「十代目!!」

 自分を見つけて嬉しそうに駆け寄ってくる銀髪の少女。

「・・・おはよ・・・・・」

 とりあえず、着崩したその制服はいつものことだから何も言わないが、90度の角度でお辞儀をしたら見えるから。
 言っても変な反応しか返ってこないから言わないけど。
 ふぅ、と溜息を吐いていれば、ポンッと肩を叩かれた。

「はよ、ツナ」
「おはよう、山本・・・」

 元気良く現れた親友に挨拶をする。
 よく男女の間に友情は無いと言うが、山本とに関しては別だ。
 山本のサバサバした性格と、スポーツに打ち込んでいることから、彼女は恋愛に対して興味が無いのだろう。
 ただし、学校でも人気者(純粋なマドンナである京子とは違い、男女問わずに)である山本と一緒にいる機会が増えれば増える程、凄い眼で見られることもあるが。


「今日も元気か、沢田〜!」

 校門近くに立ち止まっていれば、通学してきた笹川姉妹が声をかけてきた。
 了平はいつものようにサラシを巻いているようだ。
 部活では紅一点(そうは見えないが)でやっていれば、それくらいしても当たり前なのかもしれない。

「おはようございます、お姉さん」

 今日は朝練無かったんですか?

「京子ちゃんと一緒に登校してるなんて」
「今日はお休みだー! 沢田、これから極限スパークリングに行くか?」
「これから授業ですから行きません!」
「そうか、残念だな」

 きっぱりと言い切る綱吉に残念そうな了平は、諦めて学校へと眼を向ける。

「おはよう、ツナ君。お姉ちゃんがいつもごめんね」
「お、おはよ、京子ちゃん」

 謝ってくるマドンナ的存在に、はにかんで挨拶を返す。




「なんであいつの周りにばっか美少女が集まるんだよ」
「本当にな〜・・・」

 少し離れた場所から一団を見つめて会話を交わす少年たち。

「代われよな・・・」

 あんな美少女に囲まれるなんて羨ましい・・・

「・・・お前、勇者だな。オレはいくら美少女が沢山だろうと、絶対嫌だぞ」
「そうか?」
「・・・お前、忘れてないか?」

 ヒバリさんのこと。




「君たち、何群れてるの?」

 よく切れる刃物のような響きの声が空間を裂いた。
 振り返れば恭弥の姿。
 風紀委員の証であるセーラー服を翻し、トンファーを構えている。

「ひっ、雲雀さん!?」

 お、おはようございます。

「おはよう。群れるな、っていつも言ってるよね?」

 呼び方が気に食わないのか、一瞬眉根が寄っている。

「は、はい・・・ごめんなさい」

 素直に謝り、頭を下げた綱吉の頬に手を滑らせ、顔を寄せた。

 ――ちゅ。

 頬に唇を落として、周りに聞こえるような音を立てる。

「てめっ! 十代目に何しやがる」
「何ってキス?」

 それがどうかした? とばかりにどうでも良さそうに獄寺を振り返る。

「衆目の面前でキスなんてしないで下さいよ!」

 口じゃなかっただけマシだけど、と思いながら綱吉は声を上げる。

「抜け駆けなのな〜、ヒバリ」
「テメー!!!」

 ははっ、と笑いながら咎めるような視線を向ける山本と、ダイナマイトを取り出して火をつけようとする獄寺。

「わわわっ! ダイナマイトは止めて〜、獄寺君〜」

 止めようと綱吉は慌ててダイナマイトへと手を伸ばす。




「・・・・・いつものことながら、すげぇ騒ぎだな」

 遠い風景をただ見つめる。
 ドカーンッとダイナマイトの爆発音や、何かを振ったような音、殴ったような鈍い音までしている。
 わ〜! と慌てたような綱吉の声を聞きながら、しみじみ言う。

「あんなんに好んで巻き込まれたいだなんて、本気でお前は勇者だな」
「・・・悪かった、オレには無理だ。さっきのは無かったことにしてくれ」

 言われた言葉が脳内に回る。
 あのど真ん中にいて、自分は無事でいられるのか?
 ――否。あれは沢田だから無事なのだろう。

「だよな〜」

 いや〜、さっきは何を言い出すのかと思ったぜ、と安心したように言うのだった。




 安全地帯へと避難し終えた綱吉はぼやいた。

「なんであんなに物騒なんだよ、全員」

 ドカーンッドカーンッ言ってる場所からは嬉々として戦っている恭弥が見える。
 その戦いが楽しそうだと参戦している了平に、いつから持ってたのか分からない山本のバットを手に戦っている山本・・・・・
 とてつもなく危険地帯である。

「女に負けてるようじゃ、まだまだだぞ、ダメツナ」

 綱吉の背中に蹴りと共に降りてきたリボーンに綱吉は溜息を吐きながら振り返った。

「リボーン・・・無茶言うなよ」

 そうやって眼に入れたリボーンは黒いレースに彩られたドレスを身に纏っている。
 帽子には黒いレースがあしらわれ、レオンには白いレースのリボンが付けられている。
 いつも思うが、よく赤ん坊サイズのこんなドレスがあるものだ。

「据え膳食わぬは男の恥、だぞ?」
「だから、無茶言うなってば!」

 ってか、どこが据え膳なんだよ、あれらの!

「せっかくオレが厳選してやったと言うのに・・・」

 厳選してお前の嫁候補も兼ねて選んだ守護者たちだと言うのに・・・全く手も出しやしないなんてな。

「そこまでダメダメだとは思わなかったぞ」
「そういう問題じゃないし!」

 手を出すとか、つ、付き合ってる人がいてどうしてできるんだよ!
 ってか、お前の差し金か? こないだ獄寺君が布団に入ってきたのは!!


「では、僕で手を打っておきますか? ツナ君」
「・・・はぁ、骸。どっから現れてるんだよ? 手を打つも何も、なぁ?」

 お前はオレを乗っ取ろうとしてるんじゃなかったか?

「じゃなかったとしても、お前は無理」

 きっぱりと言い切る。
 黒曜中の制服に身を包んだ少女。

「くふふ、幼馴染にその言葉は酷いですね〜・・・」

 こんなんでも綱吉の幼馴染なのである。
 奈々は骸のことを『むーちゃん』と呼んでいるくらいであり、正真正銘幼馴染である。

「あと、乗っ取る云々ですが、時間をかけるのも一興でしょう」

 ボンゴレの子供を作って、そこからってのもありでしょう。

「って! 楽しそうだから、って参戦すんなー!!」

 お前、別にオレと付き合いたいとか、オレの子供が欲しいとか全然思ってないくせに!!

「くふふふふ・・・」

 まぁ、それはそうなんですが・・・
 むしろ子供ならツナ君とキョウちゃんの子供が見たいですね〜。
 でも、あぁまで楽しそうなのですから、ねぇ?

「キョウちゃんがあそこまで楽しそうにしていると、僕の血も騒ぎます」
「そんな物騒な血はどっかで全部捨てて来い!」

 オレやキョウちゃんに関わらない場所でな!

「とりあえず、あちらに混ざってきますね〜♪」

 とても楽しげに、暴れまわっている一団の中へと入っていく。


「――って! リボーンも何してるのさ!?」
「・・・面白そうだから、な」

 オレも参戦することにするぞ。

「抱き上げろ」
「嫌だよ! とりあえず、降りろって」

 座り込んでいた綱吉の体に乗り上げ、よじ登っている。

「スカートの中、見えるから〜!」

 いくら赤ん坊とはいえ、スカートの中身が見えるのはかなりの問題だろう。

「だったら抱き上げろってんだ、ダメツナが」

 とりあえず、仕方なく抱き上げ騒動の中心へと戻る。
 少しの間の休憩しか取れなかったが、それでも少しは心持ちが違うだろう。




 楽しげに武器を交わす数名の中の山本にリボーンを押し付ける。
 いつも山本に乗って移動したりしているのだから、渡しても問題ないだろうと判断して渡す。

 槍とトンファーがぶつかる音がしている。
 とても楽しそうに戦っている幼馴染たちは、もう最初の理由を忘れてしまっているだろう。

「骸!」
「あぁ、もう今日はお開きですね」
「・・・逃げる気!?」

 綱吉が自分ではなく骸を呼んだ、と怒りがトンファーの勢いに加わる。

「逃げるのでは無く・・・また次回にしましょう?」

 そろそろ行かないと僕も遅刻しますし。

「では、アリヴェデルチ」

 霧に紛れて消える骸がいた場所をトンファーが通り過ぎる。

「・・・もう完璧遅刻な時間だと思うんだけど」

 ブツブツと言ってしまうのは、校門の中だとはいえ、すでに本鈴が鳴った後だからである。

「綱吉、おいで」
「あ、うん、わかった。山本、獄寺君のこと頼むね」
「あ〜・・・気をつけてな!」

 倒れている獄寺に一瞬眼をやり、山本は頷いた。
 リボーンは山本から離れ、綱吉に付いていこうとするが、綱吉には睨まれ、トンファーが飛んできたために立ち止まった。




「キョウちゃん、怪我は無い?」

 応接室に移動し、ソファに落ち着いた綱吉は、心配そうに恭弥を見つめる。

「全く無いよ」

 それより、群れすぎだよ、綱吉。

「いつも言ってるでしょ? あの二人から距離を取れって」
「普通に友達だよ」

 そこまで心配しなくても大丈夫だから。
 そんなに近くないはずなんだけどな、と首を傾げる。

「向こうは違うでしょ?」

 あれでも女なんだし、一応警戒してよね。

「そんなことないよー」

 大丈夫、大丈夫。

「それに、オレはキョウちゃん一筋だもん」
「あ、ありがと・・・」

 僕も綱吉だけ、と照れた恭弥は頬を染め、綱吉に抱き付いた。






守護者全員女体化してツナが皆に好かれていればいいよ、みたいなことを言った夏コミで会った方の言葉から。
私が書くとキョウちゃん番外編にしかならないので、没ネタにしておきましたw


おまけで書いたんだけど、話に上手く紛れ込ませられなかった話を少し・・・



  了お姉さんと京子ちゃん。


「もう! お姉ちゃんったら!」

 またこんなにボタン開けたままで!!

「ダメだよ? ちゃんとリボンしなきゃ」

 胸元までパックリと開いたカットシャツのボタンを留めていく。
 ボタンが開いているが胸が見えることはない。
 了平はサラシを巻いているため、開けていても包帯状の物しか見えないのだ。
 胸がぺたんこになるように押さえつけているサラシを隠すようにボタンを留めていく。
 そして、自身の姉が家に忘れてっいた胸元のリボンを鞄から取り出す。
 きゅ、と首元で縛り、これでよし、と京子は微笑む。

「お姉ちゃん、部活まではちゃんとこのままでいてね?」
「分かってるぞー」
「お願いね? じゃ、私は教室こっちだから」

 微笑んで、姉と別れを告げて自分の教室へと向かった。

2008/11/6 回収
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