織姫と彦星

 昔々、はたまた見知らぬ程に遠い未来。天帝のお膝元に生活する人々がおりました。
 その場所では、ゆったりとした時間が流れ、長い寿命を幸せに暮らしていました。
 そんな世界の、とある場所。
 今回、綱吉と恭弥はそこに産まれました。

 全員仕事を持たないといけない、と決められている天界。
 その中で、女は皆、機織りとなることを定められた村に住んでいた恭弥も、この度成人となりました。
 成人の祝いに、と織機を与えられた恭弥は、しばし織機をただ見た後、興味が無いとばかりに部屋から出て行ってしまいます。
 数日後、織機を与えられたと知った綱吉が、「キョウちゃんの作った服が着たいなぁ」とぼやくまで、放置されていました。
 その発言を聞いた瞬間、恭弥は踵を返しました。一直線に向かい、織機の前に辿り着くと、やり方を教えられもしていないのに、パタパタと織り始めました。
 周りが織っていたのを見ていただけでやり方を覚えていた恭弥は、簡単に織ることができたのです。
 最高級と言って過言では無い出来の一着の服をこしらえた恭弥は、それを飾って綱吉を呼びに行きました。
「できたよ、あれ」
 着て見せて?とばかりに言う恭弥に、綱吉はほくほくとした嬉しい表情で、袖を通します。
「ありがとー、キョウちゃん!!」
 自分のためにと作ってくれたことに、喜んで綱吉は恭弥に抱き着きました。

 それから綱吉の服は、いつも恭弥が作りました。式典の際に着るような衣服、普段着、寝巻まで。
 それ以外のためには織機を動かそうとしない恭弥に、骸が笑いました。
「自分のは作らないのですか?」
 綱吉の物は作るが、恭弥の物は作ろうとしない彼女に、骸は苦笑します。
「仕方ないですねぇ」
 そう笑った骸が、恭弥の服を作って手渡していました。


「つぐくーん!」
「あぁ、骸。また来たの?」
 そう言いながら牛を牛舎へと追い込んでいた家継は骸が振る手を叩き落とし、牛を入れ終えます。
「酷いですよー、せっかく奥さんが逢いに来たのにー」
「はいはい、めんどくせーなぁ、お前」
 ま、いいけど、と言いながら牛たちのコンディションを確認します。
 しばらくして思い立ったとばかりに家継はそうだ、と口を開きました。
「ツナヨシと恭弥さん、いつ結婚するの?」
 根回しに時間かかるとか言ってたけど、ツナヨシがトップなんだから問答無用ですればいいのにね。
「家の問題とか無いんだし、ねぇ」
「そうですよねぇ、天帝なんですから」
 そう、綱吉が天帝なのです。
「だよなぁ、お前が織姫で? オレが彦星?」
「えぇ、そうでしたね」
 そんなこと言われていましたよねぇ……と骸は軽く相槌を打ちました。
「ツナヨシが天帝なら七夕の話みたいにはならないだろうけどさ」
「ツナ君はキョウちゃんがいればそれでいいですからね」
 家継と骸が、七夕伝説のように互いのことだけで仕事を無視したがために追放されたり、川を挟んで遠くに住むようにされたりすることは無いでしょう。
 綱吉がそんなことをするわけがありません。
 綱吉ならば、恭弥がいればそれでいい、と気にする訳が無いのですから。

「――というわけで暇です、構いなさい」
「ってか、仕事は終わったんだろうな?」
「えぇ、勿論、全て終わらせていますよ」
 そんな当たり前のこと言わないで下さいよ。とあっさり言う骸をじと目で見ながら。
「なんで真面目にやってるオレより骸の方が早いの!?」
 本当に腑に落ちないなぁ、とボヤキながら、牛たちに餌を与えて回るのでした。



「ツナヨシ! お願い!! 七夕伝説なぞらって、骸と天の川挟んで会えないようにして!」
「えぇぇ、面倒ー。いいじゃん、二人とも仕事完璧なんだし」
 そんなことする必要がどこに? と呆れたように綱吉は家継に言います。
「ツナヨシ〜…………」
 縋るように直談判に来た家継をしばし見た後、そうだなぁ、と言って決定を告げました。



 織姫に付き纏われ続けている牽牛の安息の日、それが七夕である。
 その当日に雲が出ると、雲を足がかりに逢いに来てしまうため、安息の日がつぶれてしまうと言う……
 七夕の日の雨はそのため、一年に一度しか無い安息の日が潰された、という牽牛の涙雨である、と言われている――






神話の時代に転生、なんていう話ですよね、はい。
一年ちょっと前ですかね、童話パロに提出しようと作成して、なんか童話のお部屋を作ろうなんていう話になっていたんですが・・・
なんかこのままお蔵入りしそうだなぁと思って。
それに、ほら、七夕だしぃ?(首傾)
ってことで、公開。

2011/7/7 公開
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