「あ、キョウちゃん」

 校内を移動中、たまたま見かけた恭弥の姿に綱吉は足を止めた。
 様子からすると、風紀委員たちを怒っているような・・・

「どうしたの? キョウちゃん」

 躊躇は一瞬。
 教室で獄寺と山本が待っているが、あっさりと二人を待たせることにする。

「つなよし・・・・・何でも無いよ」

 ふいっ、と顔を背けて、さっさと応接室へと一人向かってしまう。


 ・・・・・これは、ちょっと彼らに聞くべき、かな?
 にこり、と頬に笑みを浮かべ、風紀委員たちを見る。

「ねぇ、何があったのかな?」

 オレに教えてくれるよね?
 まさか、教えないとか・・・言わないよね?
 にこにこ笑っている綱吉に、背筋を冷や汗が伝う。

「い、いえ・・・何でも・・・」
「無いわけ無いよね?」
「・・・・・」

 怖い! 怖すぎる!!
 委員長も怖いが、沢田さんも怖すぎる!




 委員長と二人きりで行動することが多い沢田さんは、一人の時は委員長曰くの『草食動物』にしか見えない。
 特に一般生徒たちと行動を共にしている時の沢田さんは草食動物だろう。
 しかし、委員長と二人で巡回中の沢田さんは草食動物の皮を被った肉食動物だ。
 一度、委員長を護る彼を見たことがある。
 普段の様子が嘘のように、戦っていた。
 委員長も、安心して背中を任せているようだった・・・




「本当に、何があったの?」

 少し凄みが減った。
 落ち着いてくれたんだろうか・・・否、それは違うだろう。

「また並盛で何か事件?」
「いえ・・・」

 委員長のためならば、怒りを抑えられるということだ。
 口篭るしか無いが、もし本当のことを言ったら委員長に咬み殺される運命だろう。

「はっきり答えてくれる?」

 まさか、誤魔化そうだなんて思っていないよね?
 凄みが先程と同様に戻り、自分自身の身体は硬直する。
 こんな時の沢田さんに逆らえるわけが無い。

「い、委員長の・・・落し物が」
「落し物!? キョウちゃん、何か失くしたの!?」
「いえ、それを落とした瞬間に拾った関係で、少し話していただけです」

 嘘ではない、嘘では。
 確かに拾ってそれをすぐに渡したのだ。
 その渡したことに対して、このことを口にしたら咬み殺す、と脅されていただけだ。

「ふぅん、それならいいけど・・・」

 大したこと無かったんだ、それならいい。

「けど、その落し物って、何?」
「そ、それは・・・」
「俺たちの口からは何とも・・・・・」

 言える訳が無いです!

「わかった。後でキョウちゃん自身に聞くよ」

 あっさりと開放され、その足で応接室へと向かう沢田さんをただ見送った。




「・・・・・ごめんなさい、委員長」
「俺たちにはあそこまでしか誤魔化せませんでした」

 風紀委員の影の委員長とも言われる沢田さんを誤魔化すなんて、とても無理。

「・・・けど、委員長。可愛いことするんだな」
「あー、まぁ、確かに・・・」

 気に入っている沢田さんの寝姿の写真を生徒手帳に挟んでいるなんて、な。



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