今回の生では、ボンゴレはこちらには今のところ来ないらしい。
 普段であれば来ている中学時代に突入した綱吉はそう思った。
 しかし、それより問題が発生していることもまた事実。
 流石にこんなことが起きるとは思いもよらなかったが、これはこれで大問題でもあるよなぁ、と目の前でスカートを翻しながら戦っている恭弥に呟いた。



 つい先日のことである。

「助けて下さい!」

 そんな叫びに興味無さそうに振り返った二人の前にいたのは、ぬいぐるみサイズの妙な生き物だった。

「何、これ」

 こんな生き物初めて見た、としばし呆然としている間に、恭弥はそれによって『変身』させられてしまっていた。




 それから色々あったが、さしあたっての問題は……

「ねぇ、キョウちゃん」
「何?」
「これ、いい加減締めていいよね?」

 邪魔ばっかするし、うざい。

「あぁ、咬み殺しに付いて来てこれだもんね」

 そしたら二度と変身させられなくって済むし?

「これ、って何ですかー! 魔法少女として暴力はいけません!」

 喚く生き物を囲むように綱吉と恭弥が逃げ道を塞ぐ。

「ちょっと付き合ってもらおうか……」
「えぇ、あの、えぇぇー! た、たすけてぇぇぇ……」

 ズリズリと引きずられていった人語を操る妙な生き物は綱吉にしめられていた。


「い、命だけは……」
「うん? 何か言った?」

 オレの彼女にあんな人目を引く煌々しい扇情的な衣服を無理矢理着せておいて無事に済むとでも……?

「魔法少女の正装です!」
「しかも変身シーンやばいし」

 学ランからの変身シーンはエロいと言い切ってしまっても良いだろう。
 まだ目撃者がいないから良いものの、これで見られていたら綱吉は全力で廃除にかかるだろう。

「魔法はしょぼいし」
「しょぼいって何ですか、しょぼいって!」

 由緒正しい聖霊魔法に対して……などと続けているが、綱吉は右から左へ聞き流している。

「キョウちゃんの肢体があらわになっているあたりで、お前は有罪!」

 いい加減死ね! と言わんばかりの攻撃にビクビクとしている。



「お前なんかナマモノでいいよな」

 お前、今から名前、ナマモノな。
 そんなこと言いながら戻ってきた綱吉を迎えながら恭弥も頷く。

「それなら僕もそう呼ぶから」

 そう決まったことに、ナマモノは何も言えずただ涙を流していた。
 綱吉の攻撃した一番の理由に、恭弥はふぅ、と溜息を吐いて呟いた。

「別に見られるくらいいいのに」
「ダメ! 減るの」

 キョウちゃん、ナイスバディなんだから!

「そんなこと無いって」

 気にもかけていない恭弥に綱吉が溜息を吐いていれば、動物が頷いた。

「僕も良いと思いますけどね〜」
「お前分かるのかよ!」
「あ、はい。一応、魔法少女の選定基準に入ってます」

 きっぱりと言い切った言葉に、その場に沈黙が降りた。


「……入ってるのかよ」
「……入っているんだ」

 綱吉と恭弥は揃って口にした。





「キョウちゃん〜!!」

 泣き着いて抱き着いてきた綱吉に、恭弥は勢いに負けてよろける。

「何? ……って」

 あれ? と恭弥は首を傾ける。

「うぅぅぅ、とんでもないことになったよぉ」

 と抱き着いてきている彼は――

「ナツ?」

 何故か女体化してしまっている彼。
 今回は男の子に転生してて、普通に一番最初の生と同じ性別だったはずなのに?

「アレに変身させられた」

 えぐえぐと無き着く綱吉が指差したのは、恭弥を変身させるナマモノに良く似た生物。

「あれ?」

 ナマモノに似てるなぁ、と思いながら綱吉を慰めるように恭弥は撫でる。
 女体化したことも、綱吉にとっては嫌なことだけれど、今までの転生で何度も経験しているために、そこまでこだわってはいない。
 それより大問題なのは、これだ。

「何でこんな色なの、オレの!」

 キョウちゃんみたいに白黒だったらまだマシなのに!!

「毒々しいにも程があるよ!」

 真っ赤で、要所要所はピンク色で、アクセントは金色。
 毒々しいっていうより、眼に痛い。

「しかも、言うに事欠いて、キョウちゃんを殺せって……殺せって……」

 ピキピキッと額に青筋が浮かんでおり、かなり怒ってるなぁ、と恭弥は落ち着くように撫で続ける。

「ねぇ、ナマモノ」
「は、はい!」

 恭弥を変身させたナマモノに声をかける恭弥に、ビクビクッと震えて返事をする。
 完全に恭弥と綱吉に服従したナマモノは、何でも言うことを今現在は聞いている。
 流石に正義のために、と動くことは止められないが、無理難題を言われないように、静かに消えていることが多い。
 消えているはずのナマモノの位置を分かっているように言う恭弥と綱吉に慣れすぎていて違和感を感じないナマモノだが、今も姿を消していたのだから、普通は気付かないものである。
 そのはずなのに、と綱吉を変身させた生物が驚きの表情を浮かべる。

「アレ、知り合い?」

 僕、説明聞いてないんだろうか。

「正義を広めることによって得る力を集めるために、としか聞いてないんだけど」

 敵対勢力とか、そんなのがあるなんて、全く聞いてないよ。

「ナマモノの国がどうなろうと知ったことじゃないけど、その国を安定させるために必要なんじゃなかったっけ……?」

 どういうことさ、と問い詰める恭弥に、ナマモノはガクガクと震えている。
 自分のことを昔から敵対視して、数名の魔法少女を作って正義の力を集めると言うことで選ばれた仲間たち。
 その中の一人に無理やり入ったこいつが無茶をするから……

「ぴ、ぴちか……」

 お前のせいでっ! と涙目で睨みつける。
 ピチカ、とは綱吉を変身させた生物の名前のようだ。

「は、早く元に戻すんだ!」

 僕はまだ死にたくないんだ、と思いながら言うも、なぜそこまで必死なのかわからない生物は気にもかけない。

「せっかく見つけたんだ。戦ってもらわないと」

 そしてお前に勝つ! といった感情を向けられてナマモノは泣きそうである。

「なぁ、ナマモノ?」

 背中側にいたはずの綱吉からかけられた声に、ナマモノは恐る恐る振り返った。

「お前の国って、あっち、だったよな?」

 確かに以前、そちらの方にあるって言った。
 言ったけど、異次元に当たるから、行けないとも言ったはずなんだけど……
 しかも、少しずつ座標が変わっていくから、以前言った方向そのままには無いのだけど、綱吉が示した方は、移動した先。

(何で分かってるんだよ! ……超直感? だかのせい!? そんなの反則だ!)

 涙をぼろぼろと零しながら、地面に這いつくばった。

「どうか、それだけはお許しください」

 異次元にあるとはいえ、あの攻撃を受けて無事でいられるとは思えない。
 ただでさえ、崩壊の危機に見舞われている自分の祖国を守るためならば、土下座でも何でもする。
 そんなナマモノの姿を視界に入れたまま、素っ気なく構える。
 イクスバーナーを撃つ構えだ。

「文句は言えないだけのことをしてるよな?」

 ニィ、と唇を歪めるその姿は、格好と相俟って妖艶な悪の魔法少女そのものである。
 最凶最悪の事態を招いたのは、ナマモノなのか、それとも生物か……


「……ツナ、それより直接殴りこんだ方が良くない?」

 骸に頼めばどうにかなりそうだし。
 そう続けた恭弥の言葉に、綱吉は掌を撃ち合わせた。

「確かに! そうだね、それがいいよね」

 直接行って潰しにかかった方が気分が晴れる。
 身体を動かした方がいいに決まっている。

「つ、つなよしさまぁぁぁ!」

 ナマモノは縋るように悲鳴を上げるが、その後ろでのんびりと骸に連絡を取っている恭弥がいる。
 魔法の国が滅ぼされるまで、残り何分残っているだろうか……?





「すみません、お待たせしました!」

 呼び出された骸が綱吉と恭弥の前に現れた。
 二人の呼び出しなら、と早々と現れるのはいつものことなので、結構慣れているが、今回は流石に驚いた。

「ちょっ、飛んできた!?」
「あぁ、お二人もできるんじゃないですか?」

 あっさりと答えた骸の格好は、体の線に沿うように作られているワンピース風の衣服。
 横座りしていた箒みたいなものを一振りすると、恭弥が何度も折りかけたのと似たような魔法の杖らしき物体。

「お前も同じ状況かよ!」
「えっと、どっちかと言うとキョウちゃんと似た状態ですね」

 今回ちゃんと女の子ですし、僕。

「でも魔法少女かよ!」

 綱吉の問いに頷き、くふふと笑った。
 誰だよ……また危ない人を選んでしまったの……と思ったのか、ナマモノは遠い目をしている。

「骸さま……」
「クローム!? 来なくて良いと言いましたのに……」
「だって……」

 骸と色違いの服を着た髑髏の姿に、対になっているのか、と思われる。
 青系の骸に対して、髑髏はピンク系で纏まっている。

「それにしても、どぎつい色合いですね、ツナ君」
「うるさい! お前だって、短い上に何か透けてるじゃないか!」

 綱吉が言う通り、スカート部分が異常に短く、透けてもいる。
 色違いの髑髏も同じように透けてはいるものの、骸よりはスカートが長い。


「それで、殴り込みに向かうんでしたよね?」

 持っていたステッキが掻き消え、手にはいつもの三叉槍が現れる。

「そう。いける?」
「はい、お二人のご希望なら」

 そう頷いた骸がトンッと槍を地面に突く。

「できました」

 骸の幻覚でできた白い階段を見上げれば、目的地方向へ続いている。
 登り始める骸に全員が付いていく。
 ギャアギャア喚いていたナマモノその2は、その1によって沈黙させられている。
 沈黙の呪文によって口を塞がれているピチカを引っ張りながら、四人が何をするつもりなのか、付いて行こうとナマモノはする。




 階段を登り切った骸は立ち止まった。
 少し広めの段を作っておいたのか、全員がその階に立っている。
 スッと手に持った三叉槍を左から右へと滑らす。
 それによって空間に亀裂が生じる。

「お前、いつからそんな芸当できるようになったんだよ?」
「僕はツナ君とキョウちゃんのためなら、これくらい、いくらでもやりますよ!」

 本人が言う通りなのだろう。
 ただ、普通に考えれば、それですませられる問題では無いが。

「さぁ、どうぞ」

 空間を切り開いた骸に道を示され、向こうに広がる魔法の国へと綱吉たちは足を踏み入れた。





 全力で暴れ回る綱吉と恭弥と骸。
 零れ落ちたのを、ごめんね、と律儀に謝りながら倒しているクローム。
 そんな状況を見ながら、少し遠い目をしながらナマモノは見守っていた。
 国の軍を率いる者が、氷像へと閉じ込められ、兵たちはトンファーや三叉槍によって薙ぎ倒される。
 彼女たちが暴れる様に、魔法が意味をなさないのも仕方ないのかもしれないと思ってしまう。
 飛んできた魔法を腕の一振りで掻き消し、一瞬にして間合いを詰め殴りつける。
 魔法が全く意味を為さないことに、上の者たちが怯んでいる。
 その隙に攻撃され、残ったのは氷像と遺体ばかりである。
 その最中に喚いて綱吉の変身を解き、特攻を仕掛けたピチカは一瞬にして綱吉に燃やされていた。
 それを止める暇も、惜しむ暇も、何も無かった。



 炎に包まれた魔法の国。
 すでにこの状態では再起不可能。
 このまま滅びゆくだけのこの世界。
 もう崩壊寸前である証拠に、空の色はおかしく、罅が入っている。
 このままここにいれば、自分も死んでしまうのだろう、と見ていてありありと分かった。
 もう二度とここには戻れない。
 国を壊滅に導いたと刺客を送られるかもしれない事態に、諦めを覚える。
 そう覚悟を決めたナマモノことキイルは、その生まれた時に付けられた名を捨てることを心に決めた。

「ナマモノ、置いてくぞ?」
「ぁ、はい!」

 ナマモノと呼ぶ綱吉と恭弥について国から決別した。





長かったー!纏めるの時間かかりまくった。
始まりが二行の説明文だったし(苦笑)
魔法少女イラストを貰ったので、頂き物も見て欲しいですv

2010/5/2 作成
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