日向家の修行場は本家の裏にあった。その日の早朝、日向の本家、分家の人々が集まっていた。

「ハッ!!」
「……キャッ!」

 ズザザー。ハナビとヒナタの手合わせが行われており、ヒナタはハナビの攻撃で吹き飛ばされてしまっていた。

「あ、姉上!」

 ハナビは姉を心配し、駆け寄ろうとする。

「ハナビ! これで朝練を終了とする」
「ありがとうございました」

 ヒアシの呼び声でハナビは動きを止め、拳をきつく握り締め頭を下げる。ヒアシは親戚たちを連れて母屋へ向かう。
 ハナビは修行に使った道具の片づけをして、ヒアシの姿が見えなくなるとヒナタの元へ駆けつけた。

「姉さま、お怪我はありませんか?」
「大丈夫よ、ハナビ。それより早く食事に行かなきゃ父上に怒られるわ」
「それくらい平気です!」

 怒られてもいい。怒られるくらい何でもない。

「姉さま、どうしても私より強くなってはくれないのですか?」

 私より当主としての……器は大きいのに。

「私は日向を継ぐつもりは無いの。ハナビには悪いけど、あなたが継いで」
「…姉さま……」




 日向家には、風見の者と認められていない、とても血が薄い分家がある。と言うより、風見の者と認められており知っているのは日向家全体から見ると少ない。
 白眼を持たない日向の分家の多くは風見の存在を知らないのだ。だから、風見に深く関わり、日向を継ぐ気の無いヒナタは弱い振りをしている。


「ヒナタ〜〜〜!!(泣)」

 朝練の後、母屋へは近寄らず風見家へと行ってしまったヒナタを追ってヒアシがやってきた。

「……父上、何泣いてるんですか!?」

 半分呆れ混じりに父親を慰める。

「ヒナタ〜、ハナビが家出した〜〜〜!!(泣)」
「……はい?」

 置手紙を手渡され、ヒナタはネジに助けを求めた。

「ネジ兄さん。ハナビちゃんを連れてきてくれる?」
「あぁ、わかった」

 置手紙には姉上に日向家を継いでもらいたい旨と、自分はそんな器ではないと書いてあった。

「ハナビは、私のことが嫌いなんだ〜〜(泣)」
「はいはい、そんなことはありませんよ」

 ヒナタは一度ハナビと良く話さなきゃいけないと思いつつ父親を慰める。

「父上、本日はハナビとゆっくり話しますから、明日まで待ってください」
「……ヒナタ?」
「今日はこっちで一緒に泊まってもらいますから」
「…………頼む」

 有無を言わせなかったヒナタに背を向け、傷心のヒアシは肩を落として風見家を後にした。



「姉さま!!」

 ヒアシと入れ違いに飛び込んでくるハナビ。

「ハナビちゃん? どうしたの?」
「父上と喧嘩したので家出しました!!」
「……ハナビちゃん、そんなことしちゃダメよ?」
「だって……父上が何を考えているのかわかりません」

 そうハナビが考えるのは、娘を溺愛しているヒアシが全く正反対の行動を取るからだ。



 日向家で朝練がある日の朝食後、ヒアシは必ず風見家にやってくる。

「ヒナタ! 怪我は無いか?」
「大丈夫ですよ?」
「ならいいんだ。ハナビ、お前も大丈夫か?」
「大丈夫です!」

 愛おしそうに二人を抱き締めるヒアシ。

「怪我が無くて何よりだ。二人とも、無理はするんじゃないぞ?」
「「はい!」」

 娘ラヴのヒアシは、怪我が無いか、と聞くために必ずやってくる。ハナビは姉が大好きなので、だいたい一緒に居る。
 ヒナタとハナビはヒアシを慕ってはいた。慕っていたが、流石に毎回行われるこれには辟易してもいた。


「……親バカ、だよな」
「それを言ったら風見家全体がそうだろ?」

「…………」

 それぞれ、自分の父親や皆の親を思い出し……

「確かに」

 風見家の特質なのだろうか?と聞きたくなるくらいの親たちに不安さえ感じる。(自分たちもそうなる……のか?と)




「姉さま! 姉さまが継いだ方がいいです!!」
「ハナビちゃん、私は日向を出る気でいるの」
「何でですか!?」
「まず、風見のために生きていきたい。それから、えっとね……」

 言いにくそうに目線をうろちょろさせ、覚悟を決めたのかハナビの目を見て言った。

「ネジ兄さんと結婚したいから」
「…姉さま……」

 大好きな姉さまには幸せになってほしいから、諦めざるを得ない。

「わかりました。でも、お願いがあります!」
「……何? ハナビちゃん」
「わたしに稽古をつけてください!」
「……でもね、日向としての力を身に付けるなら父上に教えてもらうのが一番なのよ?」
「であったとしても! わたしは姉さまに教えてもらいたいです!!」
「……仕方ないわね。朝練の後にちょっとだけよ?」
「はい!!」

 その日からハナビはヒナタに稽古をつけてもらい始めた。風見家の裏の森を覗くと仲の良い姉妹の姿が見れるようになったのだった。




「ハナビ〜!! 帰ってきてくれたか〜!!(泣)」
「父上。仕方ないのでわたしが継ぎますが、姉さまと稽古するので邪魔したらダメですよ?」

 大好きな娘に邪険に扱われ、ヒアシは涙の池を作っていた。


後書き

ハナビを書いてみたかっただけです。
十数年後で当主になってる、としか出てきてなかったので。

ハナビはスレてません。
というか、風見では教えてません。
なので、普通の子です。
ヒナタの妹なので出入り自由で良く行き来してますが、お茶や話をしてるだけです。


2005/8/17 作成

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