三周目を謳歌し始めた綱吉と恭弥が、家継という二周目の綱吉を10代目にすることにした頃。
そんな時に起こりえたかもしれない世界のお話……
これはあくまでも、本来の流れではない……
とは言っても、実際に彼らが出てくる機会は無いので、裏話かもしれない。
「助けて下さい」
そう言ってボンゴレ本部へと駆け込んできた少年たち。
ストリートチルドレンか、と追い払おうとした彼へ、彼らは痛々しくも引き攣れている傷痕を示した。
人体実験の跡……
それに慌てた彼は上の者を呼びに走った。
少年に隠れるように佇む少女の痛々しい眼の回りをぐるりと囲む縫い跡が一番目立つ、と心を痛めながら――
詳しい話を聞きたいから、と屋敷の奥へと通される。
途中、武器が無いか身体検査をするために、と部屋に寄った。
「女の子だから、こっちでお姉さんとでいいかな?」
仕切られたついたての陰で服を全部脱いで、代わりのワンピースが渡された。
手術着のような、実験体用の衣服は痛々しさを助長するしか無いものだったので、ありがたく。
実験体の精神を追い詰めるように白い部屋に白い衣服であったから、綺麗な青色に少女はうっすらと笑みを浮かべる。
気に入ったのだろう様子に着せてあげた女性も釣られて笑う。
ついたてから出れば、少年たちも色のある服を与えられており、少女を見て笑った。
「似合っている」
そう言った少年と、それを肯定するかのようにコクコクと頷く少年に少女が淡くはにかむ。
恥ずかしいのか、少年の後ろに回るように隠れてしまう。
「こちらへ」
広い部屋に通され、その向こうにはいかにもボディーガードといった男が数名と、物静かな居住まいの男とがいた。
畏縮しているかのように立ちすくむ少年たちを案内してきた人は一礼して扉を閉めた。
――少女が沈黙の中スタスタとソファへと腰掛けた。
「さて、どこから話しましょうか」
そちらも色々聞きたいことがあるでしょう?
そう口を開いた少女は、少年たちの後ろで怯えていた少女と同一人物とは思えない程であった。
「君は?」
「私は骸。この瞳、六道眼を人体実験で無理矢理植え付けられた者」
後ろの二人は違う実験に使われた者たち。
「エストラーネオだとか言うファミリーのための暗殺人形として仕立て上げられていました」
淡々と言う骸の言葉に相手が目を見開く。
「脱走してきた私たちの身の保護をお願いしたい」
スッと下げた頭だけが目に入る。
反応を返さない彼らに、骸は地面に手を付いて再び頭を下げる。
どう見ても10歳にも満たない少女がここまですること、それ自体が異常。
一番上の人間だろう男が頭を上げるように言う。
ソファに戻った骸に彼は口を開いた。
「何故ここに?」
警察に駆け込めば、と言いたいようだが、それでは意味が無い。
「あのままあそこを野放しにされては困ります」
自分たちの身だけならそれで助かるが、人体実験をし続けられては困る。
「ここなら、麻薬も人体実験も見逃しませんでしょう?」
そうではありませんか?
「ボンゴレノーノ」
骸が知っていたことに相手は驚く。
実験体なだけならば、知る由も無いことを知る骸が暗殺に来たのか、と反応をする後ろに立つ男。
「門外顧問の沢田家光さんまでいるとは思いませんでしたけど、好都合でもありますね」
ボンゴレの力で潰して頂けると助かります。
骸は銃に手をやっている家光をただ見遣る。
「なんで知っている……」
「少々情報を。どこに駆け込むか決めるために」
そう言うなら自分の安全のためなのだろうと理解はできるが……
「そんなことができると知って放置できないな」
「情報屋としてでも契約して頂ければ」
消されたりは遠慮したいです、と言いながら笑う。
しばらくはボンゴレの監視の元、保護されることとなった。
「あぁ、もう」
助けを求めて利用したのはこちらだけれど、何だこの状態。
「骸、リボン曲がってる」
「……ありがとうございます」
そっと直してくれた彼に感謝を述べるも、やはり違和感だけが付き纏う。
「気にすんじゃねーぞぉ」
照れ隠しに言うスクアーロを見ながら、何で保護者に彼が? と今まで何度もした疑問を再び繰り返す。
本当に何なんですか、もう。
ボンゴレに助けを求めたのは間違いだったかもしれない、と些細なことながら思ってしまった。
エストラーネオは無事に壊滅しました。
これで一安心です――って、問題残りすぎだけれども。
「骸、九代目から骸に、って」
「何ですか? ――返せませんか?」
「オレは構わないが、九代目が嘆くだろうな」
「ですよね……」
何で気に入られてるのでしょう?
孫娘か何かのように可愛がられている。
お小遣はこんなに沢山いりませんよ!
「情報でも出してやればいいんじゃねぇかぁ?」
簡単にスクアーロは言うが、こんな金額に見合う情報なんて無いですよ。
「……スクアーロ、日本に旅行でも行きませんか?」
覚えてないけれど、自分は日本人なはずだから、と骸は言う。
実際には日本人の血も入ってはいる、程度だが、日本人らしい名前を名乗っているのだから良いだろう。
「ジャッポーネ?」
「スクアーロもその内忙しくて旅行なんて出来なくなるでしょうし、その前に」
そう言って一緒に行こうと言ってみれば、スクアーロは頷く。
骸の目的はただ一つであり、日本に拠点を置きたいくらいだと言うことは微塵も見せない。
妹のような立場の骸と旅行自体が嬉しかったスクアーロは、休暇を取り、骸と二人でイタリアを飛び立った。
「――さて、スクアーロは行きたい場所はありますか?」
「いや、特には……名所の一カ所でも見れれば」
「では、ついてきて下さい」
骸が行きたい場所に行くのだ、と言うことにあっさり付いていく。
直接並盛へと降り立った骸はスタスタと歩く。
「ナミモリ? この町に何かあるのか?」
ただついてくるスクアーロはただ疑問だけを持つ。
「後での楽しみですよ」
クフフと笑って小さな公園に足を踏み入れた。
「スクアーロ、少し待っていて頂けますか?」
ちょっと準備が……
「ぁ、あぁ、いいぞ」
パタパタと駆けてゆく骸を見送って、公園のベンチに座って待つことにした。
「お待たせしました」
骸が帰ってきたか、と出迎えようとしたスクアーロは目を瞬かせた。
「骸、なんでこの人がいるの?」
今会うとは思いもしなかったスクアーロの姿に不思議そうに尋ねてしまう。
「今現在の保護者みたいなものです」
さっき言ったでしょう? ボンゴレに渡りを付けた、って。
「何故かとても気に入られまして、彼――スクアーロに預けられたんですよ」
「へぇぇ……はじめまして?」
ペコッと綱吉が頭を下げれば、ようやく頭が働き始めたスクアーロが口を開いた。
「あ〜……骸とどういう関係だ?」
こんな子供なのに彼氏ご紹介、じゃないよな〜?
もしそうだったら九代目にどう言ったら……?
「友達ってことで」
あまり深く気にしないでよ。
切り捨てた綱吉を、スクアーロは困ったように見返す。
「どうやって知り合ったんだよ……」
ボンゴレに保護された段階で、イタリアから一度も出たこと無いと調べが付いているのに。
「あぁ、ネットですよ」
これでも情報扱っているの、知っているでしょう?
そう言う骸の発言は、そう考えれば納得できるが、しかし……
「わざわざ会おうとするまでするなんて……」
しかも、遠い日本にまで来ることを考えれば言いたくもなるだろう。
「それだけ有益な相手だと考えられないんですか?」
クスクスと骸が笑うのを見て、それならわかるが……と首を捻る。
「何がどう有益なんだ?」
不思議そうなスクアーロに綱吉が笑う。
「自己紹介するのが一番早いかな?」
クスクスと笑いながら言う。
恭弥と骸まで笑っているのを見て、眉間に皺が寄る。
「沢田綱吉です。父のことは知ってますよね?」
門外顧問、沢田家光の息子と言われれば、確かに有益かもしれないが……
「マフィアのことは家族に秘密にしているって……」
「あぁ、そうだけど、あれの言うこと鵜呑みにしてるの母さんだけだよ」
オレも弟も全く信じてないから。
「でも、オレはボンゴレと関わり合いたくないから、秘密ね」
唇に指を当て、ナイショ、と言っておいた。
そんな出会いから早いもので五年近くが経った。
付いていたザンザスは凍り付けのまま、代役としてのヴァリアーボスとしての仕事と、骸の世話と、と忙しい生活をしていた。
「スックー、スックアーロォ!」
パタパタとスカートの裾を翻し近付いてきた骸に、書類から視線を上げた。
「どうした?」
「日本に行ってきます!」
「また、か?」
あまりにも多い回数に九代目の不信を買いそうになっているのに?
「僕にとって大事なのはツナ君とキョウちゃんだけですから」
そろそろ何かが起こりそうでもあるから、行くのだ。
「スクアーロはどうします?」
「あ〜、最近は電話くらいだったし、久しぶりに会いたいが……」
この仕事の量では無理だ。
動きが取れないようにわざとしているのでは無いか?
そんな邪推が浮かんでしまう。
「なんかきな臭いから気をつけろよ?」
ついでに二人にも伝えておいてくれ。
「はーい。じゃ、行ってきます」
わざとらしく手を挙げて返事をして骸は部屋を出ていった。
「いつからあいつらの兄みたいな立場になったんだろうな〜?」
出会いをたまたま思い返していたスクアーロは嵐のように去っていった骸の背中を見送ったまま呟いた。
ザンザスしか見ていなくて暴走しかねないスクアーロに重しを付けようと抜擢した九代目の思い通り。
手の平の上にいるかのような心地に、スクアーロは嫌な気分になったものだ。
しかし、骸に、いや三人に振り回され続けて良かったと今では思う。
「ま、ちょっかいでも出して存分に三人に振り回されろ」
いい気味だ、と九代目に笑うスクアーロは、短いとも言えるが濃密な時間であった五年程で、しっかり三人に影響されまくっていた。
「しかし、これはどうしたもんかな〜?」
綱吉の弟の家継と楽しげに遊んでいる骸の写メに、その内結婚すんのかなー? と寂しさを表情に載せていた。
実際は、骸が家継『で』遊んでいたのだが、そんな細かい内容までは写真には写らなかったようだ。
しかし、その寂しさが現実になる日が来るとは、まだ当人たちも知らない。
多分書き下ろし部分もこれ保存されてたようです。
だ、大丈夫ですよね?
洋服屋へと、骸はスクアーロと共に来ていた。
骸がどうしても欲しい服があるのだ、と言うため、それならばとスクアーロが付いてきたのだ。
そうして骸が手に取ったのはボーイッシュな――というよりはメンズの洋服であった。
サイズを確認して鏡に当てて映しているのを見てスクアーロは疑問を感じた。
「何で男物を買おうとしてるんだ?」
「あぁ、えっと、ですねぇ……日本にはオタク文化という独特の文化がありまして」
何て言おうかとしばし悩んでいた骸は言うことを決めた。
「それがどうしたんだぁあ?」
「つまりロリコンが多いのです」
言い切った内容はどこかおかしい。
実際にそんなにロリコンがいるわけでは無いだろうが、そういう趣味の人がいてもおかしくないだけの素地はある。
「なんだとぉお!? オイ、んな危険な所にお前を行かせられるかぁああ!!」
日本に今後も行きたいと言っていて、そのために購入に来たと言っていた骸に、そんな危険な場所に一人で行くことを許可できるか! とスクアーロは叫んだ。
「大丈夫ですよ、男装すればいいのです」
第一、僕はそんなに弱くありませんから。
そう説得し続け、何度か一緒に日本に行っている内に骸なら大丈夫だろうと理解したため、単独渡日を許可したのだった。
その何度か日本に行った時に綱吉たちに振り回され、それに慣れたのもあるだろう。
何度も綱吉と恭弥とは会っていたものの、家継とは一度として会うことは無く時間は過ぎ去り。
「う゛おぉぉぉおい! オレの妹に手ェだしたら承知しねぇぞおぉぉおお!!!」
そう、スクアーロが叫んだのは、リング戦の時のことだった。
『えぇえええ!?(シスツナ心の叫び)』
何でオレが骸なんかに手を出さないといけないわけ!? とぐるぐると眼を回していた家継に骸はその背中を叩きながら爆笑していた。
「そういうつもりは無いんだな?」
「はい! ってか、そんな怖いこと言わないで!」
骸に手を出したり、付き合ったりなんかしてない! ということを弁明した家継に、スクアーロは一応の納得をしたらしい。
「そうか、悪かったな」
いきなり怒鳴って悪かった、と謝る姿は先程のう゛ぉぉぉい! なんていう叫びとは真逆に位置するような大人な姿。
「ぇっと……性格変わっていません?」
「あぁ−、あの三人に振り回されていたら、な」
「あぁ」
なるほど、と納得してしまった家継が、スクアーロに前世から感じていた苦労人仲間の空気を感じ取って、慰めるように溜息を吐いた。
多分これだけだったと思うんだ。
時間あったら、今度、スックーが家継に骸嫁にいってしまって「きぃぃぃ」ってなるのとか書いてみたい、です……
2010/7/26 再up
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