渡伊して半年ほど。
 高卒で渡伊しようとした時、恭弥は「イタリア? 何で僕が行かなきゃいけないのさ」と言って日本に残った。
 一応、雲の守護者を降りるとまでは言わなかったが・・・

 ガチャ。

 ボスである綱吉の部屋で恭弥以外の守護者たち全員が集まっていた。
 その部屋の扉が急に開いた。

「あ、雲雀さん・・・」

 半年ほど、誰一人として見ていなかった恭弥が姿を現した。
 スタスタと綱吉に向かい一直線に歩く。

「あげる」

 腕に持っていた赤子を綱吉の前のデスクの上に置いた。

「――ヒバリ! テメー、どっから連れてきやがった!?」
「・・・・・天、から?」

 などと茶化すように上を指差す。

「名前は?」
「男の子はまだ。女の子はルナ。好きにつけなよ」
「ルナですね・・・リューヤ、あたりが良いですかね」
「いいんじゃない」

 背負っていた女の子の赤ん坊を下ろして、隣へと置いた。

「リボーン、再来年あたりからかてきょーお願いすると思う」
「・・・は?」
「11代目候補の」

 その綱吉の言葉にようやく何かを思い出す。

「・・・・・あぁ、そういうことか」

 綱吉と恭弥を見て一つ頷く。

「ど、どういうことですか!? 10代目!!」
「ゔ〜ん・・・雲雀さん、この二人の出生届は?」
「まだに決まってるでしょ。生後五日なんだから、その子たち」
「・・・・・」

 あまりの言葉に沈黙。

「・・・無理矢理出てきました?」
「さぁね」

「さぁね、じゃない! 座れ! いや横になれ! 寝ろ!!」

 急に怒鳴りだす上司の姿に守護者たちは呆然としている。
 そんな中、ソファに座らせようと、恭弥の腕を引き、そのまま横にさせる。

「顔色悪いですよ。誰か咬み殺してきたでしょう?」
「そんなことしてないよ」
「嘘ですね。眼を逸らしてたら誰にでも分かりますよ」

 二人の世界になってしまっていることにリボーンが溜息を吐いている。

「出生届ってどうやって出すんだっけ・・・」
「どこの籍に入れるつもりだ」
「オレの籍に入れるよ。第一、婚い・・・って、結婚!!」
「本気でダメツナだな。まだ未成年だぞ、お前」
「こんな世界に関わってたら気にしてられないよ、そんなこと」

 どうするかなー・・・と少し考えた綱吉は、電話へと手を伸ばす。



「・・・もしもし、母さん? 久しぶり。うん、元気してた?」

 国際電話を母親にかける。

「双子の子供が生まれてさ・・・誰の? って、オレの」
『ツー君の!?』
「・・・母さん、声でかい。それでさ、役所へ届出た・・・」
『相手のお嬢さんは誰!?』
「オレの幼馴染、覚えてる?」
『キョーちゃん!? いつの間に再会したの!!?』
「・・・再会って・・・隣の家に住んでたんだから、会わないわけないから」
『そ! ・・・れはそうだったわね』
「そう・・・それで、準備お願いしていい? ・・・うん、よろしく」

 ガチャン、と音を立てて電話が置かれた。

「・・・ツナ、幼馴染なんていたのか?」
「一応ね。小学校に行ってるはずの6年、外国連れ回されてたから再会とかいう言葉になってるわけだけど・・・」
「・・・それでイタリア語を覚えるのが少し早かったのか」
「日常会話くらいはね。こっちにも一時期いたから」
「・・・お前、幼馴染・・・か・・・・・」
「何だよ、リボーン。言いたいことがあるならはっきり言えよ」
「意外な接点だと思っただけだぞ」
「そう?」

 と、急に恭弥が立ち上がり、トンファーを取り出す。

「――イライラする」
「ちょっ! 何しようとしてるんですか!」
「勝手に話進めないでくれる!?」

 そのトンファーは綱吉に突きつけられた。

「何考えてるの!?」
「子供のことですが?」
「・・・もういい。君に任せるから、好きにしなよ」

 溜息を一つ吐き、トンファーをしまい、代わりにいくつかの物を取り出す。
 受け取り、チラッと中身を見て、驚く。

「これ・・・・・」
「後は任せる。休みたいんだけど、どこ使えばいい?」
「この二人を連れて、オレの私室――隣にあるんで、そちらへどうぞ」

 頷き、赤子を両手に持ってスタスタと歩き去る。
 さっき渡された物をもう一度見る。

「なぁ、ツナ。それって母子手帳・・・だよな?」
「あの双子のね」
「なんで四冊・・・」

 双子の物であると言うならば、何故二冊では無いのか?
 けれど、その質問を無視して、綱吉はリボーンに話しかけた。

「リボーンも見る? ちょっと流石すぎるとしか言えないけど・・・」
「予想はつくけどな・・・・・やっぱりな」

 渡されて、確認したかった部分だけを見て頷く。

「・・・眼を疑うと思うし、見たら頭も痛くなるだろうし、パニックになるんじゃないかと思うけど・・・・・」

 見る? と綱吉は悪戯好きな子供の顔で笑うのだった。




「・・・う・・・・・そだろ・・・」

 口からポロリと煙草が落ちる。

「え? ・・・これ、本当なのか?」

 何でも天然で受け入れてしまってた山本が今回ばかりは受け入れられずに呆然としている。

「本気でおっしゃっているのですよね、ボンゴレ?」
「真実だよ」
「・・・マジですか」
「マジもマジだよ。・・・つーか、お前にマジって言葉似合わないな、骸」
「うるさいですね。しかも、そんなあっさり言われましても・・・」

 骸ですら戸惑っている。

「・・・・・って! 本気で本当に・・・ヒバリが女なんですか!?」
「うん。そうだ、これが二冊ずつある理由をこれから聞きたいから電話するけど・・・一緒に聞く?」
「それは?」
「さっき渡された中にあった、並盛中央病院の院長直通の電話番号」
「主治医なんだと思うけど・・・どうする?」

 少し悩んでいたが、頷いた獄寺たちに、スピーカー通話で話すことにした。


 TRRRR・・・
 ガチャ。

『もしもし、ヒバリさんですか!?』
「・・・これ、専用番号なの?」
『えぇと、何方ですか?』
「あぁ、すみません。オレは雲雀さんの幼馴染で沢田綱吉と言いますが・・・」
『・・・あぁ、貴方ですか。今ヒバリさんはお近くに?』
「隣の部屋で寝てると思いますが・・・」
『ご無事なら良いのです。脱走されたものですから』
「だと思いました」
『恭さんが見つかったって本当ですか!!』

 バンッという音と共にそんな叫びが聞こえた。

「草壁さん・・・(苦笑)」
『沢田? やはり・・・ということは、恭さんは今イタリアに?』
「その通りですよ」
『イタリア!? 今外国ですか? ヒバリさん!』
「そういうことになりますね」
『・・・一応、医者に見てもらっていいですか? 流石に無茶をしたようですから・・・』
「そうします」

 今近くにシャマルいたっけ・・・と考えながら頷く。

「それで、何で母子手帳が二冊ずつあるのか聞きたかったんですけど・・・いつ妊娠判明したんですか?」
『あれは今からだいたい半年前だったはずです――――』

 院長の話が始まる。



* * * * * *




 突然病院を訪れたヒバリさんに高級茶を出し、持て成していた。

「ねぇ、院長。僕の性別わかってるよね?」
「突然ですね・・・はい、これでもヒバリさんを取り上げたのは私ですから」
「うん。それでね・・・雲雀恭弥だとバレないように産婦人科への受診って可能?」
「え?」
「多分ね、妊娠してると思うんだ」
「ほ、本当ですか!?」
「妊娠検査薬が間違ってなければね。それで・・・できるかな?」
「・・・堕胎ですか?」
「多分、それムリになってると思うよ」

 まぁ、多分早産扱いなら何とかなる時期だけど・・・

「は?」
「確実に妊娠中期に入ってるから」
「・・・じゃあ」
「産むよ」

 きっぱりと答える。

「そうですか・・・。・・・子供はどうするつもりで?」
「育てるしかないでしょ?」
「どこかに預けるとか・・・」
「あぁ、そういう意味。自分で育てるよ」
「それを相手の方は知ってるのですか?」
「言ってないよ」
「・・・ご両親には?」
「最近ずっと会ってないからね」
「・・・お一人で育てるのですか?」
「ちゃんと相手には手伝わせるよ」
「・・・・・ちゃんと話しておいて下さいね。早速検査しますから・・・」
「担当医は?」
「私がさせていただきます。今隣の部屋に機材を運ばせますのでお待ち下さい」

 デスクの電話を手に取り、機材の準備を命じる。

「・・・これからは男装が難しくなるよね」
「そうですね。そろそろ腹部が目立つようになるでしょう」
「確かにね。・・・出産時までには女性の戸籍と名前持ってくるから、そっちで出産したことにして」
「・・・それではヒバリさんの戸籍に入れることはできませんよ」
「・・・・・両方作れる?」
「えぇ、その方が良いでしょう」
「よろしく」

 実際に検査を行ってみると、22週に入った所という結果に、院長は溜息を吐いた。

「・・・よく今まで通りの生活ができましたね」
「つわりのこと?」
「それもありますが、いつも通りに咬み殺していたでしょう? 流れなかったのが不思議です」
「僕の子がそこまで軟なわけ無いでしょ」
「えぇ、そうですね・・・」

 何も言えなくなってしまったとのことである。



* * * * * *




「それ、いつのことですか?」
『3月の・・・確か卒業式翌日と言っていたと思います』
「はぁ。だから、イタリアに行けない、か・・・」
『お子様たちも元気にしていますか?』
「それこそ彼女の子供ってことでしょう。大人しく寝てましたけど、元気そうでした」
『それなら良いですが、お子様たちも医者に見せて下さいね』
「はい」

 そう話して、院長との電話は終わった。
 後ろで草壁が恭さんを迎えに行きます! と言っていたから、その内来るだろう。


「・・・パスポートとか無いよな? どうやって連れ込んだんだろう?」

 確かに。二人もどうやって・・・

「ヒバリのことだ。カバンにでも入れて機内に運んだんだろ」
「いや、お金で済ませたか、咬み殺して済ましたか、のどちらかだろうね」
「・・・よくそんな奴だと思ってて付き合ってんな、ツナ」
「気にすんなよ、リボーン! オレだって何度か自問自答したさ! けど、好きなんだからいいだろ」
「・・・あぁ、そうだな」

 どうでも良い、と話を切り上げたリボーンだった。







キョウちゃんの本編とは違う世界ですよ。
だって、骸幼馴染だったら、女だって知ってるもん。
というか、未来編1は知ってるって書いてある。
ので、これはパラレル仕様。
女の格好しちゃう世界での話、ってことで。

2008/1/15 作成
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