静かな静かな闇の底。
そこは人を喰らう闇の生き物たちの住処。
これはその内の一つ、吸血鬼の一族の話である。
吸血鬼は始祖を頂点に数名の貴族たち、そしてそれらの僕という構成の集まりである。
そんなに大きな集まりでは無い。
貴族たちは毎日爛れた生活をしていて、僕たちが捕らえてきた獲物を喰らっていた。
吸血鬼はある一定の条件のもと、不老不死であることもその一因となっていた。
そんな毎日を送って遙かな時間が過ぎ去った頃。
気紛れを起こした始祖は妻を娶った。
その時一番美しいと評判の貴族の娘と共に毎夜、美しい生娘を使った血の饗宴が行っていた。
それからしばらくして、始祖のもとに光の加減で金にも見える紅茶色の髪の男の子が生まれた。
生まれる前から祝いのために貴族を中心に多くの人が訪れていた。
その内の一人、占術師を生業とする僕が居た。
その者は、男の子が生まれた瞬間、隣室で急に倒れた。
何事かとその場に居た人々の視線が集まった。
「我等が始祖に生まれし御子はいづれ始祖の命を自らのものとし、我等の世界を作り変えることとなる。御子を殺せるのは我等が血を引きしただ一人。その者以外は傷付けることすら出来ぬ。その者の名h……」
名を言いかけた時である。
彼は唐突に絶命した。
占術師として有名であり、今まで外れたことの無い僕の言葉に予言を耳にした全員が青褪めていた。
「なんだと!?」
「あなた……」
「ここに居る全ての者よ、私の命を聞け」
始祖は貴族、僕、全ての者に生まれたばかりの子供へ刃を振り下ろさせたのだった。
見えぬ何かに護られた子供へ下ろした刃は弾き返されて、振り下ろした本人へと返ってくる。
貴族・僕たち全ての血の匂いに溢れかえった出産の間には、始祖とその妻しか最後に残らなかった。
「…こちらへ来い」
「…………」
無言で茶髪の少年は男に近付く。
無表情で、眼にも光が無く、人形のようである。
唯々諾々と従う、ただの人形……
「御前、失礼致します」
邪魔をしてはいけないとその場にいた数名が礼をして室から出て行く。
その内の一人が人形へと眼をやる。
一瞬キラリ、と瞳に光が宿り、また元の人形のような眼に戻る。
誰一人として気付かないことに、笑いをこらえ、扉を出て少し離れた場所に佇む。
「――いつ決行する?」
「明日」
「了解」
柱の陰に寄り掛かっていた恭弥に、ふっと唇だけで笑って見せた綱吉は答える。
あまり長く話していることはできないから、と決められた自室へと無表情に立ち去って行った。
「――な……何故だ」
思いも寄らなかった事態に、人形とした息子の手が自分を貫いているのを見て、呆然としている。
何一つ感慨も無く、あっさりと腕を引き抜き、崩れ落ちる様をただ見下ろす。
「あぁ、そうだ。そっちも殺さないと」
視線を移す先は自分を産んだ母に当たる人の姿。
ビクリッと恐怖に慄き、後ずさろうとした彼女に、斜め後ろに立っていた侍女姿の少女が引き止め――
ザシュ。
手に持ったナイフを差し込むと、もういらないとばかりにそのまま手を離した。
「殺ったよ」
「ありがとう」
笑みに表情を崩して、その場の状況が変わっていくのをただ呆然と見ていた貴族たちへと冷たい瞳を向けた。
一瞬にして生を奪われた王妃と、虫の息の王。
次は自分たちの番か、と背筋を伝う汗に、貴族たちは冷たい瞳を見上げる。
今まで人形とされていたために表情が一度として変わらなかった綱吉の表情の変化に目が離せないこともある。
表情が変わることによって、周りの視線を釘付けにしている。
天性の魅力全てを明らかにした綱吉は、その場の視線を全て自分の物としていた。
「わ、我らが新たな王よ……」
傅くように跪く貴族たちを冷えた視線で見据え、そして綱吉はふわりと笑った。
「キョウちゃん、骸探しの旅に出よっか」
「うん、いいよ。探せば家継もいるかもしれないし?」
ふふ、と笑い合った彼らが柵も何も無く飛び立っていくのを、ただただ彼らは頭を下げて見送るのだった。
最初の方が残っていなかったため、ナルト時代の書きかけを再び持ち出してきて、どう書いてたか考えながら書いたが、何か間違っている気がしてならない。
でも、だいたいはこんな感じであったはずである。
2010/7/26 再up
屋敷を飛び出してから数日。
何となくで寄った村で早々と見付けてしまった。
見付けた瞬間に指を差して爆笑した綱吉と恭弥に、それは真っ赤になって怒った。
「うるさい!」
そんなに笑うな、と頭から煙が出ているような姿。
そんな事実も、笑った要因によって全て微笑ましく感じる。
「だ、だって――猫娘……ぶっ」
耐えようとしていたが、全く効果無く、涙を流して笑う。
猫耳と尻尾を付けたつぐみの姿は、可愛い。
可愛いがしかし、思いも寄らない姿には笑いが止まらなかった。
「はぁ〜、笑った笑った」
「笑いすぎだよ、ツナヨシ」
落ち込んだ様子を耳がへたれることで表現されている。
「耳!」
下を向く耳に恭弥が再び笑いを漏らす。
「恭弥さんも笑いすぎ」
ペシペシと尻尾で腕を叩き、つぐみはむぅ、と膨れる。
「可愛いだろ、それは」
流石に笑うって。
「しかも巨乳だし、モテモテか?」
「うっさい!」
もう少し年嵩なら、確実に今回の綱吉の遺伝子提供者の餌食になっていただろう。
それを思えばまだ良かったかもしれない。
「ぁ、そうだ」
ふと思い付いたかのように、つぐみは耳を立てた。
ピンッと立ったそれに、恭弥の笑いのツボが再び刺激されたらしい。
顔を背けている。
「こっちこっち」
先導する彼女についていく。
小走りになりながらも二人がついてくるか確認に何度も振り返りながら進むつぐみが止まったのは一軒の家の前。
ノックをするでも無く扉を開いたつぐみが入るのについていく。
つぐみの家かと思ったが、中から顔を出したのは骸だった。
「あ! ツナ君、キョウちゃん!」
嬉しそうに言った骸の頭にも耳が立っていて、尻尾が振られる。
「…………犬?」
「狼です! まぁ、いいですけどね、犬でも」
つぐみが住む村に居着くにはその方が都合良い、と骸は言う。
「そんなことより、お二人は?」
耳もありませんし、獣系では無さそうだ、と見てとる。
「あぁ、吸血鬼だよ」
そう言いながら恭弥が牙を見せる。
「――美味しそうだから二人共味見させて」
静かに見ていただけの綱吉が口を開いたかと思えば、そんなことを言う。
「オレは餌じゃなーい!」
全力で叫ぶつぐみに、綱吉も恭弥も笑った。
「ねぇ、ツナ君」
夜闇に包まれた頃、散歩にと家を出た綱吉と骸は歩きながら話し始めた。
「何だよ」
「吸血鬼たちは今、王を中心に毎夜狂宴を繰り広げていませんでした?」
そう噂に聞いていた。
だから、そんなのを好まない綱吉と恭弥は別の場所にいると思っていた。
けれど、実際には吸血鬼だと言う。
だったら、何故……?
「アホな遺伝子提供者を殺してここにいるだけだって」
軽く言う綱吉の言と、噂を突き合わせると。
「王子、ですか?」
「そんな扱いじゃなかったけどな」
人形とされていたために自由が利かず、時間がかかったのだから。
「――なら、今は王?」
繰り上げればそういうことだろう。
「ただの逃亡者だって」
ん〜……あぁ、でもキョウちゃんと手を取り合って飛び出してきたから。
「いわゆる駆け落ち?」
なのかな〜? と首を傾げた綱吉に、骸は溜息を吐いた。
多分今頃、綱吉たちを探し求めているだろう他の吸血鬼たちを思って。
「王はいつお戻りになるのだろうか……?」
火の消えたような静かな玉間の中、貴族の一人の声が響いた。
前王を廃除し、王妃を廃除した直後に貴族の娘一人を連れて去ってしまった王。
感情を消した姿からは一転、どこまでも人の目をひきつけるカリスマとも言える姿を見せつけた綱吉は、戴冠式も何も手順を踏まずとも、彼ら全員の王だった。
王になどなるつもりは無いと、彼らに興味の欠片すら示さず背を向けた。
それでも王は彼しかありえず、もう戻らないかもしれなくともただ待つだけだ。
一対として絵になっていた、去っていく二人の姿を胸に、ただただ静かに帰還を待つ。
そんな重いまでの信仰を向けられているとは、当の本人はおろか、二人を良く知るつぐみも骸も、思いもしていない。
「キョウちゃん、次どこ行こうか?」
目的の骸と家継に会ったのなら、もう行く場所も何も無い。
それでもこんな場所に留まるつもりは全く無い。
「並盛、無いの?」
「流石に地上の大地の形すら違うから無いと思いますよ」
キョウちゃんはどこまでも並盛が好きですね、と苦笑しながら骸が口を挟む。
「はいはい! 海行こう、海!」
つぐみが希望を言い、別に行きたい場所も無いし、と四人は道を進む。
「戻らなくていいの?」
希望を出したのは自分だが、城だかに帰らなくていいのか? と心配になる。
「帰る場所じゃないからね」
「どっかに家用意しないとね」
もう完全に決別したつもりの恭弥と綱吉は未来だけを見つめている。
その家には骸とつぐみの部屋まであるのは四人の中では当たり前のことだった。
こっちはある場所に残っていたので、そのままです。
もしかしたら、アップ前にちょっと弄ってる可能性はあるものの、多分これはこのままのはずです。
2010/7/26 再up
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