唸りながらキッチンに立っているつぐみの背中を見ながら奈津美は苦笑した。

「んなになるなら、もうちょっとデレりゃあいいものを……」
「!? ……な、なんでナツがいんの!?」

 いきなり声をかけられたことにあたふたとする。

「今帰ってきたけどさ、ホントにそんなんになるならいい加減告白でも何でもしろよ」
「なななななっ! こっ、これはただ単に誕生日だし……」
「そんなに頑張っておきながら何言ってんだか……」

 失敗作としてテーブルに除けられている美味しそうなチョコレート菓子の山。
 生チョコ、ガトーショコラ、フォンダンショコラ。
 マカロンやらチョコレートクリームのシフォンまで、様々なお菓子が並ぶ。

「こ、これはただ食べたかっただけで……」
「はいはい、消費しきれないから骸とキョウちゃん呼ぶぞー」
「ダメ!!」

 慌ててつぐみは叫んだ。

「――んで? 何が気に食わないんだ?」

 どうしようも無いな、と溜息を吐いた奈津美はつぐみに尋ねた。

「……言ったってナツにはどうにもできないじゃん」

 おおざっぱな奈津美の料理は漢の料理という名が相応しい。
 それをわかりきっているつぐみが拗ねたように言えば、奈津美は笑った。

「せっかくキョウちゃん呼んであげようかと思ったのに……」

 実際四人の中で一番料理もお菓子作りも得意なのは恭弥だ。
 奈々譲りの料理上手程度のつぐみには歯が立たないレベルだ。
 骸はと言えば、作れなくは無いが、程度でお菓子作りの方が好きだ。

「…………」

 じぃぃ〜っと見詰めるつぐみとしばし睨み合った後、フッと奈津美は笑った。

「お願いします、は?」

 普通につぐみがお願いしても恭弥は手伝ってくれないことを考えれば、奈津美の口添えは重要。

「…………お願い、します」

 軽くうなだれるつぐみに奈津美は笑顔で待ってなよ、と笑ったのだった。




「……誕生日おめでと」

 完成したチョコケーキを手に、つぐみは骸の所にいた。
 完成直後に持っていかないと咬み殺す、とダブルで響いたことに、ただ頷いて逃げ出した。
 まだまだ二人には敵わない、色々と。

「わぁぁ、手作りですか!?」

 パァァッと喜びの表情を浮かべた骸にコクリと頷く。
 甘味に瞳を輝かせる骸はどこまでも可愛い。
 つぐみといる時はまだ可愛さより格好良さが先行していることを思えば、かなり喜んでいるのだろう。
 作って良かったか、と現在の性別には正しい可愛いという形容詞が似合う美人さには笑うしか無い。

「きょうやさんとツナヨシがうちに連れてこいって言ってたから、行くぞ」

 照れ隠しもあってぶっきらぼうに乱暴に手を引き、自宅へと誘う。
 それを理解しているのか、心底嬉しそうに骸は笑って頷いた。





「――流石に百合ではくっつかないか」

 同性なら友達のような関係を逸脱しない骸とつぐみに奈津美は呟く。
 今まで両方女というケースが無かったから興味津々だったのだが……

「あの二人はあのまんまでも良い気がするけどね、僕は」
「まぁね〜、二人共素直じゃないから」

 ツンデレって言うんだっけ?

「そろそろ、とは思っていたんだけどな〜……」

 まだまだ長期戦か、と窓から見下ろしていた二人の姿に苦笑する。

「さって、二人が戻ってくる前に終わらせないと」

 せっかくお菓子が沢山あるのだし、お茶の時間と洒落込もう、と骸の誕生日祝いも兼ねて奈津美と恭弥は準備をしたのだった。





携帯で打ち込んでそのままだったのを発見しました。
よ、良かった、携帯で全部打ち込んでおいて…………

2010/7/26 再up
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