「ヒバリ?」

 応接室で書類を片付けていた恭弥に声をかけてくる小さな影。
 誰なのかを一瞬で判断した恭弥は、歓迎こそしないものの、気にしないことにした。

「赤ん坊かい。何の用?」
「お前、ダメツナのことをどう思っている?」
「あの・・・沢田綱吉のことかい?」

 普通の雲雀であれば、ここは草食動物のことかい? と言うだろう。
 しかし、相手はあの沢田綱吉だ。
 恭弥からしてみれば、自分より何でもできると自覚している相手のことを草食動物とは言えないだろう。
 だから、フルネームで言っておく。

「そうだ。お前はどう思ってるんだ?」

 草食動物? 興味深い相手?
 ちゃんと認識していることだけは名前を覚えていたことからわかるが、リボーンは恭弥の反応を見逃してなるものか、と集中している。

「そうだね・・・・・気になる相手だと思ってるよ」

 そう誤魔化すように言う。
 恭弥からしてみれば、綱吉と同じく人間として判断している数少ない相手――お互いを恋人としているのもあり、気にかけないことは無い。

「興味深い・・・・・あいつはお前のお眼鏡にかなってるってわけか」
「おめがねって・・・妙な単語を持ってくるね、赤ん坊」

 沢田綱吉は、ね。

「僕の知る限り、一番凄いと思うよ」

 どういう意味で、かは言わないが。

「そうか・・・それなら、あいつの守護者にヒバリはなってくれるか?」
「守護者、ね・・・」

 その打診がしたくてここに現れたのか、この赤ん坊は、と理解した。
 けれど。

「守護者なんていう甘ったるい言葉で示されるような関係にはならないだろうね」

 守護者、なんて暖かい関係になどなるわけが無い。

「僕は彼の共犯者、だから」

 それ以上に言うことは無い、と話は終わったとばかりに席を立つ。
 邪魔だから、さっさと帰ってね。
 それだけを言って恭弥は巡回のために学ランを羽織って応接室を出て行くのだった。



「・・・共犯? あいつとヒバリにどういった関係があるんだ?」

 何一つわからない家庭教師という役割が全うできていないリボーンは呟いた。




「――ということがあったから」

 背中から綱吉に抱き締められた状態の恭弥は淡々と話していた。

「キョウちゃんをあの騒ぎには巻き込めないよ」

 わずらわしいだけだからね。

「それはそうだね。でも、並盛町で騒ぎを起こされている時点で僕は巻き込まれているよ」
「・・・・・やっぱり骸に頼むか」
「それもいいかもね」

 居候たちの暗殺を依頼するべきか、思い悩んでしまう。

「・・・ところで、ツナ。こんな場所に引きずり込むのは止めて欲しいんだけど」

 そうも言いたくなるだろう。
 巡回中だった恭弥を脇道から引っ張り廃屋に連れてきたのだから。

「ちょっとアルコバレーノの監視が厳しくてね」

 いつも通りの撒き方じゃ撒けなかったんだよ。

「そのせいでキョウちゃんにもゆっくり会えやしない」

 気配も無く引きずり込んだ綱吉に、最初こそ殺気だったがすぐに綱吉だと気付いて殺気を収めた。


「まぁ、僕に会うためだったのなら許す」
「許してもらえて良かったよ」

 ホッとしたように笑う。




「極限! 極限!」

 走りながら叫ぶ声が響く。
 その声にビクリッと反応する綱吉。
 どちらからその声が聞こえるのか確認し、脳内で逃走経路を検討する。

「・・・・・」

 そっと逃げようとした綱吉の腕を掴んだ。

「・・・あれがどうかしたの?」

 何、逃げようとしてるのさ、と恭弥は尋ねる。

「知ってるでしょ、キョウちゃん」
「あぁ、まぁ、あれでも並中生だからね」
「なら、言わなくてもわかるでしょ?」

 どんな状況なのかだって、彼のこと知ってれば分かることでしょ?

「うん? 何があって追われてるの?」
「追われ・・・? いや、追われてるわけじゃ・・・」
「じゃ、何で逃げようとしたの?」
「・・・・・追われていました」

 あっさりと認めた。

「うん、あっさりと認めたのはいいけど、何があったのさ」
「・・・なんか、眼を付けられたんだよ」
「何したの?」

 それとも、何か見られたの?
 恭弥に聞かれ、その時のことを思い出した。



 学校の中でも死角になる建物と建物の影の場所。

「ぐはっ」

 カツアゲされていることに、いつものこととはいえ、面倒だなぁと思っていた綱吉は、辺りに人の気配が無かったから、と蹴りを入れた。
 不良の腹部に綱吉の足が吸い込まれた直後、蹴られた不良は1m程離れた木まで飛ばされる。

「てめぇ!!」

 周りを固めていた残りの不良たちが激昂する。

「ダメツナのくせに生意気だ!」

 いやいや、ダメツナのくせに、って言いがかりだよね? あ、なんかそんなような題名のゲームをこの前やったな・・・勇者だったけど。
 手に武器を取り出す不良たちに、一つ溜息を吐くと、拳を振るった。
 数秒後、立っているのは綱吉だけになっていた。

「弱いくせに群れるな、だよねぇ・・・」

 恭弥の口癖を口にしながら、その場を離れようかと振り返った瞬間、気付いた。


 なんでこんな所にいるんだ、今は部活の時間帯なはずだろう!?
 クラスメイトの兄の出現に驚いた。

「極限なパンチだったぞ! 沢田ツナ!!」

 ちっ、名前知られてた・・・

「は? な、何を言って・・・オレが何をしたって・・・」

 おどおどした様子を作って困ったように笑う。
 基本的にここまで熱い人って苦手なんだよなぁ・・・

「そのパンチにはボクシング界の未来がかかってる!」

 ボクシング部に入れ!! と続ける了平に、うざいとしか思えない。

「大げさな・・・あ、オレ用事ありますから」
「待て!!」

 パタパタと逃げ去る綱吉を追いかけて走ってくる了平に焦って足を速めたのだった。



 そんな出来事を思い出して溜息を深く吐いてしまう。

「・・・・・この前、カツアゲしようとしてきた奴らを排除したのを見られちゃった?」

 可愛らしく首を傾げる綱吉に、自分のビジュアルを分かっていて利用する強かさを感じる。
 それを僕に使おうってこと自体が間違ってるけど、と思いながら恭弥は顔色一つ変えずに話の続きを促す。

「それは、気になるだろうね」
「ボクシング部に入れー! って」
「まぁ、そう言ってくるだろうね、あれなら」

 風紀委員長だから強いんだろう、と僕にも言ってきていたし。
 勿論、邪魔だと咬み殺したけど、それすらも嬉しそうにされてどうしようかと思ったなぁ・・・

「まぁ、それで逃げてたからこんな場所にいたんだよ」

 アルコバレーノだけだったらもうちょっと違う場所にいたよ。

「あぁ、なるほど。それでこんな場所に引きずり込んだんだ」
「・・・・・うん」

 だって、キョウちゃんを見かけたんだし、キョウちゃんと一緒にいれないのは嫌だから。
 それにしても困ったな、といったように苦笑する。

「あの、空気を読まなさがどうしても受け入れられないよ・・・」
「まぁ、頑張って逃げなよ」
「うん、そうするよ」

 逃げるために、恭弥の腕を引き、その場を離れる。

「ちょ、僕は逃げる必要ないって」
「いいじゃん、一人は寂しいし、この後キョウちゃんち行くから」
「・・・・・仕方ないな」

 誰からも発見されないように二人は手を繋いだまま並盛町を駆けた。




「あの極限野郎も骸、どうにかしてくれないかなぁ?」
「・・・・・流石にあれは無理があるんじゃない?」
「・・・だよね」

 流石に一般人は殺してもらうわけにもいかないしねぇ・・・
 はぁ、と大きく溜息を吐いた綱吉と恭弥の元へ、骸が本当に居候たちを片付けましょうか? と現れるまで、後十分。






やっぱり骸でオチを付けたいらしい紗奈でした☆
それでも前回よりはマシでしょう(笑)

2009/3/14 更新


下はおまけというか、何と言うか・・・



「ツナ君、大丈夫ですか?」

 疲れきった様子の綱吉を心配そうに見つめる。
 綱吉の周りで騒ぎを起こし続ける居候たちに骸から見ても苛立ちや怒りしかない。

「やっぱりあの居候たち、殺した方が心身のためにもいい気がしますね」

 ツナ君がこんなに疲れるような奴らなんて、この世に存在する価値が無いですよね!

「・・・殺すのはいいけど、その後でごたごたになるなら、意味無いよ」

 殺したのが綱吉の依頼であることや、綱吉がそこまでの力を得ていることを知られて、その後にこれまで以上の迷惑がかかるのならば、全く意味が無い。

「・・・そうですね」

 毒蠍と駄犬ならば事故に見せかけることは可能でしょうが、アルコバレーノとまでなると・・・

「流石にアルコバレーノを誰にも知られずに処理するのは難しいですよね」
「だとしたら、やるわけにもいかないよね」

 はぁ、とどうしようもないと話す。

「オレが我慢しきれる限りはこのままでいいよ」

 それが無理だと思ったら、オレが動くだろうし・・・

「その前に僕が綱吉の限界だと動くはずだよ」
「その時は僕にも声をかけて下さいね、二人共」
「あぁ、わかってるよ」
「当たり前でしょ。君がいるといないとじゃ全然違うもの」

 なんだかんだと骸も仲間として認識されていることに、骸は嬉しそうに頷くのだった。
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