商店街の中を歩く二人の男性。
パッと見、そう見えるだろう、二人の姿。
その内の一人は間違いなく自分の彼女である。
例えどこで見かけたとしても見間違えることがあるわけがない。
大好きな、大切な、彼女。
学ランを身に纏った恭弥を見つめる綱吉は、いつものように巡回でもしているのだろうかと思う。
今日は獄寺と山本と一緒に帰宅し、遊びに出てきていた所だったために、恭弥と一緒にいれた時間は短かった。
歩き疲れたから、と喫茶店へと入り、コーヒーをそれぞれに頼み、口へと運んでいた。
「美味しいですね、10代目!」
「そうだね」
この味ならば恭弥の口にも合うだろう、と綱吉は今度ここに来ようと決めながらカップに口を付ける。
「ツナ、コーヒー飲めたんだな」
「これくらいは飲めるよ〜」
いくらなんでも、そこまでお子様じゃありません!
「そうかぁ? オレにはまだ無理だぜ」
そう言いながら山本はミルクをどばどばと投入していた。
「てめっ! コーヒーの味が損なわれるだろ!」
「仕方ねーだろ、苦くて飲めないんだから」
そんな言い合いをしている獄寺と山本を笑って止める。
いつものような行動をしていた時。
ふと外の景色を見ようと目を動かした時に目に入ったのだ。
恭弥の姿が。
あれは、誰?
隣にいる男子の姿に首を傾げる。
服装と髪からすれば、風紀委員ではない。
そうなると、何で一緒にいるんだろう?
咬み殺すための何かだと言うなら今頃トンファーが突きつけられてないとおかしいし……
と、いつまでも見ていたら、恭弥が笑った。
それも、自分といる時のような、可愛くも綺麗な、あの笑み。
――ピシリッ!
綱吉の手の中で、陶器が悲鳴を上げた。
楽しく歓談中であったはずのその空間が、一瞬にして変化した。
「じゅじゅっ、じゅっ10だ……」
「何? 獄寺君」
止めてよね。
「黒曜センターで会った鳥使いのおっさんみたいな鳴き声上げるの」
気持ち悪いよ。
そう笑顔で告げる綱吉からは黒いオーラが漏れていた。
「何やってんだ、ダメツナ」
「うるさいよ、リボーン」
ってか、今までここにいなかったよな? なんでいんの?
「ここのコーヒーが気に入りでな」
エスプレッソを手に持ったまま綱吉たちの席へと移動してくる。
「ふぅん」
オレには関係無いや、とばかりに一瞥するだけで手元のコーヒーを飲み干す。
コーヒーカップが壊れる前に飲み乾すと、ソーサーに置いた瞬間に皹が広がっている。
このカップはもう再起不能だ。
「そんなに怒るようなことでもあったのか?」
ニヤリと楽しげに笑うリボーンに綱吉が視線を向ければ、リボーンの唇がヒバリのことか? という風に動く。
音として発せられてはいなかったものの、確実に言われたように感じた綱吉はリボーンを睨んだ。
先程見てしまった恭弥が笑いかけたあの姿を思い出し、隣に立つ男へと怒りと嫉妬が混ざった感情が迸る。
「嫉妬か?」
ククッと笑うリボーンに黒いオーラが辺りを捩れるように渦巻くようであり、その異常な空気に獄寺は意識を半ば失い、山本も困ったように二人を見つめていた。
チャリ、とテーブルの上に自身の飲食代を置いたその手で席を立つ。
一瞬だけリボーンを睨みつけると、綱吉はそのまま喫茶店を出て行った。
「……つ、ツナ怖かったのな…」
いなくなって空気が少し戻ったのと同時に山本が息をつく。
それに対してリボーンが独り言のように呟く。
「あぁ、驚いたな」
「ん? どういうことだ?」
「気付いていなかったのか? あいつ今小言弾を撃ったわけでもないのに同じような状態になっていたんだぞ」
「こごとだん?」
「あぁ、知らなかったか。戦闘モードのようなもんだぞ」
「あー、そう言われれば、確かに攻撃的だったよな」
さっきの空気、とはははと山本は笑った。
少し回復した山本が獄寺を家まで送ると連れ帰り、リボーンは帰宅した。
夕食後も綱吉の機嫌が変わらず淀んだ雰囲気に、流石のランボでさえ大人しい。
奈々の話しかけにこそ、多少は反応を返すが、それ以外の全てに大して、綱吉は興味も無いのか一瞥する程度で言葉も返すことが無い。
「いい加減にしろ、ダメツナ!」
あまりにもそんな態度を続ける綱吉に、リボーンは自室に帰ってすぐに言った。
「うるさいよ、リボーン」
ふぅ、と溜息を吐きながら言う綱吉に、そんな態度を取っていいと思っているのか? と言いたくなるが、そんなことを今言っても聞かないだろう。
「んなに気になるならとっととヒバリの家に行くなり電話なりすればいいだろうが!」
いつも知らない内に行ってるだろうが、お前。
「うぜぇんだよ! このダメツナが」
声を上げたので水分が飲みたくなり、食後に奈々が淹れてくれたエスプレッソを持って上がってきていたので、それへと手を伸ばす。
「!!」
口に含んだ瞬間、いつもとは違う味に動きが止まる。
何だ? この味……
「あぁ、気付いた? ちょっと八つ当たりさせてもらった」
何度もうるさいから、さっきちょっとエスプレッソマシンに細工をね。
「何を……」
「どうせすぐ直るでしょ、それくらい」
それじゃ、おやすみ。
そう言って、綱吉は不貞寝するように布団へと潜り込んだ。
「何をする!」
銃が火を吹くが、軽く避けた綱吉の額には炎が揺らめいていたようだ。
「……ちっ」
今やっても意味が無いと理解したリボーンは、エスプレッソを淹れ直すために階下へと降りていった。
『今日は来ないの?』
昼過ぎ、綱吉が朝から一度も現れなかったことに、恭弥からメールが綱吉に届いた。
昨日のことがあったから、少し避けていた綱吉は、行くしかないか、と覚悟を決めた。
もし、心変わりだったとしたら、などと杞憂なことを考えてしまっていたため、会いに行く覚悟を決められなかったためにこの時間にまでなってしまったのだ。
そんな簡単に心変わりするような恭弥では無いと知っているけれど、不安に襲われるのは仕方ないことだろう。
「オレちょっと出てくるね」
「ツナ? もうすぐ授業始まるぜ?」
「あー、もし帰ってこなかったら、早退したって言っていいよ」
それだけ伝えて、鞄等はそのままに教室を後にする。
ざわつく廊下を歩き、静かな廊下へと辿り着く。
いつもながら静かな特別棟を重い足を引きずるように歩き、応接室へと辿り着く。
コンコン。
「キョウちゃん?」
少し寂しげな表情をした綱吉に、恭弥はどうしたのか、と焦る。
「ツナ? どうしたの?」
「ううん、何でもないよ」
軽く首を振り、中へと入る。
そして、いつもの定位置であるソファへと向かえば、納得いかない恭弥が隣へと座る。
「ねぇ、どうしたの?」
「………キョウちゃん…昨日……」
「昨日? …あ、そうだ」
ちょっと待って。
そう言って机へと向かう。
その姿を茫洋とした眼で見続け、戻ってくる恭弥の手に持たれた袋を視界に収める。
「何かがあったわけじゃないけど、これ綱吉にプレゼントね」
「……はい?」
何で、何の記念日でもない今日に渡されるのか全くわからずただ見返してしまう。
手元と行き来する視線に、恭弥はクスリと笑い、答えた。
「こないだツナにいいんじゃないかと唯が教えてくれてね」
昨日案内してもらって買ってきたんだ。
「ゆい?」
「そうだけど、どうかした?」
「……唯さん、男物着てた?」
「あー、何か危ないからそうするって言ってたけど、それがどうかした?」
「いや……な、何でもないよ」
えっと、つまりは、昨日見たあの男は唯さんだった、と。
そして、あの笑みは唯さんに向けてたんなら、あってもおかしくないか……
そりゃあ、どこか嫌な気持ちもあるけど。
「ツナのこと話してたら、色々からかわれたりしたけどね」
クスクスと困ったようであり、嬉しそうでもある笑みを浮かべて恭弥は言った。
「こ、これ、ありがとう! キョウちゃん」
「どういたしまして」
赤くなった頬で綱吉がお礼を口にし、プレゼントを大切そうに抱きしめた。
「………うぜぇ」
「…何? リボーン」
自宅に帰ってきてから、受け取ったプレゼントの中身を見つめながらニコニコ笑っている綱吉が、いつまでもそうしていることにリボーンが綱吉を睨み付けた。
「結局、勘違いでした、だぁ?」
オレが受けたあの嫌がらせの責任はどう取るつもりだ?
ギリギリと言いそうなくらいに怒っているリボーンの声をサラリと聞き流し。
「いつもオレの邪魔をしているリボーンが悪いんでしょ」
普段の行いの結果。
「自業自得ってやつでしょ」
そう言い切る綱吉に、今日も今日とて、リボーンの銃が火を吹くのだった。
遅くなりました!
一ヶ月近く経ってしまいましたが、リクエスト頂いた小説ようやく完成いたしました。
こんな感じでよろしかったでしょうか?
唯は現代の●でリンクされている話のオリキャラ(もともとは夢小説の主人公)です。
結局彼女にしちゃいました。
よろしければ、お受け取りくださいませー!またの訪問お待ちしておりますv
2009/6/25 作成
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