてたら、キョウちゃんと付き合えないし、それは嫌だ。

「にしても、似合うわね〜、これ、どうしたの?」
「えっとね、メイド喫茶の衣装をアレンジしたの。一応、ツナ君に合うサイズで一から作ったんだよ」
「だから、スカートの中にパンツ穿いてるのね……」
「きっと抵抗あると思ったから、デザイン変えちゃったの」
「それで良かったんじゃない?」
「そうかな?」

 そうだね。オレもこんな短いスカート穿けとか言われたら怒ってただろうな……
 中にレギンスって言われたかな? 何かパンツみたいのを穿いてなかったら逃げてたよ……
 メイド喫茶の衣装が元だからだろう。
 エプロンドレスのようなフリフリのエプロンを着た自分の姿が姿見には映っていた。
 こんな服着たら、キョウちゃん可愛いんだろうな〜……
 どんな服でも似合うだろうキョウちゃんが着ているのを思い浮かべたら少し幸せな気分になった。
 自分が着ていることを忘れようとそんなことを考えていると。


「何やってるの?」

 ガラリ、と開いた教室のドアから現れたのはキョウちゃん。
 風紀委員長の仕事なのだろうか?
 そんなわざわざクラスを回るようなこと言っていなかったのに……

「もう始まるんだけど……それに、その格好は何? チアリーダーでもやるの?」
「……いえ…………」

 いや、きっとクラスメイトたちはそのつもりだったと思うけど!
 体育祭の応援にこれを着てくれ、って言ってたからね……
 第一ウィッグを付けるのに同じ布で作ったカチューシャ付けられてるから髪の毛長いし、一見女子に見えるよな、これ。

 って、キョウちゃんにだけは見られたくなかったな……(遠い眼)

「まぁ、いいや。おいで」
「へ?」
「そんな格好で校内歩かれちゃ、風紀が乱れるよ」
「えぇぇぇぇ!?」

 問答無用で腕を掴まれ、引き摺られるようにして歩いていく。
 助けを求めるように視線をクラスメイトたちにやると、全員が視線を逸らしている。
 ヒバリさんには逆らえない、ってこと?
 こんな格好にさせたのお前ら全員だろうが!

 後で覚えていろよ…………

 そう怒りを覚えつつ、どうせキョウちゃんに連れて行かれるのは応接室だろうと、普通に歩いて付いていくことにした。
 目撃者がいたら、後で殴ってでも記憶を飛ばしてやる! と決意しつつ。




 誰にも見られることなく、応接室に着いた。
 きっともう皆、体育祭のために校舎内から出て行ったのだろう。
 キョウちゃんがふいに強く腕を引き、応接室のいつものソファーにとさっと押し倒された。

「ちょ、キョウちゃん。何!?」

 しゅるり、と首元のリボンが解かれた。

「君、女の子だったっけ?」

 そう言って、ボタンをプツプツと外していく。

「ちょ、何剥いてるんですか! 何度も見たことあるでしょうが!!」

 ちゃくちゃくを脱がされていく洋服をかき合わせるようにキョウちゃんの手を拒む。

「だって、似合いすぎだよ」

 むぅ、と少し膨れているキョウちゃんは可愛い。
 可愛いがしかし、それが脱がしていいことには繋がらない。

「……これ、何入れてるの?」

 再び脱がし始めるキョウちゃんを止めることはもう無理だった……







女装ツナが書いてみたかった。

2008/3/29 作成
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