「怪物使い?」
リボじいと名乗ったリボーンにお前はそれだと言われ、首を傾げた。
何それ……
「モンスターを従える伝説の存在だぞ」
過去に有名な怪物使いがいただとか、契約することでその力を意のままにすることができるだとか、滔々と語るリボーンの声を右から左に受け流しつつ席を立つ。
とりあえずお茶でいいか。
この家にコーヒーは無い。
顔を出す面々の好みが紅茶やお茶に偏っているからである。
それに今現在、自分一人で住んでいるから物を増やすつもりも無い。
「む……いいお茶だな」
香りをかいで言うリボーンに愛想笑いを返しながら自分も湯呑みに手をつける。
「で? オレがその……怪物使い? だって言う根拠は?」
話は聞き流していたが、その点くらいは確認しておこう。
「ツナのひいひいひい……ひいじいさんが怪物使いだったんだぞ」
今、何回言った? そんなに遠いなら関係無いだろ……
「すでに血筋は途絶えたと言われていたんだが、研究のために探したんだぞ」
さぁ怪物使いの血筋を発揮しなさい、と厳かに告げているつもりのリボーンに冷めた視線を向ける。
「お前の研究のためかよ!」
リボーンはそれの何が悪い? とでも言いたげな表情でてへっと舌を出してみせる。
「魔法使いは研究馬鹿の変人揃いっていう噂もあながち間違いじゃないのか……」
町で聞いた噂を思い出して頭痛を覚える。
賢者の塔という名の研究兼教育施設から出てくることの滅多に無い彼ら。
通称魔境とまで言われる魔法使いの住む場所に近付く一般人はいない。
「なんか言ったか?」
「いえ、何も!」
気に食わないことがあると魔法に物を言わせる彼らに刃向かうことの馬鹿らしさは周知されている。
国の上の者からして頭が上がらないと聞く。
蛙にされた、銅像にされた、人体実験など、まことしやかに囁かれている。
「でだ、吸血鬼ヒバリンを倒しに行くぞ」
そのためにオレは来た、と杖を突き付けてくるリボーン。
穏便に帰ってもらいたかったのだが、無理そうだ。
「きゅ、吸血鬼〜!?」
がたがたと震えて叫ぶ。
「無理無理無理無理〜!」
ふるふると激しく首を振り否定をする。
「無理じゃないですぞ」
やる前から諦めんな、ダメツナ。
「悪虐非道のヒバリンを止められるのは怪物使いのお前だけなのです」
「…………」
決まった! とばかりにキラキラしているリボーンを数秒見詰め、溜息を吐いた。
旅立つと言い張るリボーンに今日は遅いから明日早くにしようと説得し、ベッドを整えた。
すでに死亡した両親の部屋のベッドをリボーンに使用するよう言い、料理を始める。
数日なりと出掛けるなら日々の食事用の材料は使ってしまわないと。
保存食にできる物はしておかないと勿体ない。
結局、多少豪勢になってしまった晩御飯は、最後の晩餐のようで気が滅入る。
保存食とした物は旅に持っていく物と置いていく物に分け、旅支度を済ませた。
畑や家畜の世話は近所の人に頼み、今は手紙を書いている。
親戚からの使いが来たと言ったけど、お隣りさんが我がことのように喜んでくれたのはかなり罪悪感を覚えた。
嘘で誤魔化してごめんなさい。
簡単に誤魔化されてくれてありがとうございます。
頭を家に帰ってから何度か下げておいた。
「こんなもんか」
もし、いない間に訪問されたら――そう考えると怖いものがある。
連絡事項を書き置きでもしないと後が怖い。
テーブルに重しで飛ばないように置き、安寧へと身を沈めた。
リボーンが一緒だなんて、ゆっくりと睡眠が取れるのは当分無さそうだ。
夜も明けぬ内からリボーンは行動を始めた。
蹴り起こされてむっつりしながら朝食を出した。
「食事くらい自分で何とかしろよ」
食事を作れと起こされたのだから怒っても良いだろう。
今日も上手くできたからいいけど。
誰かに作ってもらった方が美味しいのは確かだが、以前より腕が上がっていると自分では思う。
振る舞う機会はあまり無いから他人からの評価は心配だけれど……
そういえば最近彼らは文句を言わなくなったけれど、文句を言うのに飽きただけなのかは分からない。
後片付けをし、戸締りをして家を出た。
「どこに行くの?」
ふよふよと漂うように飛ぶ太い木の杖を不思議そうに見詰めながら聞く。
練習すれば乗れるなら練習してみたい……
「乗れないぞ?」
練習したとしても、魔法使いの素養の無い者には飛ぶことはできない、とリボーンは言う。
やりもしないで拒絶されるのは好きでは無いが、自分よりその杖に興味を示しそうな奴がいるからその時で良いだろう。
最初の問いには付いてくれば良いと説明する気は無さそうだった。
ただ何も無く道を行く。
道の無い場所も自分は飛んでるから気にしないとふよふよとどこまでも。
森の中、野宿もして二日程が過ぎた。
何日の予定とも何も聞いていなかったため、そろそろ食料が切れそうだ。
一人で食べるなら一週間は持つくらい持っていたのだが、リボーンに食べられてしまったのだから仕方ない。
何度もした目的地までどれくらい? という質問を繰り返した。
「せっかちだな☆」
せっかちなどと言うくらいなら、オレの食料を食べないでくれ。
「まぁいい。あれだ」
ピッと指さした先には城が建っていた。
「あ、あ、あれがその吸血鬼の住む城!?」
「そうだぞ」
人の足では数日かかる距離だが、吸血鬼なら一夜でツナの住む村一帯を灰にして帰ってきてもまだ時間が余るくらいの近さだぞ。
今まで無事だったのが不思議なくらいだな、とリボーンが言う。
「早速ヒバリンを倒すのです」
「ちょっと待て!!」
怪物使いだとかいう与太話も信じてないのに無茶言うな。
吸血鬼にとって人間なんて食料なんだろ?
「――ちっ」
問答無用で対峙させるつもりだったのを見て取り、溜息を吐く。
命の危機に晒すことで秘められた力が――なんていうのは物語の中だけだ。
ただ無惨に散るだけだと理解できないのか……?
「モンモンキャンディだ」
想定上はこれを食べることによって怪物使いの能力を増幅することができるはずだ。
「それどこから……」
伝説の存在とまで言うなら、そんなものが存在するわけ――
「潜在能力の増幅に使う、弱い魔法使いのための飴でもある」
そういう用途であれば存在してもおかしくないだろう。
その飴が本当に怪物使いの力を増幅するかは別として。
「とりあえず食え」
指で弾いた飴が喉にまで飛び込む。
軽く弾いたようにしか見えないがかなりのスピードだったそれを反射で飲み込んだ。
「んぐっ」
目を白黒させたのも一瞬、額から炎を発し落ち着いた表情を見せたのだった。
「いきなり何をする……」
普段より低い声で問う。
「成功のようだな」
リボーンの満足気な表情に怒りを滲ませる。
「長時間は持たないから早速行け」
今の内に、と城の扉を示される。
言いたいことは沢山あるが、とりあえず入ろう。
軽いノックの後、扉を開いた。
「キョウちゃん久しぶり〜」
ぎゅうっと抱き着き身体を密着させる。
少し痩せたかもしれない。
それに気付いて少しむっとする。
気配を感じ取ったのか苦笑を漏らしながら頭を撫でてくれるキョウちゃんを睨み上げる。
「何を寄り道してたの?」
遅かったね、と言うのはこの城に何度かオレが来たことがあるからだろう。
「人間の足で歩いて来たらこんなもんだよ」
休みはあまり取ってないけど、これくらいかかるのは仕方ない距離でしょ。
「あぁ歩いたんだ?」
だからか、と納得したキョウちゃんは首を傾げる。
「飛べば数時間でしょ?」
「まぁ……」
キョウちゃんに会いたいからと来るのが待てずに飛んできた時はそれくらいだった。
吸血鬼なら一夜でどうこうと言ったが、オレにとっても同じことだ。
ハイパー化して飛べば機動力が随一な大空なのだから。
「僕を待たせたことは後で償ってもらうよ」
うんうんと全力で上下に頭を振り、キョウちゃんの頬に音を立ててキスをした。
ハートマークが飛び交うようなオレたちにリボーンは茫然自失。
だからと言って構うような余裕など無い。
数日振りに会ったキョウちゃんとの触れ合いだけで手一杯だ。
「お、お前ら……」
「何あれ。僕の食事?」
「いやいやわかってて言わない」
第一、契約してるからキョウちゃんの栄養になるのはオレの血だけでしょ。
「お腹すいちゃったよね、ごめん」
三日食べてない状態だから、だから少し痩せたように感じたに違いない。
「大丈夫、今日はハンバーグ食べたよ」
血から取れないだけで、普通の食べ物は食べれる。
今世もいつも通りキョウちゃんの料理は絶品だ。
「オレも食べたかったな……」
「うん、作ってあげる」
保存食ばかりだったから嬉しい! と喜びいっぱいに抱き着く。
ぽふぽふと頭を叩き、離れるように促すキョウちゃんに不満をあらわにする。
「とりあえず紅茶で良いよね」
話をするにも、と用意を始めるキョウちゃんを手伝うために棚からカップを取り出す。
一応リボーンの分も用意してやるか……
紅茶に一口口を付けて人心地着いたのか、リボーンは落ち着いたらしい。
少なくとも表面だけはそう見せている。
「怪物使いと吸血鬼なはずだよな?」
見付けてきたのは自分なのだから否定はできないのか。
「その怪物使いが何かはわからないけど、そうだね」
「いつから知り合いなんだ?」
「小さい頃からだよね、キョウちゃん」
「生まれる前からでいいんじゃない?」
前世の話などをするつもりは無いけど、それで良いか。
「さっきツナが言った契約って――」
「この人間以外の血は吸わないという約束」
「ってなんでだ!」
「結婚みたいなもんだって、リボーン」
今回は二人して男だし、寿命に差が出過ぎるのを嫌ってした契約。
つまりオレが死んだらキョウちゃんも死ぬ。
「お前ら――」
呆れたようにリボーンは紅茶を飲み干す。
別に、キョウちゃんと一緒にいれればそれでいいし!
「ツナが空を飛べるってのは吸血鬼になったからなのか?」
「いや、モンモンキャンディ? アレ食べたのと同じ状態で飛べるんだって」
たいしたことじゃない、と平然と答える。
「もう、お前ら何なんだよ!」
リボーンは叫んだ。
「――追い付きましたー!」
はぁはぁと息を切らした骸が現れた。
「ツナ君が怪物使いってどういうことですか?」
置き手紙を見て急いで追ってきたらしい。
自称怪物使い。
それが今世での骸の肩書だ。
「ぁっ……!」
転がる脳みそに声を上げるクローム。
イヌ男とゴーレム、マミーである彼らを見つけてからはそう名乗っている。
近くまで転がってきた脳みその髑髏を拾い骸に渡す。
「先祖がそうだったんだって」
リボーンが言ってた、と告げれば歯噛みする。
「本物がいるならバレるじゃないですかー」
実際には怪物使いな訳では無い骸がそれを名乗っていた理由は穏便に彼ら三人を連れ歩くためだけにあった。
「大丈夫大丈夫、オレそんなのになるつもり無いから」
それに二人いたって問題起きないって。
「あ〜もう! キョウちゃんを従えた、とか噂になるんですよ」
目に見えている。
「実際の関係とかそんなの意味無くなるんですよ」
ただの流言蜚語なんですから。
「そして吸血鬼がいないから偽者だって言われるんですよ……」
そこまでの未来がありありと想像できる! と手にしたパイナップルの形を模した物が付いた杖を振り回しながら骸は嘆く。
そこまで良く妄想逞しく話が作れるものだ……と三人して呆然と見ていた。
「……なぁ、その杖なんだ?」
ふよふよと骸に少しだけ近付いたリボーンが尋ねる。
「キョウちゃんが作ってくれたステッキです!」
大切な物なのであげませんよ! と予防線を張るまでもなく、そんな物いらない。
何を作ってんだ、とリボーンに見詰められたキョウちゃんは視線をずらしながら答える。
「魔法のようなことするし、魔法使いの振りでもさせた方が安全かと思って……」
機能は何も無い。
ただの張りぼてだ。
それでも骸にとってはキョウちゃんが作ってくれた物だから大切らしい。
「確かに魔法使いを直接知らない者には魔法の杖に思えるかもしれないが――」
「それが本物の魔法の杖ですよね!」
宙に浮くリボーンが乗る杖に興奮した骸が目を輝かせる。
予想通り杖に興味を示したらしい。
骸はしつこいからリボーンから何とかして飛ぶ練習までの約束をもぎ取るだろう。
それらの騒ぎは楽しむこととして――
「しばらくここに住んで良い?」
ね、キョウちゃん。と笑いかけるのだった。
後ろで追いかけっこに発展している骸とリボーンをゆったりとお茶をしながらキョウちゃんと笑い合う。
髑髏と犬と千種ははらはらと骸を見詰めながら一緒にお茶をする。
これもまた平和な証拠だろう。
「杖ください!」
「やれるか、馬鹿!!」
いつまでも続く喧騒を笑いながらキョウちゃんと一緒に見ていた。
怪物使いツナのパロ。キョウちゃんバージョンですw
いや、怪物使い好きなんですよ、普通に。
んで、やりたいなぁ・・・とw
怪物使いをツナ様にするかツーにするかで真剣に悩みました(真顔)
ツナ様バージョンにしましたが、ツーのが楽しかったかなぁ・・・?(首傾)
2011/1/26 作成
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