危険だったから、田舎の方に避難しようと思って……
そう言った彼はへにゃりと笑ってみせた。
今現在の世相ならば仕方ないのかもしれない。
こんな細い身体の青年――いや、まだ少年と言った方が良いだろう彼の姿に納得した。
都会から逃げてきたという彼は簡単に町へと受け入れられた。
「つぐ、何してんだ?」
「あ、山本……何って、見てわからない?」
声をかけてきた山本に家継はへらりと笑って尻餅をついたまま見上げた。
「ガハハハ、ランボさんと遊ぶんだもんねー!」
「はいはい、わかってるよ」
ランボに抱き着かれた勢いで転倒したまま、ランボの身体の汚れた部分を払ってやる。
「ははっ、楽しそうだな」
「まぁ、楽しいけどさ〜……」
眉尻を情けなくも落として笑った。
「お前ら、家継さんにご迷惑かけんじゃねぇ!」
「獄寺も相変わらずなのなー」
「うっせぇよ!」
割って入ってきた獄寺を山本が笑う。
こんな風景は最近毎日のように見られる日常となっている。
この町に来てから、まだ一年も経っていないが、その人柄で気付いたら騒動の中心にいる。
問題児たちを受け入れ、ほわほわと笑いながら、生活している。
家財道具一式だけで馬車で来たなんていう事実はすっかり皆の頭から忘れられ、昔からいたかのように馴染んでいる。
こんな小さな町では、大きな騒動は起きず、毎日のようにある子供たちの微笑ましい騒ぎは娯楽として受け入れられていた。
そんな平穏の最中、国から大魔王退治に行くように、という御達示が町にあった。
そうは見えないが、山本は国でも一二を争う有名な剣術の継承者で、獄寺は国での模擬戦で優勝したことがあるのだ。
そのために二人に行ってほしいということだ。
しかし、二人の仲はあまり良くなく、二人旅など絶対に無理。
ならば、と白羽の矢が立ったのは家継だった。
せっかく平穏に暮らそうと思っていたのに、と溜息を吐いた家継だが、町に受け入れてくれた恩を蔑ろにすることはできず、旅立つことを了承した。
山本と獄寺と家継はこうして旅立った。
ふわり、と空に飛び立つ白い影。
連絡用の鳥だ。
その鳥を放したのは家継。
その姿をたまたま目にした獄寺が声をかけてきた。
「家継さん、今何を?」
「あぁ、見てたんだ?」
一応、血縁が全くいないわけじゃないんだよ。
「双子の兄に、大魔王退治に行くことになった、っていう連絡のお手紙」
たいした物じゃないよ、と家継は笑う。
「お兄様がいらっしゃったのですか!?」
「うん。外見も似てる、仲良しの兄が」
ブラコンと呼ばれても、否定はできない。
「それなら何故お一人で?」
今まで疑問に思っていても聞けなかったこと。
何故単身こんな町へ?
話の流れで獄寺は尋ねた。
「だって、兄は所帯持ちだし?」
クスッと笑って言う。
「え? 家継さん、同い年でしたよね?」
結婚早過ぎませんか? と言われる。
「別に政略結婚とか、家の事情とかじゃないよ?」
もうすっごいラブラブで、目も当てられないくらい凄いんだ。
「邪魔だな〜って思って、一人立ちしたかっただけ」
てへへ、と笑ってみせ、もう連絡飛ばしたし、早く帰って寝よう? と提案する。
明日に支障が出るから、と。
「危ないです、家継さん!」
家継の前に飛び出し、庇う獄寺が、モンスターの爪を弾く。
わたわたと離れながら、二人の様子を確認する。
確かに強い。
一般レベルなら頭二つ以上抜きん出ているだろう。
ただ、家継からしたら、思ったよりは弱いな、という感想。
確実に前世より弱いと言い切れる強さに、家継は溜息を漏らした。
家継は今回、今現在歩いている国の王家に生まれた。
双子の兄とその彼女、乳兄弟の彼と四人で過ごしていた。
転生を繰り返す四人だが、今回いつもと違った場所にいることはかなりの驚きだった。
外にはゲームに出てきそうなモンスター。
職業制度にレベル制度。
どこまでもRPGじゃん、と事実を知った時に突っ込んだ。
武闘家になる、と言ったトンファーを振り回す彼女は一桁の年齢で最高レベルになった。
同じ職業でいいや、と言った彼も同じくレベル99。
二人の怪我が絶えないと治癒を求めて僧侶になった彼は、それより遅かったものの10歳を過ぎた頃に99レベルになっていた。
三人はその後、ファンタジーらしさを存分に満喫するため魔法使いになり、同じく最大レベルに。
綱吉は戦士もレベル99にして僧侶になり、家継が旅立つ時にはそれすらも99レベルになっていた。
骸は上級職の賢者になって、同じく旅立つ頃には最高レベルにさせていた。
恭弥は魔法使いの後、芸人に就いていた。
踊りが嫌でパーティーがある度に逃げていたら今現在の親に怒られたのだ。
一応踊りを覚えるか、とその職業に就いたが、運が異常に良い上にサボリも仕方ないと思われるその職業はかなり楽だった。
味を占めた彼女はレベルが99になってもそのままの職業でいた。
家継は? と言えば、綱吉と同じ職業は嫌だな〜と戦士になり、それを99レベルにした後魔法使いをかじった程度で遊び人になって旅立った。
芸人と同じ意味だが、使えなさのアピールにちょうど良かったからである。
そんな周りの環境に慣れすぎていて、山本と獄寺のレベルが低いように思ってしまったのだった。
「ここが魔王城か〜」
「いかにも、っすね」
いやいや、ただの別荘だろ。
城というにはこじんまりとした建物へと入ろうと山本が玄関の扉に手をかけた瞬間、向こうからカチャリと音を立てて開いた。
「いらっしゃいませ、山本様、獄寺様」
飛びずさり構えようとする二人に相手は笑った。
その姿を確認すれば、どこかの神官か何かのような衣服を着用している。
「神、官……?」
「特定の宗教を信じているわけでは無いですよ」
神がいるなら殺したいくらいですし。
「職業で言うと賢者です」
敵では無いと判断したのか、武器を収めた。
「なんでオレたちの名前を知っていたんだ?」
「あぁ、それなら連絡が届きまして」
どうぞ中へ、と案内し始める。
一度も名前を呼ばれていない家継が薄く笑みを浮かべながらついていった。
「何勝手に他人入れてるの、骸」
階段の上からひょいっと飛び降りてきた恭弥に目を剥く。
「あ、危な……」
危ないですよ、と言いかけた獄寺の言葉は平然と着地した恭弥の姿に止まった。
まぁ、これくらいなら余裕で降りられるだろう、恭弥なら。
勿論普通の女性では無理だろうから、声をあげそうになったことは仕方ないと思われる。
けれど、そんなことより目を引くのは……
「んなっ、なんて格好してるんですか!」
「あぁ、これ? 母さんが踊り子なんでしょ、って言って送ってきた」
露出が激しいそれを、羞恥の欠片も無くよく着れるものだ。
出る所が出て、引っ込んでいる肢体をあらわに、肌色じゃない部分の面積が限りなく少ない。
「だとしても、そんな格好、ツナ君が許さないでしょう?」
「母さんからは次のパーティに着てこい、らしいけど」
いやいや、そんな格好では止められるって。
「ツナ君に見せてから言いなさい」
「うん、わかってる」
同じ人物を目指すことになり、同行する。
ゆったりとしたスピードで、五人は歩き続けた。
「お邪魔しますよ」
軽いノックだけで入室する。
返事を待たないことに、中の人物はむっとしたらしく、視線が鋭く向けられる。
「ツナ、怒らない」
これくらいで、と骸の横をすり抜けて恭弥が綱吉の元へ向かう。
恭弥に抱き着かれて落ち着いた綱吉は骸から視線を外した。
「目のやり場に困るような姿だね」
「うん、母さんから送られてきた」
「何考えてんの……」
娘にこんなものを着せようと考える母親に頭痛を覚える。
「んで、これ着て次のパーティ――」
「ダメ!!」
何言ってるの!?
「キョウちゃんのそんな姿見た奴、全員咬み殺すよ」
そう言い切った綱吉に、こうなると思っていました、と骸は溜息を吐いた。
「でも数名にもう見られたけど?」
「誰!?」
ギラリと物騒な尖った殺気に、家継の隣にいた二人が身構える。
身の安全を計るためか、綱吉を大魔王だと判断したのか、武器を手に飛びかかっ――
ガスッ!
後ろから痛そうな音をさせて殴られた。
凶器は家継が鞄から取り出したトンファー。
そして、意識が朦朧としかける程に強力な一撃に山本と獄寺は倒れたまま動けなくなったのだった。
「やぁ、ツナヨシ」
一年ぶりだね、元気?
「あぁ、お前か。元気だよ」
そういうツーは?
「元気にやってるけど、半年くらいしか経ってないけど大魔王ってどんなことになってるのさ」
「あぁ、それな」
はぁ、と溜息を吐く綱吉を見ながら家継は口を開いた。
「どうせ、父さんたちと何かあったんだろ?」
「あぁ、お見通し?」
「それくらいは、超直感あるしさ」
分からなくもないよ。
王子が国で迷惑になってその立場押しつけられたとかそんな落ちでしょ?
「ほんとに分かってるんだな、その通りだよ」
邪魔だったんだろうね、称号として与えられちゃったんだよね。
「ま、ある意味間違ってないでしょ、ツナヨシだもん」
綱吉だから、で全ては納得に繋がってしまう。
「それで終わらせるなよなぁ……」
「半年前くらいに流された話だったけど、誰か襲ってきたりとかしなかったわけ?」
「大丈夫だな、ほぼ骸のおかげで」
骸が幻術で覆い隠している場所なため、誰一人として入ってくることはできない。
「入れる外部者はツーだけだし」
「あぁ、これもあるしね」
骸特性の幻術が効かなくなるお守りの存在を思う。
骸程強い幻術使いが存在しないため、世の中全ての幻覚が効かないようになる呪符である。
それが無くとも、超直感持ちである綱吉と家継には全く幻覚は効かず真実が見えるのだが。
「それならいいけどさ、それって上層部全体が苦々しく睨んでくるんじゃないの?」
「それくらいはどうでもいいさ」
何度も夜会等に呼ばれて出て行っているが、その度に睨まれている。
睨むしかできない彼らのことは鼻で笑っている。
「まぁ、そうだろうけどさ」
でも大魔王っていう称号付けるなんて、何考えてるんだか。
「いつかは国を継ぐ存在だっていうのに」
「それ、お前がやらねぇ? やっぱりめんどい」
「気持ちはわかるけど、第一子って決まってるから無理」
今回に関しては、そう決まっているために代わりなるなんてできないのだ。
今までは面倒事であるマフィアのボス等全て押しつけられていたが、今回はそうもいかないのである。
「ほら、外見一緒だし?」
「性格が違いすぎるから無理」
オレ、ツナヨシ程黒くないし、すでに結婚してること知られてるんだから、恭弥さんと一緒にいれなくなるよ?
「ここに籠る形式変えずに、おかしなことしないかどうか見張ってるだけならいいんじゃない?」
「そうだね、それでいっか」
納得した綱吉はそれで頷いた。
「んで? そこの二人は?」
「剣士の山本と盗賊の獄寺君ね」
国から依頼された勇者一行、って所でしょ。
「ま、正直弱すぎなんだけど」
「さっきあっさりツーに倒されたしな」
ってか、それ、剣士と盗賊って、勇者誰なんだよ?
「…………あれ? ――オレ?」
今更気付いた事実である。
「そうなるんじゃね? ツーに倒されるわけ無いけどさ」
「まぁ、向こうのシナリオ考えれば、悪い兄を粛清する弟、とかそんなんか?」
ありえねぇ話だけど。
「ってか、遊び人の勇者って何さ」
流石に笑えるんだけど、と家継が言えば、綱吉は手を叩いた。
「そういえば、さ」
笑える話なんだけどさ。
「オレの今の職業、まさに勇者なんだけど」
「………………は?」
「ほら、一年前くらいに99になったから、次何にしようかなぁって言ってたじゃん」
「あぁ、言ってたよね」
「んで、職業何に就けるか調べてもらったら、いきなり勇者とか選択肢に出てきてさ」
あまりにも面白そうなんで、それにしてみた。
「ま、それももうすぐ99レベルになるんだけどね」
綱吉の性格等から考えれば、勇者なんて柄じゃないのはよく分かる。
むしろ悪代官とか、それこそ大魔王とかがお似合いだろう。
そんな中にその選択肢が出てきたら、逆に興味を持って選ぶ、綱吉なら。
「職業勇者の称号大魔王?」
それ、笑えるんだけど、と家継が笑いが止まらないらしく、クックックッと笑い続けている。
「皮肉が効いてて面白いですよね」
「何だって、綱吉は綱吉でしょ」
そんな職業なんてどうでもいいよ、と恭弥はつまらなさそうに話を打ち切った。
骸が部屋の端から机を寄せ、真ん中で四人円卓に座る。
骸が淹れた紅茶と、綱吉が棚から取り出したお菓子を前に、のんびりと会話を続けることにした。
立ち話も長く続けているのはどうか、ということのようだ。
一年振りという現状であれば、積もる話もたくさんあるだろう。
「それより、さ」
何で家継がトンファーなんか持ってるの?
「使えないでしょ? 今回戦士しかやってないし、使い方知らないだろ?」
「あぁ、これ? お土産」
ちょうど良かったかもなぁ、と言いながら、鞄から包みを取り出して三人に渡した。
恭弥にはその持っていたトンファーも手渡して。
「…………ツ、ツー、これ……」
「うん、頑張ったんだよね」
「い、家継君……」
感極まったのか、骸が家継に抱き着く。
「は、放せ!」
同性に抱き着かれる趣味は無い! と振り払おうとするが、どうやったのか、体格的に負けているからか、振り解けない。
「……ありがとうございます!!」
「いや、だから、放して……」
困ったように力強く抱き着いている骸に家継は眉尻を下げた。
「これ、どうしたの?」
「並盛村ってさ、染物と織物が名産なんだよね」
知ってた? と笑う家継。
「少しばかり死ぬ気も使用して頑張ってオレが作ったんだ」
懐かしいでしょ、制服。
「羽織ってみてくれる? サイズも考えて作ったんだけど不安で」
肩にかけるようにした綱吉と恭弥を見て、特に問題無いな、と家継は頷いた。
学ランと並中の制服を着た二人の姿を見つめていれば、骸の抱き着く腕の強さが増した。
「何だよ、骸」
「僕も見て下さい」
構ってほしかったのか、と溜息をうっすらと洩らしながら緑色の黒曜中の制服に袖を通している骸を見た。
「サイズいいじゃん」
「家継、重さまで同じなんだけど、どうして?」
羽織った学ランの重さも、トンファーの重さも、今までと変わりなく、軽く腕を振って感心したように言う。
「あぁ、最近一緒に過ごす時間も増えてたから、触る機会も多かったからね」
制服の返り血のためにクリーニング屋に走ったり、トンファーのギミックをようやく少し教えてもらえたりしたのだから。
「分かるギミックは入れたけど、流石に全部は無理だった」
「それはいいよ。必要なら自分で改造する」
「うん、そうしてくれると嬉しい」
棘を出してみたりしている恭弥の様子を確認して家継は笑って答えた。
「それ着てパーティ出れば? 全員で」
オレが作ってきた服っていうラベルがあれば、角も立たないでしょ。
「何だったら、オレもそのパーティに顔出すからさ」
「そうだね、それいいかも」
制服が嬉しいのか満面の笑みを浮かべたままの骸と、学ラン姿にトンファーを楽しげに振っている恭弥の姿に綱吉が頷く。
「んじゃ、この二人が暴れないようにして、そのパーティに行くことにしよっか?」
今晩もあるんだよな、パーティ。
「そのパーティで、オレ、王位継承権放棄宣言していいかなぁ?」
「そこまで言うならしてもいいけど」
「よし、ツナヨシの許可得たからそうする」
「僕も家継君に付いて行こうかな?」
「骸は来なくていいからな? ツナヨシのためにこっちにいればいいだろ?」
「えぇー、でも、僕も自分で制服を作りたいんですが……」
「遊びに来る分には許すから」
「わぁい」
どこの子供だと言いたくなるほどにはしゃいでいる骸を放置して、家継は恭弥を振り返った。
「こっちはついでだから出来は保障しないよ」
二着手渡せば、セーラー服と並中女子制服。
「学ランは上着のそれしか完成させれなかったから、セーラー服の上から羽織ればいいんじゃないかな?」
「他の服のズボンとシャツと合わせようかと思ってたけど、それでいっか」
セーラー服は、普通に存在していたセーラー服を参考に裁縫を教えてもらった女性に布とデザインだけお願いして作ってもらったものだ。
色合いや形を恭弥が着ていたものに合わせているため、特に問題は無さそうだ。
「……お前、何着作ってるんだよ」
「学ラン作るかなぁって思ったのが最初なんだよね」
やっぱり恭弥さんって言ったら学ランでしょ。
「作ってみたら、色変えて骸のそれ作るかと思って用意してみたんだけど、そこまでしたらこれらも必要でしょ?」
ちなみに、家継の制服が試作品で綱吉の制服が二度目に作った完成品である。
「制服で合わせてたら、目立つだろうけどいい感じだよね?」
「あぁ、そうだな」
家継の言い分に、綱吉と恭弥と骸は笑った。
そんな幼馴染四人組のほのぼのとした会話をただ聞くしか無かった山本と獄寺の二人は途方に暮れていた。
家継の殴り方が良かったのか、動けないだけで耳は聞こえているし、頭は働いているのだ。
知らなかった事実がポンポンと飛び出してくる状況に、泣きたくすらなった。
けれど、そんな二人の気持ちを完全に無視した四人は、後ろ手に合わせて軽くロープで縛り、引きずるように隣の部屋へと移動していく。
賢者だと名乗っていた骸の移動の魔方陣で王宮に移動するらしい。
一瞬にして移動が成功していることに、どれだけの実力を持っているのだろう、と二人は戦慄した。
「! 王子だ……」
「お珍しい、お二人揃っておられるぞ?」
「家継さまは確か家出をされたと聞いたが……」
「あの様子じゃ、ただの噂だったか、それか社会勉強だったんだろ……?」
そんなざわめきを切り裂くように人々の視線が集まる中、四人は歩いていた。
この時代にはありえない服装を着た彼らの姿は異様でありながら、人々の視線を集める。
「おぉ、家継。いつ帰ってきたのだ?」
「お久しぶりです、父上。この城に来たのは一年以上振りでしたか、今日ですけど」
「そうかそうか……」
「えぇ、何故ツナヨシが大魔王などと呼ばれているのか、など色々と問い詰めたいことはありますが……」
その前に、こちらを献上しますね。
家継の合図で先程預けられていた山本と獄寺が縛られたまま兵たちに連れてこられた。
山本と獄寺は動けない様子のままであるが、縛り直した際に正装させてあるために見た目はマトモだ。
「先日、大魔王退治に、と並盛村に要請した山本と獄寺」
こんな二人を送り込んでまで、ツナヨシを排除したかったのですか?
「まぁ、オレが見た限りでは、これくらいじゃ簡単に撃退されるだけですが」
「ん、んなっ、何故この二人がここに……!?」
「アレ? 知りませんでした?」
オレ、並盛に行っていたので、彼らの友達になって一緒に旅してたんですよ?
「いっ、いえつぐ!?」
「父上、何をそこまで驚いているのですか?」
オレ、ちゃんと言って行きましたよ?
「ちょっと染色の勉強してくる、と」
染色で有名なのは並盛村であることは、ここにいる人々の煌びやかな衣服の多くの産地であることを思えば簡単に分かることだろう。
「えぇ、言っていたわね」
「母上……」
母親の言葉に、いつ近付いてきたのだろうと思いながらそちらを見る。
「お久しぶりです、お体の調子はいかがですか?」
「元気よ。さぁさぁ、アナタは一回お部屋に戻って顔を洗ってくるといいわ」
家継は一緒にこっちに、と続けた母親について行く。
父親はフラフラと退出していく。
息子にやり込められただけではなく、妻に軽くあしらわれたのが原因のようだが、そのフォローはいいんだろうか……?
「だって、家継、また出ちゃうんでしょう?」
当分また戻ってこなくなると感付いた母親の勘で、家継を優先することにしたようだ。
「はい。オレは王位継承権を放棄して村に落ち着こうかと思っていまして……」
「そうね、ずっと言っていたものね……」
理解ある母親の同意を得てから、綱吉の元へと移動した。
「…………ツナヨシ、恭弥さん止めなくていいの?」
「仕方ないんだよ、諦めた」
もうあれは剣舞みたいなもんだと思うことにした、と綱吉は溜息を吐く。
トンファーを振り回し、スカートがヒラヒラと舞う中、踊るように戦っている。
恭弥に勝つことができたら晴れて一緒に踊ることができる権利をもぎ取れるそうだ。
そこまでして踊る権利なんて欲しいものだろうか……?
「恭弥さん、美人だから……」
仕方ないのかもなぁ、と生き生きとしている恭弥の背中を見ながら、綱吉と骸と家継は会話を交わしていた。
政権の行方が分かっている一部の貴族たちからの挨拶を受けたり、会話も交わしながら、パーティーは終わりに向けて進んでいった。
「んじゃ、オレ、並盛村で生活してるから、用事あったら来るか、連絡飛ばして」
「あぁ、わかった」
城の奴らがうるさかったら一緒に排除するし、とは言わなくても通じる言葉。
転生を繰り返す四人はどこまでも運命共同体。
普段とは違う世界観に生まれ、普段とは違う生活を送っていようとも、四人の関係とやることには変わりが無い。
綱吉と恭弥は二人で幸せに。
四人の生活を脅かすものは四人の力で完全排除。
そして幸せに暮らすのだから。
「僕も一緒に行きますー!」
「はいはい、骸は落ち着け」
「それじゃ、ツナ君、キョウちゃん行ってきます!」
結界と移動陣の方は綺麗に整備してありますので、当分大丈夫なはずですけど、何かあったら連絡をお願いしますね。
「お二人に似合う素敵な洋服を作ってきます!」
「はいはい、頑張れよ」
「怪我すんじゃないよー」
どうでもいい、とヒラヒラと手を振る綱吉と恭弥に見送られながら、並盛村へとゆったりと歩いて行く。
家継と骸の数歩後ろを、山本と獄寺はもう何も言わないと思ったのか、全ては無かったことにしたのか、静かに歩いてついていった。
DQ風の制度を中心に取り入れたのでD周目ですw
たまにはこういう違う世界に混ざってみたり?
この能力、来世に引き継ぎしたら、来世とってもヤバイよね。
特に魔法とか(笑)
2010/04/20 作成
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