「ナルトくん!!」
「……え? 山中さん?」
「お願いがあるんだ!!!」
「…………何?」

 なんとなく嫌な予感がしたナルトは一瞬止まった。

「明日、雛祭りだよね。いのちゃんたちを喜ばせたいんだ!!」
「ヒナタのためにも手伝ってくれ!!」
「最近、サクラが冷たくて…………」

 いのいちたちの勢いに押され、何をするかも分からずに手伝うことを約束させられてしまったナルトだった。
 特にサクラの父の悲しそうな顔、しかも涙ぐんでいた、に負けたのだ。




「どうしたんだ、これ……」
「あ、シカ〜。助けて〜」

 現れたシカマルに縋り付くようにしてナルトは訴えた。

「雛人形??」
「そう。いのやサクラを喜ばせたいんだってさ」

 ふぅ、と溜息混じりに嬉々として雛壇を作っている父親たちを眺める。

「あれ、どこにあったんだ?」
「倉庫の中。一度、何があるか確認するべきかも〜」
「……見たら脱力すんじゃね?」
「だろうね〜……むしろ今、脱力してるけど」

 ダラリとシカマルに全体重を預けている。

「倉庫の中にあったにしては保存状態良くね?」
「とりあえず箱には『風見汐流御謹製』って書いてあった〜」

 初代当主が作ったのですか、そうですか。

「御謹製って目上の人は誰だよ」
「多分、九重〜」

 祀る神に見せるために作った物だったようだ。


「初代当主なら保存状態良くても当たり前か?」
「じゃね〜? あ〜、もう疲れた」

 ここで見てても、おいおいと言いたくなる親たちの暴走に巻き込まれればそうなってもおかしくない。



「んで、そのいのたちは何処へ行ったんだ?」
「ケーキバイキングって言ってた」
「じゃあ帰ってくるまでには出来上がってるな」
「だろうね〜」

 そんな内容のことを話していた時、ヒアシが着物を持って走ってきた。

「ナルトくん!! これ、どうだろう?」
「どうだろう? って何がです?」
「ヒナタ、着てくれるかなぁ〜……」

 ちょっと待って下さい!!
 それ、どう見ても『十二単』だと思うのですが……

「そ……それ…を?」
「え? 何か変?」

 ヒアシが持っているのはお雛様が着ているような煌びやかな十二単。
 重くならないように袖や襟の部分だけ何重にもなっているように作ってある。

「……おい、ナルト」
「ん? 何? シカマ……ゲッ」

 シカマルが指差した方を見れば、狩衣やら束帯やらが置かれていた。

「……日向さん…あれ……」
「倉庫の中にあったから出してきたんだが……」

「初代当主〜〜〜!!!」

 何作ってんだ〜!! と叫ぶナルトに諦めの表情のシカマル。


「えっと、これが三人官女の袿で……こっちが五人囃子だね」
「……まさか、着ろとか…」
「着てくれると嬉しいな〜」
「…………嫌です」
「え〜? ダメなのかい?」
「ほ、ほら、人数合わないし!!」

 内裏雛、三人官女、五人囃子で10人だけど、女四人で合わないからv

「それもそうかな……」
「でも! ヒナタに着て欲しい!!」
「……少なくともお内裏様が必要だよな」

 何か企んでますか……? といった雰囲気だ。

「とにかく! 着ないから!!」

 シカマルを引き摺って、逃げ出す。




「ただいま〜!」
「……あれ? パパ?」

 サクラ、いの、ヒナタの三人がケーキバイキングから帰ってきた。
 三人は、変化で大人の振りしてバイキングに入っていたとか……

「ち、父上……それ、何?」
「お帰り〜♪ これはね、風見家に伝わる雛人形だよ〜」
「代々の穢れを引き受けているにも関らず、完璧な保存状態が保たれている凄い人形だよ」

 へ〜。

「ヒナタ! これ、着てくれないか!!?」
「……え? ……十二単??」
「……それ、あの人形の着物と同じ柄ね……」
「つまり、あたしたちを人形扱いしたいのかしら?」

 いや、そういう意味じゃないだろう。
 親は娘が主役の可愛い姿を見たいだけなんだろう。

「あ、三人官女の衣装もある!!」
「父さん、わたしたち、これじゃダメ?」
「そ、それでもいいよ〜」

 ちょうど三人だし、と楽しげに三人官女の衣装を手にする。


「あら、五人囃子まであるのね……」
「せっかくだし、面白くないし……」
「皆を巻き込むの?」
「「そうしましょう!!」」

 こくり、と頷き合う三人は、三人官女の衣装を身に纏い、皆の部屋に走っていった。



「あぁ……なんて可愛いんだ…」
「……写真、撮らせてくれるかな?」
「隠し撮りならあるぞ」
「「くれっ!!!」」

 抜かりないヒアシに二人はそう叫んだ。




「嫌だっつったら、嫌だ!」
「そんなこと言わないでよ〜」
「今日は女の子の日でしょ〜? わたしたちの言うこと聞いてくれたっていいでしょ!」
「なんでだよ!!」

 一歩も引かない言い合いがしばし続き、最後には根負けしたナルトが頷いてしまっていた。


 そして、サクラ、いの、ヒナタの希望通りに着せられることになる。


「えっとね、一人だけハズレが居るから、くじ引きなの」
「くじで当たりを引いた人がアレ」
「お隣は可哀相だから当たりを引いた人の指名でよろしく」

 アレと言って示されたのは、お雛様の十二単。お隣はお内裏様だ。


「じゃあ引いて〜」

 神頼みやらえいっとばかりに気合を込めて引くのやら、皆思い思いにくじを引いている。




「……当たっちゃった……」
「よっしゃ! 頑張れ、ナルト」

 そう。当たっちゃったのはナルトである。

「ナルトかぁ♥ 細工もせずに本命に当てるなんてわたしたち、凄くない?」
「…………シカマル……」
「言うと思った……」

 ナルトが指名したのはシカマル。

 どうせ、ナルトが当たった時点でそうだと皆思っていたから当たり前だとしか思わない。

「……サクラ、親は帰したのか?」
「あ、今から帰してくるわ〜」
「皆、ちゃんと着ててね!!」
「ちょっと行ってきます」

 三人がバタバタと居間に行き、人間用の雛壇を用意していたいのいちたちに帰るようにお願いする。


「え〜? 写真くらい撮らせてよ〜!!」
「……わかった。ほら、サクラ、ヒナタも乗って!」

 三人官女が手に三宝だとかを持ってカシャリ。
 写真が取り終わるか否かと言った瞬間に、三人は親を追い返したのだった。




「キャー♥♥」
「いい! 絶対いい!!」
「ナルトくん……綺麗……」

 女の子三人がありえないくらい恍惚とした表情でナルト、そしてシカマルを見詰めているのを五人囃子が引き攣った表情で見ている。

「……いの、アレは何だ?」
「何って、雛壇でしょ」

 赤い布が敷かれた段差と後ろにある金色の屏風。

「……まさか、アレに並べとか…」
「言うわよ。折角だから一枚くらい記念に全員で撮るの!!」
「全員集合の一枚だけ!!」
「お願い!!!」

 三人が一枚だけ撮影したいと懇願し、もうすでに諦めの境地へと達していた皆は仕方なく並び、影分身がカシャリと撮影した。


「……もういいよな」

 返事を待たず、荒々しく脱ぎ捨てながら出ていくナルトを追い、シカマルは出て行く。

「勿体無い……けど、いいか。一枚とはいえ写真が撮れたし」
「うんうん」

 女の子たちはそんなことを話し、全員が着替えたのだった。





「やった☆ 上手く撮れてる!!」
「あ、それいいじゃない。こっちもいいアングルじゃない?」
「ホントだね。ナルトくん、綺麗……」

 女の子三人は何枚もの写真を広げながら話していた。

「隠し撮り成功!!」
「お内裏様とお雛様のツーショット、最高!!」

 そう。三人は隠し撮りで何枚もの写真を撮っていたのだ。

「見つからないように隠しておかないとね」
「でも、人の部屋には入らないからわたしたちの部屋に隠しておきましょう」
「私のも置いておいてね」
「うん、もちろん!」

 ナルトたちに秘密で三人はひな祭りの思い出を隠したのだった。




 ……それにしても人形と同じ衣装を用意している初代当主は凄いだろう…


後書き

なんとなく書いてみようと思ったので・・・
ひな祭りですからね、今日は。

えぇと、写真の雛人形は私の雛人形です。
時間も場所も無いので、上の二段だけ。
十ん段飾りの一部です。
二段目の後ろの橘と桜の木は、右大臣左大臣と一緒とかのだったり・・・

三人官女が好きな紗奈でした。


2006/3/3 作成
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