「奥方様! お買い物ですか?」

 商店街を袋を下げ歩く恭弥に獄寺は近付いた。

「お持ちいたします!」

 袋を奪うように手にする彼に淡く微笑んだ。

「ありがとう」
「い、いえ! これくらいいくらでも!!」

 お任せ下さいと笑う。
 今まで何度も転生してきたが、彼からこんなに歓迎されるのははじめてだ。
 綱吉にしか見せなかった笑顔を惜しみなく恭弥に見せる獄寺。
 逆にどこか楽しく感じ始めた恭弥は演技にも熱が入る。

「ツナが泊まりに来るから、その買物」

 夕食を作るの、と言いながら精肉店を示す。

「挽き肉を買うから待って」

 店の前で歩みを止めさせ、店主に声をかける。

「これを300下さい」
「今日は何だい?」
「ハンバーグを」
「いいね〜」

 金銭を払い、おまけだと少し多めに入れられたパックを受け取る。
 戻った店の前で袋を開いて見せる獄寺の手元に入れる。

「これで終わりですか?」
「全部買ったから」

 一歩後ろを行くような獄寺を引き連れ、恭弥は自宅へと向かった。
 今世ではお隣りでは無い恭弥の家は中学校に程近い場所にある。
 両親はいつもと同じく家にはあまりいない。
 状況を知っている奈々から許可を得て、綱吉はよく泊まりに来ている。
 完全に公認となっているため、獄寺が奥方様と呼ぶのはそのためだ。

「ではオレはこれで!」
「ありがとう」

 前に夕食を、と言った時に激しい反応をされ、そこに来た綱吉にダメ! と言われてから言うことは無い。
 綱吉いわく、キョウちゃんの料理を食べさせたくないそうだ。
 二人きりの時間を取られるのも嫌なので、別に呼びたいわけじゃないのでそうしている。


 挽き肉と炒めた玉葱を混ぜながら。

「もうしばらくこのまま……」

 騙し続けた方が素を出した時も楽しいだろう。
 そう呟いた時、後ろから抱き締められていた。

「いや、多分何も反応無いと思う」
「あれ? ツナお帰り」

 いつの間にか後ろにいた綱吉が言ったことに不思議そうな表情を向ける。

「きっと『流石は奥方様です! 10代目に相応しい』とか言うって」
「そんなに心酔してる?」

 まだ足りないでしょ、と言う恭弥に首を振り。

「もう充分だって」

 たまに隠したくなるよね、と恭弥に唇を寄せた。




* * * * *




「なぁなぁ、ヒバリ」
「何?」

 綱吉との会話を邪魔された、と不機嫌に呼びかけた山本を見る。
 綱吉の椅子を半分借りて同じ椅子に座ったままの二人は密着している。

「恭弥って下の名前で呼んでいいか?」
「却下」

 恭弥では無く、綱吉が言う。
 それに山本は頬をかきながら言った。

「んでもすぐに沢田になるだろ?」

 下の名前で呼んだ方が良くねぇ? と笑う山本に教室中が心の中で突っ込む。
 結婚は18歳になってからだろ! と。
 同学年の綱吉と恭弥が結婚するのはまだ四年は先である。

「旧姓のままで構わないよ」

 名前で呼ばれるのは不愉快、と恭弥が言い、結婚前提なんだなやっぱり、とクラス中が二人のラブラブな様子を思い返して思う。

「でも、私もきょうやちゃんって呼びたいな」

 その会話に割り込んだのはクラスの――否、学校中のアイドル。

「笹川……」
「ほらぁ、私のことは京子って呼んでってば」

 お兄ちゃんとも係わりあるから名前で、ってお願いしたじゃない。

「ね! ツナ君も!」

 仰々しい名前の綱吉は皆からツナと呼ばれているのだし、と名前で呼んで、呼ぼう、とクラスの天然二人に迫られた恭弥。

「…………もう好きにして」

 めんどくさい、と投げやりになる。

「じゃ、きょーや」
「きょーやちゃん、名前で呼んでね!」

 にこにこと恭弥に言った二人に溜息を一つ吐いた。



「京子の押し、強いものね……」

 天然って怖いわよね、と花が綱吉に話しかける。

「京子ちゃんもだけど山本もね……」

 仕方ない、と綱吉は恭弥の頭を撫でる。

「ツナ〜、オレも名前でよっしく!」
「はいはい、武」

 いいよ、呼び方くらいと返事を返す。
 それが面白くないのか、綱吉の肩に頭をぐりぐりと押し付け。

「ツナ……」

 と恨みがましくおどろおどろしい声で恭弥が呼ぶ。

「キョウちゃん、サボろっか」

 次の時間ふけるから、と山本に言って立ち上がる。

「黒川、教師が何か言ったらごまかしておいて」
「いいわよ。貸しね」
「オッケー」

 根回しして抱き着いたままの恭弥を抱えたまま綱吉は教室から出ていった。

「私も名前で呼ぶように言おうかしら……」
「うん、その方がいいよ花」

 笑顔も眩しく京子に言われて花は笑い返した。




「キョウちゃんが二人に名前呼び許可か〜」

 今回もまたいつもと違うね!

「あれだけクラスにずっといて風紀だと知らなければ仕方ないんじゃない?」
「ずっと一緒なの嬉しいよね」
「うん。そのためにそこ全部ね」

 机の書類の一山を示す。

「仕方ないか」

 平穏を買うと思えば安いよね。
 風紀の仕事を二人きり大量に片付けるのだった。
 委員が一人でも戻ってくる前に全てを片付けソファでお茶を。
 綱吉が副委員長だからここにいるとだけ思わせるように――





女の子やっているキョウちゃん話の続き。
雲は欠番というか、探し中的な扱い。
キョウちゃんはツナの彼女として、京子ちゃん的立場にいます。
今回はバレの前辺りまでの人間関係を書いてみたw

2011/6/13 作成
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